昨年のThe Game Awardsで、錚々たるビッグタイトルに混じって、一本だけ妙につまらなそうなカードゲームがノミネートされていて気になっていた。それがこの「Balatro」だ。今月のPS+フリープレイに入っていたのでプレイしてみた。
第一印象は、やっぱりつまらない。見た目はただのトランプだし、惹かれるようなストーリー性もない。ルールはポーカーをベースにしており独創性皆無、何より驚くのは、対人はおろかコンピューターとの対戦すらなく、淡々とノルマの点数をこなしていくだけというストイックさだ。よくもまあこんなに飾り気のないゲームを作ったな。
その印象を覆すのがジョーカー。トランプのジョーカーはワイルドカードとして使うことが多いが、「Balatro」ではスキルカードの役目を果たす。ラウンドを重ねるごとに、異様に高くなっていくノルマを、複数のスキルの相乗効果でねじ伏せていくという、暴力的な本性が姿を現していく。
思えばこれは、数々のスマホゲームで体験してきた遊びだ。ガチャを引き、スキルの組み合わせを考え、デッキを組んで、より難しいクエストに挑む。しかし、スマホゲームで多くの課金と長期間のプレイの結果ようやく得られる快感を、「Balatro」は一瞬のうちに体験させる。もちろん一切の追加料金なしでだ。ゲームの面白さの核心だけを形にした凄味は、なるほどGOTYにふさわしい。今のところ、知る人ぞ知るレベルのゲームではあるが、これが大ヒットしたら、プレイヤーはもうガチャゲーに見向きもしないのではないか。曲がり角を迎えているスマホゲーム業界に、「Balatro」が引導を渡すようだとかっこいい。
ゲームは常にその場限りで、最強のジョーカーだろうが強いデッキだろうが、プレイが終わればさよならだ。ローグライクは苦手とする私だが、いつも一からスタートするという潔さも「Balatro」の場合は好ましい。

