2025年08月17日

少年は知っていた。「Jusant」

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 少年が一人、干上がった海を歩いている。目指すは、空高くそびえる塔のような島だ。これが「Jusant」の始まり。PS+フリープレイで入手したものをようやくプレイした。

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 ゲームは、フリークライミングアクション。L2で左手、R2で右手が手がかりを掴む。うっかりボタンを離すと落ちてしまうので油断がならない。ただ、体感的な操作になっているかというと、やや中途半端。左スティックで手をのばす方向を操り、右スティックはカメラ調整となっているのだが、私は「クレイジークライマー」のやり過ぎなので、左スティックで左手、右スティックで右手、という操作の方がしっくりくる。
 感心したのはロープとハーケン。初めは、ゲームの癖に命綱があるのか、くらいに思っていたが、任意のタイミングでハーケンを打つことができ、そこを支点にロープにぶら下がることができる。すると、ロープを振ってワイヤーアクションもできるし、壁走りも可能になる。他のゲームではできないような移動ができ、独特のやり応えにつながっている。

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 とはいうものの、やはり興味の中心はその世界観だろう。少年はひたすら崖を登っていくが、そこは全くの自然ではなく、人々が暮らしていた痕跡がある。崖の上には何があるのか、人々はどうなったのか、少年が連れている怪生物は何か、など数々の謎に惹きつけられる。

(注:以下に結末までのネタバレ含む)

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 道中には、いくつもの文書が残されており、それを読むことでこの世界に起こったことがわかるようになっている。文書は二種類あり、一つは、この崖での人々の暮らしぶりを示すもの。水が干上がり、大部分はこの地を去ったようだが、残って仕事を続ける選択をした者もいたようだ。そしてもう一つが、ビアンカの文書。どうやら彼女の旅は、少年と同じコースをたどっている! ゲームでありがちな、このルートは誰が残したんだ、という疑問の解答にもなっていて良い。
 ある文書の中で、唐突に〈遠征隊34〉が出てくる。「Jusant」を開発したのはDON'T NOD。「Life is Strange」で知られるこの会社はフランスにある。同じフランスで開発中だった、EXPEDITION33」への目くばせだろう。

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 崖の頂上では、伝説の聖獣バラストが待っていた。少年は儀式を成就させ、蘇ったバラストたちが天蓋へと昇る。少年が連れていたのはバラストの幼体だったようだ。天へ昇っていく相棒を見送る少年に、久しく絶えていた雨が降り注ぐところで物語は終わる。

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 未知の世界観に説明なく放り込まれるプレイヤー。このようなゲームの場合、主人公もまた何も知らない人物として設定されることが多い。そうすることで、プレイヤーと主人公の感覚が一致するからだ。
 ところが、「Jusant」の少年は違う。道中、ギミックを起動するとき、彼は全くためらわないし驚かない。旅の目的が何なのか。相棒が何なのか。少年は初めからすべて知っていたのだ。ただ、一言も発さないので、プレイヤーが騙されていただけなのだ。
posted by Dr.K at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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