ロズは、万能のサポートロボット。誰かに購入され、出荷されたのだが、荒天で無人の島に漂着してしまった。仕方なく動物とのコミュニケーションを試みるが、仕事を与えてくれる者はいない。拾った卵が孵化し、ロズはこの雛を育てることにした。
●抜群の始まり
島の動物たちはかわいいデザインで描かれるが、その生き様は殺伐としており、ギャップが面白い。始まったばかりなのにロズが破壊されそうで心配になった。言葉が通じなくてコミュニケーションが困難、という状況も新鮮でいい。
学習機能によって、ロズは動物たちと話せるようになる。これによってストーリーが進展するが、以降はやや普通に感じてしまって惜しいと思った。
●素晴らしいビジュアル
蝶の大群や、雁の飛び立つシーンなど、スケールの大きな見せ場があり、スクリーンで観るに値する。2Dと3Dを併用した美術とのことだが、境界を全く感じさせない馴染んだ表現だった。アクションの迫力もかなりのもので、退屈する暇もない。
●予想外の感動系
ドリームワークスと言えば、やはり「シュレック」。鋭い風刺を含んだギャグが印象深い。ところが、スタジオ創立30周年記念となる「ロズ」は、正統派の感動作だったのが意外だった。
主人公が母代わりになるストーリーということもあり、子連れのお母さんを大いに泣かせていた。一方、ロズが母になった感想を聞かれて「重い責任」と答えるところは一番笑いをとっていた。
注:以下にネタバレを含む
●渡り鳥にハズレなし
キラリが訓練の末、ついに飛び立つシーンで感動はピークに達した。子供の頃に「ニルスのふしぎな旅」に夢中になり、長じてからも「グース」がお気に入り映画になるような私にとっては、まさにストライクの作品だ。
しかし、物語はそこで終わらず、さらなる展開が待っていてかなりの満腹度があった。
●吹替の妙
字幕版がほとんど上映されておらず、吹替での鑑賞となった。
ロズが綾瀬はるかというのはすぐ気付いたが、「僕の彼女はサイボーグ」や、「義母と娘のブルース」で、ロボっぽい演技を経験していればこその起用だろうか。なかなか似合っていたように思う。
凄いと思ったのはヴォントラ。にこやかな会話の裏に絶対的な敵意を感じさせ、恐ろしかった。声優は種ア敦美か、覚えておこう。
●結末の解釈
記憶は消去されても、母親としての心は残っている、という表現なのだと思う。しかし一歩踏み込んで、ロズを回収、分析した結果、すべてのロボットに母としての経験がコピーされた、と考えるのはどうだろう。動物たちとロボットの共存する時代が、ここから始まるかもしれない。
映像美 9
野生度 8
親向け度 9
個人的総合 8

