2018年04月15日

バーフバリ 伝説誕生

 昨年末に公開されたインド映画、「バーフバリ 王の凱旋」の評判が尋常でなく良いので興味を持ったが、調べてみると、この映画は二部作の後編にあたることがわかった。ならば、前編から通して観たいというのは人情。
 春休み、塚口サンサン劇場が前作との連続上映を行っていたので、行こうと思ったらなんと満席。貴重な機会を逃して悶々としていると、今度は九条のシネ・ヌーヴォが連続上映を始めたではないか。仕事を休んで遠征を敢行し、ついに観られた。合計5時間にわたる長丁場であったが、退屈する瞬間など全くなく、最高に楽しむことができた。王を称えよ!

 「バーフバリ 伝説誕生」は、インドで上映されたバージョンよりカットされているが、それでも2時間半もある。これだけ長いと、余計に感じるシーンや退屈なシーンがありそうなものだが、息もつかせぬアクション、またアクション。中身がパンパンに詰まっていて驚いた。
 例えば、主人公のシヴドゥに対し、育ての母が「滝を登ってはいけません」と諭す。次の瞬間、もう登り始めているというテンポの速さ、逡巡やら葛藤やらという言葉はこの作品には無縁である。
 シヴドゥの恋も斬新。ヒロインのアヴァンティカは凄腕の戦士で、うかつに前に出れば殺される。そこでシヴドゥは、気付かれないように近づき、彼女の体にペイントを施す(笑) ついに見つかった時も、戦いながら相手に化粧を施し、女性として目覚めさせるという超絶アクション。そんなんありか、と目が点になるが、古代インドの英雄なら仕方がないと納得させられる。
 後半は、王国の奴隷にして最強の剣士、カッタッパが語る王位争いの話。シヴドゥの父となるアマレンドラ・バーフバリが戦場を駆ける。「マッドマックス」か「300」かという演出で爽快感抜群。ただの無双ではなく、作戦もひねりが効いていて面白いのなんの。
 戦争の顛末を語り終えると、カッタッパが重大な一言を発する。え〜! ここで終わり? インドでは続編までに2年待たされたと聞くが、こりゃ気になってたまらんわ。続きは「王の凱旋」だけど、これより面白いの? マジで?

アクション 8
スケール 9
オリジナリティ 10
個人的総合 8
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2018年03月11日

シェイプ・オブ・ウォーター その2

1、個人的な既視感
 この映画は、監督が語る通り「大アマゾンの半魚人」「美女と野獣」など、様々な過去の作品へのオマージュが含まれています。ですが、それら意図して似せたものとは別に、私が似ていると思った作品があるんですね。以下に紹介しますので、「シェイプ・オブ・ウォーター」が気に入った人はぜひ触れてみてください。

●ゲーム「バイオショック インフィニット」
bioinfinite.jpg
 「シェイプ・オブ・ウォーター」は、背景美術が素晴らしいです。アパートも、研究所も、時代を感じさせるだけでなく、使い込まれた感じがあってとてもリアルです。
 「バイオショック インフィニット」は、時代設定は違うんですけど、古き良きアメリカの再現という点で似ています。そして、見た目のみならず、音楽性がかなり近いんです。背景に史実に基づいた政治的問題があり、不気味で哀愁のあるモンスターが出てくる点も、共通点と言えるかもしれません。

注:ここからは結末の考察など、ネタバレを含みます。

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posted by Dr.K at 21:17| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月10日

シェイプ・オブ・ウォーター その1

 祝、アカデミー賞!
 俳優の演技はいいし、映像は作りこまれているし、音楽も最高です。人間と怪物の恋、という内容もロマンチックです。
 でも、よくよく見ると、あちこちにゴロゴロと異物が転がっている。これはとんでもない曲者映画ではないでしょうか。

注:以下にネタバレを含みます

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posted by Dr.K at 23:57| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月19日

スリー・ビルボード

 アカデミー賞の有力候補らしいが、こんなのを選ぶなんて、審査員はマゾやな。これだけ観客をもてあそぶ映画、なかなかあらへんで。

 アメリカの片田舎で、女性がレイプされた上殺されるという事件が起こる。それから7か月、被害者の母ミルドレッドは、捜査が進まないことに業を煮やしていた。彼女は広告会社のレッドと契約し、道路わきの看板にメッセージを掲げる。

「はよ犯人を捕まえんかい、このボンクラ署長!」

 3枚の看板(つまりこれがスリー・ビルボード)はテレビにも出て一躍話題になる。ところが、この名指しされた署長が、警官たちや町の皆から慕われる人物だったのでさあ大変。周囲を敵に回し、息子にも背を向けられた母の孤独な戦いが始まる。

注:以下に結末を含むネタバレあり

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posted by Dr.K at 17:11| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月23日

キングスマン:ゴールデンサークル

 前作の好評を受けてか、劇場が増えて吹替え版も公開されている。結構結構! 予告編で大ネタをバラし過ぎな感じが少し心配だが、実際に観てみると…?

