2021年02月27日

アーヤと魔女

 スタジオジブリの久々の新作、皆さんはご覧になりましたか。

 昨年末に、NHKで放送されたのですが、まずそのことに驚きました。ジブリがテレビの特番アニメを作るなんて、ちょっと記憶にありません。コロナのせいで、劇場公開をやめたのかな? などと勘繰ってしまいます。
 始まってみると、フル3DCGなのでまた驚きます。ジブリの長編アニメでは初だそうです。ディズニーの二番煎じにならず、ジブリのキャラの味がちゃんと出ているのが嬉しいところです。初めてでこの水準なら、今後の作品も期待できます。
 それなりに楽しみはしましたが、ストーリーはあまりに尻切れとんぼ。まるで、テレビシリーズ第一話という感じでした。エンドロールに添えられたイラストが非常に良く、この後日談こそアニメで観たい、と思ったものです。これらのイラストは、宮崎吾郎監督によるものだそうですが、最後の最後でやっぱり2Dがいいなあ、と思わせてしまうのは広報的には失敗ではないでしょうか。

 なぜ今さらこんな記事を書くのかと言うと、劇場公開のニュースがあったからです。「アーヤと魔女」が、4/29に一部のカットを加えて公開されることになりました。これが一番驚きました。続きならともかく、いったんテレビで放送したものを劇場にかけて、一体どれくらいの人が見に来てくれるものでしょうか。ひょっとすると、これまたコロナのせいで、新作がなかなか集まらない映画館サイドからのリクエストがあったのかもしれませんね。

規模感 4
バンド 8
続きが気になる度 7
個人的総合 5

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2021年02月07日

ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画

 またもやインド映画の底力を見せられることになった。面白すぎる。

●実話に基づく??
 ラケーシュは、インドの威信をかけたロケット打上げに失敗。プロジェクトは元NASAのいけ好かないエリートに奪われ、ラケーシュは閑職の火星探査チームに異動になる。予算も少なく、新たに集められたメンバーは、経験の乏しい若手を中心とするスタッフだった。
 一応実話に基づくので、地味でまじめな内容に終始してもおかしくないのだが、さすがインド映画、エンターテインメントに振り切っている。集まったスタッフのキャラが立っていて面白い。タイプの違う美女がずらりと並ぶので、見た目にも麗しい。

●主題はチーム作り
 実話ベースの宇宙開発、という題材は、科学考証の関係で難しい話になりがち。ところが、「ミッション・マンガル」はそういう面倒は一切すっとばす。予算の問題は主婦の節約術でなんとかなってしまう。やる気に乏しくバラバラになっているチームを一つにまとめる、チーム作りのほうが主題になっているので、誰でも共感しやすい話になっていて上手い。メンバーが、科学を志した原点を思い出すシーンには、ベタながら泣きそうになった。

●メリハリがすごい
 チームが一つになれば、あとはどうとでもなる。踊っている間にオフィスが改装され、あっという間に探査機が完成するので驚いた。思い切りのいい省略で、物語が加速する。
 打上げが成功してからは、さらにすごい。火星に着くまでに数か月、各メンバーの日常にも色々なことが起こるだろうに、その時間をほとんど無視して話をつないでいる。おかげで最後までダレない。

●理想のポリコレ映画
 実際の火星探査プロジェクトは、この映画のように女性中心ではない。本作は、宇宙開発という特殊な題材を扱いつつ、女性の社会進出を応援する映画だ。私はいわゆるポリコレが嫌いで、ハリウッド映画の主役が黒人や女性ばかりになっているのを見ると、うんざりする。だが、「ミッション・マンガル」ではそう思わない。なぜなら、女性が元気に活躍する姿のみが描かれ、白人や男性が無理矢理悪役にさせられていないからだ。タラの夫は、一見横暴だが憎めないところがあるし、軍人であるクリティカの夫の紳士ぶりは素晴らしい。

 最後に、事実を知って驚いたこと。インドでは、宇宙開発出身の科学者が大統領になったことがある。また、探査機マンガルヤーンは、今も元気に(?)火星を回っているそうだ。

男性紳士度 7
女性美人度 9
気力充実度 10
個人的総合 9
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2021年01月30日

劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編

 いや〜、これはハードルが高かった。録画しておいたテレビの再放送を全部見て、ようやく劇場版を観られる体制になったら年が明けてた(笑)
 TVアニメがヒットして劇場版という場合、外伝的なオリジナルエピソードとして作られることが多い。ところが、「無限列車」は本編であり、これを見ておかないと将来の続編を見るのにも支障をきたすと予想される。こんな特殊な映画が、興行収入歴代1位をたたき出しているのは本当に不思議だ。
 とにかく違和感がなく、普通。劇場版だからといってかしこまらず、いつも通りの作画でいつも通りにギャグも入れ、来週にも続きがありそうな終わり方だ。TVと同じスタッフが手掛けているので統一感があり、安心して見ていられる。逆に言うと、日頃から劇場クオリティのものを見ていたからこその見事な普通さなのである。
 TVでは顔見せ程度の登場だった煉獄杏寿郎が、劇場版専用の主人公として機能しており、それによって映画として一定の独立性を保っているのがうまい。煉獄の戦闘シーンは素晴らしかったが、個人的には列車と融合した鬼のCG表現がダサかったので、炭治郎サイドの戦闘が見劣りしたのが残念だった。

善逸活躍度 1
煉獄活躍度 10
完結性 4
個人的総合 7
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2021年01月02日

ルース・エドガー

 予備知識0で観たら、なんとも恐ろしい映画だった。

 17歳のルースは、人望厚くスピーチに長け、学業もスポーツもできる優等生。アフリカで少年兵として育てられた悲惨な過去を持つが、養子として引き取られたアメリカで理想的な成長を遂げた、と周囲からは見られていた。あるとき、ウィルソン先生は、ルースのレポートに疑念を持つ。歴史上の偉人になったつもりで主張を書け、というその課題に対し、アフリカの過激派の言葉を記していたのだ。

 表裏があり、何を考えているかわからない人物、なんてのは他の映画でもよく登場する。だが、そういう作品では、彼と接触する誰かが主人公となり、観客と視点を一にしているはずだ。観客は、主人公とともに、謎の人物を追っていくことで内容を理解しようとする。
 ところが、「ルース・エドガー」では、何を考えているのかわからない本人が主人公なのである。これが気持ち悪い。はじめは、主人公目線で共感さえするが、次第に状況が不透明になっていく。愛をもって育ててきただけに、養父、養母のうろたえぶりが痛ましい。これはとんでもない結末になるのでは、とスリル満点の後半だった。後から見返せば、彼の行動の真意がわかるようなヒントがあるのだろうか? 珍しく深刻な演技のオクタヴィア・スペンサー(ウィルソン先生役)も見どころだ。

社会派度 9
不透明度 8
不気味度 9
個人的総合 5
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2020年12月28日

珍品堂が勧める2020年の映画ベスト3

 正直、映画を楽しむ身には最悪の年でした。まず、緊急事態による営業停止。再開しても、世の中が自粛を奨励しているのでなかなか劇場へ足が向きませんでした。そして、「ムーラン」などのネット配信への移行には落胆しかありません。私は劇場で観たいのです。
 一方で、ジブリ作品のリバイバル上映が観られたのは良かったです。「鬼滅」フィーバーが終わってスペースが空いたら、ぜひまたやってほしいものです。

第3位 コンフィデンスマンJP プリンセス編
 面白いけど犯罪だしなあ、と引っ掛かりのあった前作から一転、いい話に仕上げてきました。さらなる続編の構想はあるらしいのですが、東出昌大の不倫が持ち上がり、続投に黄信号が灯った上に、三浦春馬も竹内結子も出られないようになるとは、誰が予想できたでしょう。だからこそ、この明るく楽しいお祭り映画を、慈しんでいきたいと思うのです。

第2位 サーホー
 インド映画らしく長いのですが、本来なら5時間くらい必要そうなストーリーがぎっちぎちに圧縮されてます。正直、完成度は荒い。でも無暗に勢いだけはあって、中盤でタイトルが出る頃にはもれなくノックアウトされることでしょう。大迫力の映像が満載ですが、公開直後に緊急事態宣言だったため、劇場で観られた人は少ないのではないでしょうか。

第1位 ジョジョ・ラビット
 こんなので笑っていいの? 戦争映画に新しい視点を盛り込んだ、という点では「この世界の片隅に」に匹敵するところがあります。主人公とヒロインはもちろん、スカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルなどのキャスティングが秀逸。そして何より、エンディングが最高。アカデミー賞は「パラサイト」に譲る結果となりましたが、私は断然こちらの方が好きです。
jojorabbit.jpg
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2020年12月25日

