これでシリーズ完結らしいが、何か理由をつけて撤回してくれないものか。
質の高い容れ物で飾られてはいるが、このシリーズの本質は高尚さなどカケラもない怪物パニック映画。だからこそ、多少難のある出来だったとしても、続編での挽回に期待! くらいのノリでいけるのだ。完結と言われてしまったら、そんな態度もとれないではないか。
注:以下にネタバレを含む
色々な面で中途半端な映画だ。
まずストーリー。グラント博士ら、昔のキャストが再登場するのは知っていたが、ゲスト程度の扱いだろうと予想していた。ところが、メインキャストとしてがっつり出るので驚いた。ファンサービスとしては素晴らしいが、このせいでストーリーがぼやけてしまっている。グラント博士らは巨大イナゴの謎を追い、オーウェンらはさらわれたメイジーを追う。この二つがなかなかつながらないため、中だるみが起こる。後半、バイオシン社の陰謀としてこれらがつながるのだが、なんとなく遺伝子の話で煙に巻かれるだけで納得感が低い。
次に恐竜の扱い。序盤の、田舎を舞台にした描写の数々は非常に良かった。「炎の王国」の結末で恐竜が放たれてしまった結果、恐竜が日常的に出現するようになっている。このような世界で、恐竜を保護すべきと考える人、滅ぼすべきと考える人、密猟で儲けようと考える人、などが入り乱れる話にするだけでも相当面白そう。だがそれでは怪物パニック映画にならない。そこで、中盤からはバイクと恐竜のチェイスアクションや、氷上での恐竜との対決など、見どころを盛り込んでいくのだが、場面としては新鮮で面白いものの、それぞれがつながりを欠くため、結末に向かって盛り上がらない。
新しい恐竜が多数登場する。中でも、爪の長いテリジノサウルスはインパクトがあり、恐怖演出にもこだわりが見られた。設定としては、バイオシン社の研究の結果、新しく復元することができた恐竜、ということになっている。しかし、昔のキャストを再登場させるような映画なので、恐竜についてもお馴染みのものを中心にしてくれた方がよかったのではないか。実際、ディロフォサウルスの再登場は嬉しかった。
原題のdominionには、支配者の意味もあるが、主天使も意味する言葉だ。イナゴの大群が創世記からイメージされたものであることは、多くのレビュアーが指摘する通り。メイジーはクローン人間ということで、培養器で作られたのかと思っていたのだが、この映画では母親が出産したという描写になり、マリアとキリストのようなイメージが付けられた。そうなると、グラント、サトラー、マルコムも三博士ということになるのかも知れぬ。これで、新しい良い世界が生まれますよ、と言われても、キリスト教の背景を持たない日本の観客には、しっくりこないところがある。
オーウェンを中心に見ると、「ワールド・ウォーZ」に似ている。主人公が行く先行く先でピンチに巻き込まれ、飛行機が落ちても死なず、研究所に到達する。主人公の無敵さも、問題が解決していない終わり方も似ているではないか。それにしても、オーウェンが手をかざして恐竜を制止するポーズ、いつの間に万能になったんだろう。ブルーたちを訓練する過程で決めた、ブルーたちにしか通用しないジェスチャーだったはずなのに。
最後に個人的な文句。ジアの出番が少なく、しかもメガネをやめていたのでがっかりした。これは大きなマイナスだ!
結末 2
前作とのつながり 3
シリーズのまとまり 4
個人的総合 5

