2023年12月02日

ゴジラ -1.0

 遅ればせながら観て参りました。またもや傑作です。

 かつてのファンはもういい歳ですので、ゴジラの新作が発表されても「今さら怪獣映画なんて…」と、敬遠しがちです。
 そこで、「シン・ゴジラ」では、もし現代にゴジラが現れたら、という政治的なシミュレーションの体をとることによって、怪獣映画の持つ子供だましのイメージを払拭しようとしました。
 一方、「ゴジラ -1.0」は、山崎貴監督お得意の戦争ドラマ、「永遠の0」「アルキメデスの大戦」の世界観にゴジラを放つことにより、大人の大衆に向けた娯楽映画となりました。ド直球で楽しいのでびっくりしますよ。

注意:以下に、ネタバレを含む


●特攻隊
 主人公の敷島は、特攻隊として出撃しますが、死にたくないので故障を装います。ところが、修理の名目で寄った大戸島にゴジラ襲来。敷島が機銃を撃てなかったこともあり、ほとんどの兵が殺されてしまいます。終戦を迎え、都合二回死に損なったことになる敷島は、深い罪悪感を持って戦後を生きることになります。ゴジラと因縁のある主人公が、個人としてゴジラに対していくというストーリーは、視点がブレずわかりやすいのでいいですね。
 さて、ここで私が思い出すのが大学の恩師です。先生は特攻隊の生き残りでした。国に貢献すべく理工学を学んでいたのですが、終戦を迎え、せっかく生き残ったのだから好きなことをしよう、と文学に転じて教授になったそうです。敷島のように逃げたのではなく、出撃の順番が来るまでに終戦したという状況の差はありますが、先生のポジティブさには尊敬すべきものがあります。

●アメリカ市場
 12月からはアメリカでも公開が始まり、驚異的な高評価を叩き出している「ゴジラ -1.0」。これはもう納得の結果ですね。とてもハリウッド的なシナリオでしたから。
 例えば、冒頭でゴジラが登場するのがとても早い。序盤に見せ場を作って、物語の方向性を一瞬で理解させる、という手際の良さは、アメリカ映画でこそよく見られるものです。
 クライマックスも凄かったですね。作戦が破綻しようかというそのとき、民間船が集合して協力してくれる図は、まるで「ダンケルク」。そして、幻の試作機、震電が出撃して勝利をもたらすわけですが、これってもう「バトルシップ」まんまじゃないかと。敗戦後の日本というローカルな題材を扱いながら、実は海外基準そのままなストーリー展開だったわけです。

 予想でき過ぎる伏線や、都合良すぎるノンポリぶりなど、ツッコミどころはあるのですが、娯楽作品としてここまで徹底しているものはなかなかない。これが標準になるようだと、今後の「ゴジラ」シリーズも期待できますね。

映像の迫力 9
演技の大仰さ 9
浜辺の薄幸さ 9
個人的総合 9

他の方の注目すべきレビュー
社会の独房から:確かにやったか?は多かった!
琥珀色の戯言:説明セリフ多すぎ問題
posted by Dr.K at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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