これはお見事。2時間半を越える長編なのに、中身が詰め詰めである。
上弦とのバトルが凄い、各キャラのエピソードに感動した、などの絶賛は他所に任せることとし、私としてはそこに至るまでの導入を評価したい。鬼殺隊は無限城でバラバラになってしまい、それぞれに戦いを余儀なくされる。次々に場面が切り替わり、ザコ鬼を一掃して進むのが、無双ゲームのようで気持ちいい。「第一章」では出番の少ないキャラもいるので、ここで一通り見せ場を作っておく、という意図もありそうだ。
「鬼滅」のスタッフにはインド映画のファンが潜伏しているのではないだろうか。スケールの大きな背景、アクションのテンポ感、スローモーションの多用。それらに加えて、いつもと違って(?)鼓動のようにドラムを叩くBGMがそう思わせたのかもしれない。映画館で観るにふさわしい高揚感あふれる映像だ。これはたまたまかもしれないが、後から後から回想によって深刻な物語が明かされる構成も、「RRR」を思い出させた。
あまりに見事なので、第二章以降この面白さを保てるのかが気がかりだ。今回メインとなる猗窩座は「無限列車」以来の因縁の敵であり、視聴者にも以前から強い印象がある。一方で、童磨は今回が初バトルなのでぽっと出の域を出ず、黒死牟に至っては顔を見せているだけだ。果たして猗窩座戦以上の盛り上がりを見せる事ができるのだろうか。
司令部では、カラスの目を借りて無限城のマップを作っている。まるっきりドローンによる遠隔操作である。昔を舞台にした物語だが、今のテクノロジーが反映されるんだな、とおかしかった。
デートで来ていると思しき若者がいたが、昔だったらバトルもののアニメなんて選択肢に入らないだろう。いい時代が来たもんだ、と感慨深かった。まあ、猗窩座に関しては悲恋ものと言えなくもないので、存外デートに向いているのかもしれない。
無惨活躍度 1
猗窩座活躍度 10
インド映画度 7
個人的総合 9