注意:以下ネタバレ含む

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posted by Dr.K at 20:34| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月11日

スター・ウォーズ/最後のジェダイ

 えらいこっちゃ。
 EP7「フォースの覚醒」は、新三部作の幕開けではあったものの、旧シリーズのキャラに頼った物語だった。ところがEP8「最後のジェダイ」は一転、過去作の残滓を破壊しにかかる。

注:以下にネタバレを含む

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2018年01月05日

ちょっと今から仕事やめてくる

 会社員の隆(工藤阿須加)は、パワハラと過酷な勤務に疲れ果て、駅のホームからふらふらと電車に飛び込もうとする。それを間一髪で助けたのはアロハシャツの青年。彼は同級生のヤマモト(福士蒼汰)と名乗るが、隆には覚えがない。やがてヤマモトが小学生時代の同級生ではないとわかり、隆はその正体を訝しむが…

 この映画、キャスティングが大変良い。工藤阿須加はまじめな若手社員にぴったり。パワハラ部長の吉田鋼太郎と、できる先輩社員の黒木華のせいでブラック企業の様相が真に迫る。そして何より、今まで演技力ではぱっとしない印象だった福士蒼汰が、大阪弁のキャラを快演している。
 底抜けに明るくそれでいて深い洞察力を持ったヤマモトとの交流を通して、隆は狭められていた視野を取り戻し、タイトル通りにブラック企業から解放される。ああよかった。残るは消えたヤマモトの正体だけだ。ところがそこからが冗長。ヤマモト視点からの説明が長ったらしく続く。
 そして現在、ヤマモトがバヌアツで教師をやっているとわかり、隆がそこを訪れてエンドとなる。南の島の映像は一転して現実感がなく、辞めた後どうするんだろう、などと深刻に考えていた観客は肩すかしを食らう。

 原作はこのような結末ではない。では映画は何を意図したのだろうか。
 おそらくこれ、「ショーシャンクの空に」をなぞっているのではないか。ブラック企業は監獄。ヤマモトは行先について手紙で情報を残す。そして、冒頭と結末で繰り返される希望をめぐる問答。最後に南の島の空撮。いずれもが「ショーシャンク」に符合する。名作にあやかった演出を、おこがましいととるか、微笑ましいととるかは難しいところ。希望に満ちたハッピーエンド、と素直に見られれば良いが、ここまで現実離れしないと仕事は辞められないのか、と落胆する人もいそうだ。

キャスティング 8
ミスリード 7
意外性 2
個人的総合 5
posted by Dr.K at 23:25| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月11日

ブレードランナー2049

 完膚なきまでに続編だった。
 なにしろ前作から30年以上経っている。「続編」と宣伝されていても、新作から観て大丈夫、というふうに作られている方が普通だ。だが、「ブレードランナー2049」は違う。明らかに前作を観ておく必要がある。

 30年の間に、映像表現は進歩した。であれば、「ブレードランナー」の名を借りたアクション大作になってしまっても不思議はなかった。だが、「ブレードランナー2049」はそうならない。前作が提示した思考実験をきちんと受け継ぎ、ゆったりと間を持たせ、もの悲しい展開もそのままだ。昨今の映画の中では、かなり異質の仕上がりと言うしかない。

注:以下にネタバレを含む

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posted by Dr.K at 20:59| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月21日

ブレードランナー

 公開迫る「ブレードランナー2049」。「ロボコップ」や「トータル・リコール」のようなリメイク作品かと思い込んでいたのだが、実は続編であると知り、おさらいのため旧作を観ることにした。

●実はそれほど未来ではない
 冒頭、「ロサンゼルス、2019」。再来年じゃないか、おい。この頃、レプリカントと呼ばれる人工生命が作られ、奴隷として使われていた。反逆、脱走したレプリカントを捕えるのがブレードランナーだ。

●実はアクション映画ではない
 人間VSレプリカントとなれば、激しい戦いが期待できそうなもの。確かに、作中のレプリカントは人間を超える身体能力を発揮する。しかし、印象に残るのはもの悲しさ。古びた写真に象徴される記憶や、全編にわたって降り続ける雨もあって、非常に情緒的な印象を与える映画だ。手塚治虫のSF作品にどこか通じるところがある。

●実は凄腕ではない
 主人公のデッカードは、凄腕のブレードランナーとして、今回のレプリカント狩りを依頼される。演じるのは若き日のハリソン・フォード。しかし、「インディー・ジョーンズ」のような痛快アクションは見せない。
 とにかく悪戦苦闘が続くのだ。ターゲットを見失いそうになるし、殺されそうになるし、最後の戦いでは全く優勢な場面がない。主人公でありながら、レプリカント側とは異なる非力さを感じさせる。
 そして結末では意味深な謎を残すのだ。

 この続きが明らかになって、面白いのかがっかりするのか。「2049」はぜひ観ようと思う。

世界観 9
アクション度 5
レトロ感 8
個人的総合 6
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2017年10月07日

スイス・アーミー・マン

 無人島で、孤独に絶望して首をつろうとしているハンク。そこへ一人の男が流れ着く。「人だ!」と一瞬喜ぶハンクだが、返事がない、ただの屍のようだ。がっかりしてやっぱり死のうとすると、死体が激しくガスを噴き出し、沖へ進みだした。ハンクは慌てて追い、死体にまたがる。ジェットスキーのように海を駆ける死体、そこへ最高のタイミングでタイトルが出る。「スイス・アーミー・マン」。ハリー・ポッターでおなじみのダニエル・ラドクリフが全編にわたって死体を名演する。

(以下に結末を含むネタバレあり)

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posted by Dr.K at 23:55| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする