この映画を観た感想。
●物語
高校生のリアは、スタントウーマンを目指しているが、学校の先生も両親もあきれてとりあわない。芸術大学に通う姉のリーナだけが彼女の夢を応援してくれていた。ところが姉に彼氏ができ、あっという間に結婚が決まってしまう。結婚の妨害に奔走するうちに、リアはその裏にある企みに気付く。
注:以下にネタバレを含む
●インド風アクション映画
登場人物がインド系の顔立ち(正確にはパキスタンらしい)で、民族衣装での格闘シーンが宣伝されていたことから、てっきりインド映画だと思っていたが、実はイギリス製。物語の舞台もロンドンだ。そう言えば、背景にビッグベンが映っていたような?
現在公開中の「モンキーマン」も、デヴ・パテル主演だがアメリカ映画。数年前に「RRR」が大ヒットしたので、他の国がインド風アクション映画に手を出し始めたのかもしれない。
●あまりに暴力的
アメリカのヒーロー映画にも戦う女性はいたが、戦っているとき以外は女性らしさをアピールしていることが多い。
ところがこの映画ときたら、女性陣があまりに暴力的。リアは女子高生なのに、ゴリラ女とタイマンを張り、周囲はそれをはやしたてていて、まるっきり荒れた男子校のような風景。リーナも画家志望とは思えない格闘力、敵となるラヒーラもおばさんとは思えない身のこなしで殴り合う。
インド映画ではバイオレンスアクションが人気のようだが、女性中心の作品でそれをやり切っており、手加減なしの男女平等に驚いた。
●闇深い真相
インドやパキスタンでは、家父長制、封建的な習慣が根強く、この映画のようにそれらからの解放をうたった作品は多い。
リアは、スタントウーマンへの夢を周囲に理解してもらえない。リーナも、大学で挫折し、画家への道は断たれようとしている。しかしながら、彼女ら若い世代には、そうした夢を見られるだけの自由がある。
一方、ラヒーラの世代はお見合いで結婚し、何かで活躍する機会自体がなかった。だからこそ若い世代を妬む気持ちは根深い。クローンの孫を作り、かつての自分の人生をやり直させたいという動機には、ぞっとするものがあった。その忌まわしさは、母体を弄ぶという意味でも、「ドント・ブリーズ」のジジィに近い。
リアリティの乏しいアクション・コメディでありながら、現実のインド社会の闇を感じさせる妙な味わいの映画だった。
男女平等度 10
暴力度 9
アクション性 5
個人的総合 5
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