2020年12月25日

ミセス・ノイズィ

 卒業生に薦められたので観ましたが、これは当たりでした。

 この映画は、かつてワイドショーで話題になった「騒音おばさん」事件から着想されたフィクションです。調べてみたら、あの事件は2005年ですか。15年も経っているのか、とまずそこに驚きます。
 主人公の真紀は、かつては文学賞も獲ったことがある小説家。しかしながら、結婚してからは子育てに追われ、執筆業はスランプ中です。どうにか締め切りまでに原稿を書こうとしますが、そのせいで幼い娘は放置気味。そして、隣からは激しく布団をたたく音が…
 コミカルな描写もあるのですが、物語はリアリティがあってスリリング。ここからどうなってしまうのか、何度も手に汗を握る瞬間がありました。「カメラを止めるな!」でも感じたのですが、無名の役者を起用していることが効果をあげていると思います。役者に色が付いていないことで、先行きがより不透明になるんですよね。
 実際の「騒音おばさん」事件では、後日、あのおばさんが実はかわいそうな人だったのだ、という情報がネットで流れました。今となっては真相はわかりませんが、「ミセス・ノイズィ」はそのさらに先へと踏み込んでいきます。何が正しいかは視点で変わる。フィクションだからこそできる手法で、観客を翻弄します。
 主要な登場人物が多面性を持って描かれるのに反して、脇役はかなり一方的な扱いを受けています。特に、若者はクズですね。炎上商法を仕掛けておいて手のひらを反す編集者も、真紀を利用して一儲けを企む無職の甥も、どうしようもなく不快です。一方で、意外にちゃんと小説を見る目があるキャバ嬢はおいしい役でした。
 真紀は、隣人をモデルに「ミセス・ノイズィ」を執筆し、大騒動になります。紆余曲折を経て完成した小説は、傑作として評価されるのですが、部分的に映画とメタな描写に感じられるため、遠回しな自画自賛になっているような気がします。すみません、意地の悪い見方をしてしまいました。

キャスティング 9
迫真度 8
風刺度 9
個人的総合 7
posted by Dr.K at 15:04| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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