2017年10月24日

「クジラの子らは砂上に歌う」第三節

 浮島での、閉鎖された、しかし穏やかな暮らしは突如として崩壊した。外の世界から現れた兵士たちに、泥クジラの民はなすすべもなく虐殺されていく。

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 惨たらしい殺戮が描かれるが、不思議なほどスピード感がない。
 仮面の敵はゆっくり近づき、何の抑揚もなく武器を振るう。感情を奪われたアパトイアなので、普通の人間とは違う、ということなのだろうか。
 一方、泥クジラの民はというと、こちらも素早く逃げない。外のことを全く知らず、危機が理解できていないのだ。オウニの仲間たちが、ヤンキーのように兵士に言いがかりをつけに行ってしまう浅はかさに、そのことが端的に表れている。長老たちに代わって民を守る立場であるスオウも、長であるタイシャ様が殺される事態であるにも関わらず、話し合いで事を収めようとし、戦うつもりがない。オウニのみが、見事な戦いぶりを見せるが、周囲はヒーロー扱いせず、野蛮な者として忌避する。
 アニメなのにカタルシスがなく、もどかしい。
 この閉塞感は、ミサイルを突き付けられていても反撃一つできない日本の現状そのままであると感じる。マンガの連載から数年、このタイミングでアニメ化したことも、時代の要請なのかもしれない。
posted by Dr.K at 21:55| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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