2025年08月04日

スーパーマン

 ギャグが多めでお気楽に観られるが、一方でシナリオの手際に感心させられた。

 スーパーマンをリブートするにあたり、彼が地球に来て育てられた経緯をどう見せるのかと思ったら、まさかの全カット。まるで2作目のような始まり方で驚いた。しかも過去作のエピソードをなぞっておらず、完全に新規作。これまでのスーパーマンについて、あらかた忘れている私のような観客には好都合だ。
 最初のスーパーマンは、地球上でただ一人の超人として、シリアスで孤独な印象があった。ところが、今回は他のヒーローもすでに飛来しており、終始にぎやかだ。正直、ランタンやテリフィックの意味不明な超能力の方が見栄えがする。敵も、いかにもなヴィラン超人から巨大怪獣までバラエティに富んでいて楽しい。そして何より犬のクリプト。映画では、賢い忠犬がよく登場するが、クリプトの場合、最後まで駄犬のままおいしいところを持っていくのが新しい。
 実在の地名が出てこない世界観なのをいいことに、イスラエルやロシアを想起させるアメリカの戦争介入への批判が展開され、フェイク動画を思わせるスーパーマン侵略者説の描写など、今を鋭く切り取った作品になっており、賞レースでも健闘しそうだ。でも、一般の観客はただスーパーマンの戦いを楽しめばよい。メッセージ性を押し付けない姿勢がまた鮮やかだ。

 まだ公開して間もないのに、「鬼滅」のせいで上映回数が極端に減らされている。良作なので、観ておくことを勧めたい。

始まり方 9
政府批判 8
終わり方 9
個人的総合 7

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posted by Dr.K at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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