「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」、面白かったですが、予想と違う映画でした。
1960年代、アメリカは宇宙開発でソ連に後れをとっており、国民の関心もイマイチでした。そこで、アポロ11号の打ち上げを盛り上げるべく、政府高官(?)のモーは、PR担当としてケリーをスカウトします。ケリーは、詐欺まがいのテクニックで、この仕事を成功させました。アポロに注目が集まり、打ち上げが迫るある日、ケリーは新たな仕事を命じられます。それは、アポロ計画が失敗したときのために、月面着陸のフェイク映像を密かに作れ、というものでした。
アポロは月面に達していない、という都市伝説は昔からよく知られています。これをモチーフにした「カプリコン・1」という映画もありましたが、何しろ70年代の作品。「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、この政治的ミステリーを、現代風に作り直した映画なのだろうか、と私は予想していたわけです。
ところが、ふたを開けてみると、この作品はラブコメだったのです。成功のためには手段を選ばないケリーと、実直な打ち上げ責任者のコールとが、徐々に惹かれ合っていきます。その過程は昨今のリアルな恋愛模様ではなく、大げさなコメディとなっており、60年代のような(?)レトロな雰囲気を醸しているのがなんとも心地よかったです。
クライマックスでは、国民が観たのは本当の月面着陸だったのか、それともフェイク映像だったのか? という謎に答えが出るのですが、その明かし方も大変痛快で、満足度の高い物語でした。上映終了後、「これは史実なの?」と話している若者がいましたが、確かに紛らわしい作品ではあります。
コメディ度 7
レトロ度 8
予想外度 9
個人的総合 8
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