私が初めて「ナウシカ」を観たのは、学校だった。しかも、体育館や教室ではなく、理科室。文化祭の出し物の一つだったようだが、今にして思えば、化学の先生の趣味だったのだろう。素晴らしい内容に感動し、薬品の匂いとともに記憶に残った。
今回の特別上映で、初めて映画館で観ることになった。テレビで何度も見ており、知り尽くしているこの作品を、映画館で観る価値はどれくらいあるだろうか。
価値は充分すぎるほどにあった。
大きなスクリーンは、いつもなら気にしないディテールをはっきりと映し出し、映画館ならではの音響は、テレビでは聞き取れなかったわずかな音も届けてくれた。こんなに面白かったのか、と感心してばかりの2時間だった。何よりすごいのは、内容が全く古びないことで、原発事故やら新型コロナやらを経てから観ると、腐海がただのフィクションとは思えない。現に観客も全員マスクをしているのだ。
主要なキャラがことごとくかっこいい「ナウシカ」だが、今回の鑑賞で、ジジイがいい味を出していることに気が付いた。トルメキアに従えられたナウシカは、5人を連れて従軍するよう命じられる。そこでナウシカは、腹心のミト爺に加えて、3人のジジイを連れていく。
「やれやれ、姫様も惜しげもない者ばかりよう選んだわい」
達観した軽口が粋である。乗った船が腐海に落ち、ジジイたちはパニックに陥る。ナウシカが機転を利かせてマスクをはずし、彼らに指示をするのだが、このとき、姫様を思うあまりあわてふためく姿も微笑ましい。ただの役立たずに終わらず、いざとなれば敵から戦車を奪って大立ち回りを見せるのもかっこいい。捕虜となってからも、クシャナを諭すかのような物言いをし、年長者の貫禄を感じさせる。私も将来はこんなジジイを目指したいと思う。
後の宮崎アニメのジジイは、監督の考えを代弁するようなところがある。しかし、「ナウシカ」の頃には宮崎監督もまだ若造だったはずで、なぜこんなに味のあるジジイ共を描けたのか、不思議でしょうがない。
風刺性 10
完成度 10
久石サウンド 10
個人的総合 10