開始10分、「あ、これパンフ買わないとだめなやつだ」。
1952年、沖縄はアメリカの統治下にあった。オンちゃん(永山瑛太)の一派は、軍の基地から物資を盗み、貧しい人々に分け与えていた。それが今夜は失敗し、アメリカ軍に追われている、という場面から物語は始まる。
最初に困ったのは、セリフが聞き取れないこと。方言に加え、沖縄独特の名前、特殊な用語が説明なく使われる。オンたちの稼業は〈戦果アギヤー〉と呼ばれるが、文字なしでは何を言っているのやら。戦果上げ屋? などと空耳状態で、大事な導入部なのに理解度低い。
その夜以来、オンは行方不明となる。6年後、親友のグスク(妻夫木聡)は刑事になってオンの消息を調べ、弟のレイ(窪田正孝)はヤクザとなって裏社会からオンを探す。恋人だったヤマコ(広瀬すず)は、オンの志を継いで学校の先生になる。彼らは、オンのその後という謎を追いつつ、飛行機の墜落、民衆の暴動、沖縄返還といった歴史上の事件に翻弄されていくことになる。
沖縄に今も米軍基地があると言っても、普段はそれを気にすることもない。ましてや、返還までの経緯など何も知らない。そんな観客からすると、この映画の中の事件は、フィクションと史実の区別さえつかない。パンフレットを事前に読んでおくのが正解だったか? とはいえ、よくわからないままにドラマの奔流に飲み込まれていく、という体験もそれはそれで貴重なものであると感じた。
政治的な問題を邦画の大作が扱うことは極めて稀。グスクやレイを通じて感じる、やりきれない現実もさることながら、ヤマコが表情を消して抗議活動に加わっているのにぞっとした。広瀬すずの演技がうまいのだろうか。幼い孤児として登場するウタは、後半、青年に成長する。子役から代わったのに、ちゃんと同一人物に見えたのに感心した。
191分という長さにたじろぐが、特に暴動開始からは一気なので、退屈する暇などない。最後に明らかになるオンちゃんの物語は、極端にファンタジーで浮いていた。重く、救いのない史実を描く中で、一筋の希望を見たい、という意図を感じた。
スケール感 8
一見の価値 9
熱演度 10
個人的総合 7
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