ミセス・ノイズィ

 卒業生に薦められたので観ましたが、これは当たりでした。

 この映画は、かつてワイドショーで話題になった「騒音おばさん」事件から着想されたフィクションです。調べてみたら、あの事件は2005年ですか。15年も経っているのか、とまずそこに驚きます。
 主人公の真紀は、かつては文学賞も獲ったことがある小説家。しかしながら、結婚してからは子育てに追われ、執筆業はスランプ中です。どうにか締め切りまでに原稿を書こうとしますが、そのせいで幼い娘は放置気味。そして、隣からは激しく布団をたたく音が…
 コミカルな描写もあるのですが、物語はリアリティがあってスリリング。ここからどうなってしまうのか、何度も手に汗を握る瞬間がありました。「カメラを止めるな!」でも感じたのですが、無名の役者を起用していることが効果をあげていると思います。役者に色が付いていないことで、先行きがより不透明になるんですよね。
 実際の「騒音おばさん」事件では、後日、あのおばさんが実はかわいそうな人だったのだ、という情報がネットで流れました。今となっては真相はわかりませんが、「ミセス・ノイズィ」はそのさらに先へと踏み込んでいきます。何が正しいかは視点で変わる。フィクションだからこそできる手法で、観客を翻弄します。
 主要な登場人物が多面性を持って描かれるのに反して、脇役はかなり一方的な扱いを受けています。特に、若者はクズですね。炎上商法を仕掛けておいて手のひらを反す編集者も、真紀を利用して一儲けを企む無職の甥も、どうしようもなく不快です。一方で、意外にちゃんと小説を見る目があるキャバ嬢はおいしい役でした。
 真紀は、隣人をモデルに「ミセス・ノイズィ」を執筆し、大騒動になります。紆余曲折を経て完成した小説は、傑作として評価されるのですが、部分的に映画とメタな描写に感じられるため、遠回しな自画自賛になっているような気がします。すみません、意地の悪い見方をしてしまいました。

キャスティング 9
迫真度 8
風刺度 9
個人的総合 7
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2020年12月20日

STAND BY ME ドラえもん2

 酷評がすごいので、恐る恐る観に行ったのだが、そんなに悪くない。「ドラクエ」の恨みをドラえもんで晴らすようでは、単なる八つ当たりではないのか。なお、本当に気に入らなかった人は、所詮は前作に8点を入れてしまうような者の感想なので、スルーしていただきたい。

 まず、映像が良い。これは自分でも不思議なのだが、ひみつ道具がアニメになっても大した感慨がわかないのに、3DCGだとわくわくするのはどうしてだろう。スモールライトで変化する視点は楽しいし、タイムマシンで移動中の背景は素晴らしいし、どこでもドアがループになるのに感心するし、入れかえロープ作動中の見せ方も良い。
 そして、原作からの選択がうまい。今回、のび太の結婚式の話になることは事前に知っていたが、前作で結婚前夜の話は済んでおり、きれいに完結していたので、どう続けるのかが気になっていた。なるほど、こうつなげたか。ただ、おばあちゃんの「お嫁さんが見たいねえ」は、マンガではあと1コマでラストという場面のセリフであり、切れ味鋭いオチがなくなったのはもったいない。

 それにしても、大人ののび太が結婚式から逃げたことが、こんなに非難されるとは思わなかった。これはフィクションだし、話の起点に過ぎない。のび太の身になってみれば、しずかちゃんのような完璧な女性に対して、怖気づく気持ちはわかるだろう。(おそらくそのために、この物語でのしずかは異様に完璧に描かれている) 自分ならそんな行動はしない、というのはあまりに冷たい見方ではないか。大人のび太を断罪する者は、他の「ドラえもん」で子供のび太が時折見せるヒーロー性を絶対視しすぎている。
 また、よく指摘される通り、時代設定がおかしい。おばあちゃんがあんな恰好をしているのは、昭和の昔だろう。だとすれば、作中で未来とされる時代は、実は今より昔かもしれないことになる。だがそのビジュアルは、遥かな未来にしか見えない。実はこれ、マンガの通りの表現になっているのだ。この映画、どうやらかなり年配のファンをターゲットにしているらしい。のび太とともに昭和を生きたかつてのファンは、いまや大人のび太を通り越し、その父母に近い歳になっている。そんな人に、のび太の結婚式の列席者の一人になってもらおうという、なかなか渋い贈り物になのだ。子供や若者にこのメッセージは伝わるまい。お子様をお連れの方は、毎年のアニメ映画の方を選ぶべきだろう。

