今期のドラマは、「テセウスの船」と「知らなくていいコト」を観た。どういうわけか、両方とも父親に殺人の疑いがかかっているという物語で、偶然にもほどがある。
●テセウスの船
田村心(竹内涼真)は、殺人犯の息子として苦難の人生を送ってきたが、妻の死をきっかけに事件の現場を訪れ、タイムスリップ。そこで出会った若き日の父、佐野文吾(鈴木亮平)は、正義感にあふれた警察官だった…
はじめは、鈴木亮平の渾身の父親演技もあって、「流星ワゴン」みたいな感動ものになるのか、と思ったら全く違った。
その実態は、真犯人探しで視聴者を釣りまくるあざといドラマ。毎週、怪しい奴が出ては消される展開で、親子のうろたえぶりが不憫であった。本当は善良なはずの村人に、ミスリードのため怪しい態度をさせまくる脚本が姑息。とはいえ、最終回のラスト10分まで真犯人を明かさない徹底ぶりは天晴で、視聴率的には大成功をおさめた。だが個人的には、「ギルティ」以来の肩透かしな結末だった。
失意の視聴者たちを、わずか1分の登場で和ませたハライチ澤部の功績は大。
●知らなくていいコト
真壁ケイト(吉高由里子)は、ゴシップ誌の記者。恋も仕事も順調だったが、母の死をきっかけに、自分の父親が殺人犯、乃十阿徹(小林薫)であることが判明する。
検事になったり、Webデザイナーになったりと、お仕事ドラマに引っ張りだこの吉高。このドラマも軽いタッチのストーリーなんだろう、と思っていたら全然違う。
ケイトは、次々に異なる事件を追うが、それらが自分の身の上につながってくる。不倫のゴシップを追ったときには、自らも尾高(柄本佑)と不倫の関係になりつつあったし、黙秘する殺人犯の取材では、乃十阿はどうだったのかと思いを巡らせる。そして、ケイトの素性が他誌に暴露されることで、追う側から追われる側に状況が反転。苦境の中、周囲の協力で、父の事件の真相をスクープする記事を書き上げる。予想外に重いタッチの本格派だ。
最終回、尾高(柄本佑)との不倫の恋は結ばれず、記事も社長の圧力で載ることなく終わる。なんともビターな結末となった。タイトルが指す内容が変化するのもお見事。
ところで、尾高の行動がイケメン過ぎたために、結果にがっかりした人が多いようだ。最終回直後から、ディスクを買うのやめます、発言が相次いでいるが、恋愛ドラマにしては社会派過ぎたということだろうか。