インド映画と言えば、近年はアクション大作が売り込まれている印象がありますが、ヒューマンドラマにも名作が多いことを忘れちゃいけません。
ディーパクは、花嫁の実家で式を挙げ、いよいよ彼女を家へ連れ帰ります。日本で言う大安吉日のようなものでしょうか、列車には新婚の夫婦が何組も乗り合わせています。しかも、花嫁は皆同じ衣装でベールを下ろしているので、さっぱり見分けがつきません。ディーパクは列車でうとうとしてしまい、気が付くと降りるべき駅に着いていました。慌てて花嫁とともに降りるのですが、家へ帰ってベールをとると、なんと中身は別の女性! 花嫁のプールは、はるか遠くの駅で途方に暮れています。一方、取り違えられたジャヤの方は、なぜか本来の夫の家へ行こうとしません…
プールは、すべてを夫に委ねている従順な女性で、インド旧来の家父長制の中では理想的な花嫁と言えるでしょう。しかしそのせいで、はぐれてしまうと何もできません。そんなプールは、周囲に助けられながら、徐々に自立した女性へと成長していきます。一方、ジャヤの方は、学のある進歩的な女性で、彼女の発言が、ディーパクの家の女性たちを変えていくことになります。
このような物語では、男性は否定されるべき敵として描かれることが多いのですが、「花嫁はどこへ?」はそうではないのが素晴らしいです。男性側も多くは良心的な行動をし、想像を上回るハッピーエンドを迎えます。恥ずかしがらずにこういう結末へ突き抜けることができるパワーは、インド映画の魅力の一つ。特に、汚職警官のマノハル、あんなのずるいですよ。
パンフレットは、社会的な背景などをしっかり解説してくれるので有用。作中に、馴染みのない料理が多数登場するのですが、レシピまで載っていて感心しました。
風刺度 7
善人度 9
幸福度 9
個人的総合 9

