難病の少女、チューズデーのもとに、死を司るコンゴウインコが現れました。いよいよお迎えというわけですが、少女は、母が戻るまで待ってくれるよう頼みます。
古今、映画の中で〈死神〉は様々な姿で描かれてきましたが、インコというのは初めて。また、〈死神〉は超然とした性格であることが多いのですが、このインコは自分の仕事に苦痛を感じているようです。
チューズデーが彼の初めての友達となり、死を延期してもらう話かな、と思っていたら、母のゾラがそれをぶち壊しにします。
注:以下ネタバレ含む
この母、そもそもはじめから何かおかしかった。ゾラはチューズデーの世話を介護士に任せ、働いているのかというとそうでもなく、公園でぼーっとしています。お金は、家のものを質屋に売ってしのいでいる様子が描かれます。娘が死ぬことは決まっており、その現実に向き合えないということなのでしょう。
チューズデーは、帰宅したゾラに別れを言うつもりでした。しかしゾラは激怒し、インコを殺して食ってしまいます! すると、ゾラに〈死神〉の能力が移り、大きさが自在に変化するようになります。死という抽象的な概念を鳥で現し、他はリアルな母娘のヒューマンドラマになるのだろう、と思っていたので虚を突かれました。間の抜けたビジュアルに笑うしかありません。
一方その頃、世界は大変なことに。〈死神〉が仕事をしないので、死ぬべきものが死なず、パニックとなっていたのです。ゾラは巨大化してチューズデーを背負い、〈死神〉の仕事をする旅に出ます。家の中だけで終わりそうな話が、突如として世界レベルにスケールアップ。もはやどうなるのか想像がつきません。
ひと段落したところで、ゾラは〈死神〉を吐き出します。そしてようやく、チューズデーに死が与えられます。数日後(?)、一人になったゾラのもとに〈死神〉が現れます。一度は仕事を代わってくれた相手として、気にかけてくれているようです。
少女と〈死神〉の交流を描く話、と思わせて、実は母の方が主役だったのです。残された者への希望を示す物語は他にもありますが、こんなに変な方向に逸れて、しかもきちんと着地する話は見たことがありません。これを面白い、と言える人は少ないと思いますが、妙に勧めたくなる一本ではあります。
ラップ度 7
哲学度 6
奇想天外度 9
個人的総合 4
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映画「終わりの鳥」感想:「ゼロ・グラビティ」が引き合いに出されるとは。
「終わりの鳥」の感想を二人でダラダラ喋ったやつ:相変わらず面白いのでもっと更新して。