 パンフレットは意欲作。期待を煽るイントロダクションや、評論家によるレビューを載せず、名場面集に徹している。本編はテレビドラマ並みの説明過剰でくどいところがあったが、パンフレットでは情報が削ぎ落されていて好印象だ。

映像美 8
道具再現度 9
パンフレット 8
個人的総合 7
posted by Dr.K at 23:20| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月13日

ばるぼら

 公開日以降、2年前に書いたこの記事へのアクセスが増えており、なんだか急かされるような感じで観てきた。

 原作は、手塚治虫の中でもとびっきり退廃的なマイナー作だ。稲垣吾郎のファン、などという理由で観に行くと、なんじゃこれは、という感想で終わってしまう可能性が高い。
 しかし、「ばるぼら」の映像化としてはほぼ満点に近い。まず、二階堂ふみによるバルボラの再現度が完璧。裸のシーンも非常に多く、朝ドラと並行してこれを演っていたとしたら驚きだ。稲垣吾郎も、異常性欲者などという危うい役を見事やりきった。渡辺えりのムネーモシュネーは、キャスティングの時点で100点だが、衣装になったら1000点位の出来で笑いそうになった。
 次に、背景が面白い。ロケーションは新宿なのだが、撮影監督がクリストファー・ドイルだからか、どことも思えない景色に見えることがある。都庁が映るシーンもあるが、他のドラマなどで「ここは新宿ですよ」とわからせるために使われるような、ありきたりの見せ方をしていない。音響も独特で、耳をつんざくフリージャズが使われており、退廃的な画面ともども先鋭的なアートを印象付ける。
 ストーリーの方は、原作を上手にスケールダウンしており、美倉とバルボラの関係に焦点を絞っている。結果、バルボラの正体などがあいまいになっているが、それはそれで面白い。気になったのは、原作の結末がバッサリと切られていること。

「だが彼の作品は残るのだ」

 手塚による芸術論、とも言われる原作で、結論となるこのナレーションが私は好きなのだ。だが映画にこの部分はない。
 パンフレット代わりに売られている「公式読本」には、映画全編の脚本が掲載されている。読んでみると、驚いたことに原作に忠実なエピローグが書いてある。どの段階でカットが決断されたのだろうか。ますます気になってしまう。

キャスティング 10
アート性 9
エンタメ度 3
個人的総合 5
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2020年10月17日

鬼滅の刃 兄妹の絆

 映画館がえらいことになっている。「鬼滅の刃」がシネコンのスクリーンを6つも占領し、10分ごとに上映開始してる。まるで駅の時刻表だ。なるほどこれが「無限列車」か。

 宣伝を兼ねてか、テレビで「兄妹の絆」を放送したので観た。マンガもアニメも知らず、これが初めて見る「鬼滅」である。

●炭治郎登場
 名前通りに炭など売っているせいか、ファンにはお馴染みのあの模様がどてらにしか見えない。
●冨岡義勇登場
 ほらきた偉そうなイケメン。白虎隊あたりのイメージなのかな。どうしても学ランとどてらにしか見えんが。
禰󠄀豆子がよく知られた姿に
 巻物をくわえた忍者キャラだと思ってたのに違ったのね。
●鱗滝先生登場
 さすがジャンプ漫画。転生ものやなろう系と違って、訓練して強くなる王道感が良い。
 鱗滝に限らず、面をつけたキャラが多いが、その昔、表情を動かすのが面倒という理由で面を多用したアニメがありましてね…。
gensen.jpg
 そして、天狗の面を見るとどうしても「ゲンセンカン主人」が頭をよぎる。
●最終選別試験
 炭治郎だけでなく、他の候補者にも痣があるのが気になる。聖痕みたいなものなのかな。
 総集編でディテールが省かれているせいか、時代設定がよくわからないまま観ていたのだが、ボス戦で大正とわかりびっくり。思ったより近代だった。そういえば町のシーンで電柱あったわ。

 私は、設定は近いものの、もっとひねくれたトーンで作られている「甲鉄城のカバネリ」の方が好みのようである。
posted by Dr.K at 17:12| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月27日

TENET テネット

 上映が済んだ館内では、観客の頭の上を?マークが飛び交うのが見えるようだった。やってくれたわクリストファー・ノーラン。「メメント」や「インセプション」に連なる難解映画が久々の登場だ。

注:以下ネタバレ含む

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posted by Dr.K at 16:53| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする