「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のように始まるが、「風の谷のナウシカ」のように終わる。色々と惜しい凡作である。
借金取りに追われるミッキーは、宇宙へ移民となって逃れるため、〈エクスペンダブルズ〉に志願する。〈エクスペンダブルズ〉とは、使い捨て人間。危険な仕事や人体実験に使われ、死ねば直ちに新しい肉体が〈プリントアウト〉され、記憶もバックアップされる。宇宙船は、植民地候補となる惑星ニフルヘイムに着いたが、調査に駆り出されたミッキーは、その星に住む怪物、クリーパーに襲われてしまう。
物語冒頭は、ミッキーが繰り返し使い捨てられる。周囲に倫理観が欠片もなく、エグい世界観でインパクトがある。〈プリントアウト〉は超技術のはずだが、古びたインクジェットプリンターのようにつっかえつっかえ出力されるみすぼらしさで笑える。ミッキーにとっては、警備担当のナーシャとの交際が心の支えだが、何度再生されても次のミッキーと平然とつきあうナーシャの感覚も理解しがたいところがある。
注:以下にネタバレ含む
さて、ミッキー17が怪物に襲われたため、基地では早速ミッキー18がプリントアウトされる。ところが、17は奇跡的に生還し、ミッキーが二人になってしまう。これは重大な規則違反であり、見つかれば二人とも抹消となる。バレるかバレないか、というスリルで引っ張るのかと思いきや、あっさり明るみに出てしまう。
以降は、宇宙船内にクリーパーの子供を入れてしまったことに端を発する、対怪物の事件に焦点が移っていく。子供を取り返そうと押し寄せるクリーパーの大群は、さながら「ナウシカ」の大海嘯のよう。子供を返すことで解決の糸口にしよう、という展開も似ている。しかし、神々しい王蟲と違って、クリーパーとは翻訳機で会話できてしまうのでなんだか興が削がれる。
移民を率いるケネスは、いずれ政界に返り咲こうとでも思っているのか、自分が目立つことしか考えていない尊大な指導者である。クリーパーを相手にせず、交渉役のミッキーもろとも皆殺しにしようと考える。このとき、側近が、ケネスに表に出て演説をするようしきりに勧めるのだが、どさくさに紛れて怪物もろともケネスを消し、地位を奪おうとしているように見えたが、そんな展開は無く肩透かし。パワハラの証拠を集めて、ケネスを訴える反乱の方法にも違和感があった。倫理観のない世界なのに、そういうところは常識的なのか。
面白そうな材料がたくさんあるのに、掘り下げず他の話題へ移ってしまう、もったいないストーリーだった。
予告編魅力 8
倫理観 2
SF的魅力 2
個人的総合 5
他の人のレビュー
映画にわか:失敗作!

