2019年08月16日

天気の子

 音と映像が心地いいので騙されますが、ちょっとこれは乗れませんでした。

 まず冒頭、陽菜が登場するやいなや、雲の向こうへぶっ飛びます。ファンタジー性の強い話なのだな、という第一印象です。
 ところが一方、帆高は歌舞伎町で地べたを這うようなホームレス同然の暮らし。意図的な対比なのは明白ですが、バニラトラックをはじめとした実在ブランドの露出により、リアルが勝ちすぎてバランスがおかしくなっています。
 おかしいと言えば、構成もそう。彗星が落ちる瞬間に向かって、緻密に組み立てられていた「君の名は。」と異なり、こちらは何かと行き当たりばったりです。帆高が子供だからしょうがないんですが、主人公の意志に任せたらストーリーが散らかってしまったという感じです。大人として状況を俯瞰せず、帆高に目線を合わせられるかどうかが、このストーリーに乗れるかどうかの分かれ目と言えます。

注:以下は結末に触れています

 そして迎えたあの結末。
 三葉を助けることが町の人を救うことと一致していた「君の名は。」と違い、陽菜を助けると東京が救われないという究極の選択になっています。ここまで、帆高の直情的な行動を見てきているので、彼が陽菜を選ぶであろうことは予想が付きます。雨は止まず、東京は水没し、人々は追いやられつつもその後の日常を暮らしています。
 「エヴァンゲリオン」や「最終兵器彼女」では、ヒロインを選ぶことによって世界が滅んでいます。そういう破滅系の作品に比べると、いささか手加減を感じる結末であることは否めません。
 ただ、新海監督の今を感じる力は天才的です。彗星が落ちる、というような見た目にも派手な破滅を今回は用意しませんでした。代わりに、3年続いた雨で東京は徐々に沈んでいきます。これは、貧困やら少子化やらで、じわじわと滅んでいる日本の現状を見事に表現しています。そして、若い者はそんなものの人柱にならなくていいんだ、と言っているのかもしれません。

映像美 8
キャスティング 8
貧困描写 8
個人的総合 6

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セラミックロケッツ: 「天気の子エロゲ原作説」! いっそのこと今からゲーム化しては。
posted by Dr.K at 02:09| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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