2020年12月13日

ばるぼら

 公開日以降、2年前に書いたこの記事へのアクセスが増えており、なんだか急かされるような感じで観てきた。

 原作は、手塚治虫の中でもとびっきり退廃的なマイナー作だ。稲垣吾郎のファン、などという理由で観に行くと、なんじゃこれは、という感想で終わってしまう可能性が高い。
 しかし、「ばるぼら」の映像化としてはほぼ満点に近い。まず、二階堂ふみによるバルボラの再現度が完璧。裸のシーンも非常に多く、朝ドラと並行してこれを演っていたとしたら驚きだ。稲垣吾郎も、異常性欲者などという危うい役を見事やりきった。渡辺えりのムネーモシュネーは、キャスティングの時点で100点だが、衣装になったら1000点位の出来で笑いそうになった。
 次に、背景が面白い。ロケーションは新宿なのだが、撮影監督がクリストファー・ドイルだからか、どことも思えない景色に見えることがある。都庁が映るシーンもあるが、他のドラマなどで「ここは新宿ですよ」とわからせるために使われるような、ありきたりの見せ方をしていない。音響も独特で、耳をつんざくフリージャズが使われており、退廃的な画面ともども先鋭的なアートを印象付ける。
 ストーリーの方は、原作を上手にスケールダウンしており、美倉とバルボラの関係に焦点を絞っている。結果、バルボラの正体などがあいまいになっているが、それはそれで面白い。気になったのは、原作の結末がバッサリと切られていること。

「だが彼の作品は残るのだ」

 手塚による芸術論、とも言われる原作で、結論となるこのナレーションが私は好きなのだ。だが映画にこの部分はない。
 パンフレット代わりに売られている「公式読本」には、映画全編の脚本が掲載されている。読んでみると、驚いたことに原作に忠実なエピローグが書いてある。どの段階でカットが決断されたのだろうか。ますます気になってしまう。

キャスティング 10
アート性 9
エンタメ度 3
個人的総合 5
posted by Dr.K at 11:00| Comment(1) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
https://tezukaosamu.net/jp/mushi/entry/25475.html
↑ここにカットの経緯が書いてありました。
Posted by Dr.K at 2020年12月20日 10:34
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