賛否が極端にわかれているようだが、ようやく観に行った。
私は、世代的にはストライクで、特撮と言えば、ウルトラマンの怪獣に夢中になっていた。一方、仮面ライダーの方は怪人が怖く、暗いイメージがあったのでほとんど観なかった。以下は、そんな観客による感想となる。
(注:ネタバレを含む)
●造形:最高
あらゆるデザインが素晴らしい。昔の印象そのままでありながら、現代的なディテールが加えられている仮面ライダー。新規性のあるデザインになっているオーグ達。どちらもかっこいい。さらに、ハチオーグの和装、蝶オーグのラスボス感あふれるダンサー衣装など、変身前の姿も魅力的だ。
●映像:奇妙
飽きさせないことを意識したのか、演出の方針が次々変化して一貫性がない。
冒頭は、昭和の特撮を思わせるカメラワーク。暴力性を伝えるためか、荒々しくブレまくるので見づらい。
中盤からは大胆にCGを導入。1号と2号の空中戦は、ちゃちだと思った人もいるようだが、ぱしぱしとヒットストップがかかっており、格闘ゲームのエリアルレイヴみたいだった。黒ライダーとのバイク戦も、何とは言わないがゲームっぽかった。
そして最後、ひたすら体をぶつけての喧嘩となる。役者を見ろ、というメッセージを感じ、イチローを演じた森山未來は特に凄味があった。
最初に言ったとおり、私は仮面ライダーに詳しくない。しかし、線路やアーケードの屋根や工場に、かつてエヴァで観た風景を感じ、玉座に繋がれたイチローはナディアの最終回のようで、仮面ライダーとしてではない既視感があった。
●脚本:悪い
TVシリーズの総集編、といった印象で、膨大な専門用語で説明不足をごまかし、次々にボス戦を繰り出していく。私としては、たくさん怪人が見られて楽しい、くらいの態度なので問題なし。ショッカーに首領が不在で、AIが成り代わっている、という設定のタイムリーさは感心したが、およそ具体的な悪事が描かれないので、敵として憎くない。ルリ子が本郷を信頼する過程や、1号2号が共闘に至る理由も描写不足。そして、イチローの目的が人類補完計画に似てしまうのはいかがなものか。
最も悪いのは、セリフ全般。「シン・ウルトラマン」では、メフィラスの言い回しがちょっとした話題になったが、「シン・仮面ライダー」では、どのキャラも口癖や決めゼリフを繰り返し過ぎている。アニメならともかく、実写では耳障りだ。
(追記)
物議を醸したNHKのドキュメンタリーを観たが、完成した作品を観れば(良い点も悪い点も)納得できる内容だった。仲良し集団で新規性のあるクリエイトなどできるはずはなく、現場にあるべき厳しさだと思った。それよりも、部分をあげつらうネット記事の危険さを感じた。作り手は委縮して何も公開できなくなるのではないか。
懐かしさ 8
新鮮さ 7
セリフ回し 3
個人的総合 6
他の人の「シン・仮面ライダー」評
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