2019年03月10日

アリータ: バトル・エンジェル

 よくぞ、よくぞここまでのものを作りあげてくださった! 「銃夢」ファンとしては感謝の言葉しかない。

 まず主人公のアリータが良い。予告やポスターでは大きな目が不気味だったが、本編を観ると全然大丈夫。「アバター」で青い宇宙人にだんだん慣れたのと同じような現象が起こる。これは製作のジェームズ・キャメロンの計算なのだろうか。「アバター」の時よりもCGのキャラが俳優と違和感なく絡んでいて、技術に長足の進歩が感じられる。
 映画の冒頭は、原作と同様、アリータが拾われ、目覚めるところから始まる。アップの映像が多くなるが、3Dで観ると質感に加えて立体感までもが伝わるので、VR一歩手前の存在感が味わえる。アリータの可愛さもマシマシである。

 次に風景が素晴らしい。原作では、スラムの上に空中都市が浮かぶビジュアルが、読者を一瞬で虜にした。映画でもそれが忠実に再現されており、これこれ、これが観たかったんだと大いに満足できる。途中で「君の名は」の「前前前世」みたいになるのはどうかと思うけど。(アリータの吹替は三葉と同じ人なのでますますそう思う)
 なお、3Dで観た場合、主観映像こそないものの、アイアンシティに迷い込んだような臨場感が付加される。

 さらにアクションが極まっている。アリータの機甲術、ザパンのダマスカスブレード、イドのロケットハンマーなど、原作通りの名称が付いた技や武器に、この映画ならではのリアリティで動きが付くのだからたまらない。未来の競技であるモーターボールの迫力も凄まじい。
 3Dだと立体感の分情報量が増え、さらに迫力あるアクション映像を楽しむことができる。

 以上でたびたび書いたように、「アリータ」は、「アバター」「ゼロ・グラビティ」と並ぶ、3Dで観るべき映画だ。だが残念なことに、ほとんどの映画館で3D上映が終了してしまっている。「スパイダーマン」が控えているせいとは言え、なんたる不遇!

 さて、「銃夢」のファンとしては、あまりにもクレイジーなノヴァ教授がどのように描かれるのかが気になるところ。「アリータ」では、ノヴァは様々な人物の意識をジャックして、アイアンシティを監視しているという設定だ。これなら本人は登場する必要がない。出ないのか、残念だなあ、と思って見ていたら、最後の最後、原作通りのメガネで現れた! 本当に忠実に作ってくれたなあ、と感激である。

 文句を付けるとすれば、邦題に「銃夢」と入っていないことと、あまりに未完であること。長い原作をほとんど省略しておらず、続編の余地だらけだ。モーターボールの本戦が始まれば、ジャシュガンとの対決が待っている。ザパンもちゃんと復讐の機会を残している。何より、ノヴァとの対面が控えているのだ。ザレムが観たい! とアイアンシティの住民のような気持になる。

映像美 9
原作リスペクト度 10
続編必要度 9
個人的総合 9

他の方の注目すべき批評
忍之閻魔帳:バーチャルボーイはひどい。
映画にわか:「FF7」のミッドガルとの類似を指摘。
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2019年02月28日

劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ

 この「シティーハンター」は、他のリバイバル映画とは一味違う。筋金入りというか、気合の入った懐古趣味である。

 現在を舞台にした新規のストーリーなのに、何一つ新しくなってない。劇画調の絵柄、ギャグのテンポ、勢ぞろいしたかつての声優、何もかもが昔のままだ。エンドロールの「Get Wild」だけでなく、劇中でも聞き覚えのある曲がガンガンかかり、その瞬間、空気までもが90年に逆戻りする。「シティーハンター」シリーズをあまり見なかった俺でもそうなのだから、往年のファンならイチコロだろう。若い層にアピールしようと、余計なことをしていないのが好ましい。
 世の中は変わっていくものだが、アニメの中くらい変わらなくてもいいじゃないか。冴羽獠は、いつまでも若くカッコつけていて、最強でいい。老け込んで時代に取り残されたりしないし、古臭いギャグを恥ずかしがったりしないのだ。技術的にも昔のままで、ドローンなどの現代的な兵器にこそ3DCGが活用されているが、車は手描きとこだわっている。

 オープニング、現在の新宿駅に伝言板はないので、依頼人はスマホのアプリから合言葉を書き込む。ところが結末、伝言板が復活した。時代に逆行するエンディングは、「シティーハンター」はこれからも変わらない、という宣言だ。そこまで言うなら付き合うしかないではないか。

話の古さ 8
ギャグの古さ 10
曲の古さ 10
個人的総合 5
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2019年01月20日

シュガー・ラッシュ:オンライン

 邦題のせいで、「シュガーラッシュ」がオンラインゲームにバージョンアップするのかと思いましたが、そんな話ではありません。今回は、ラルフとヴァネロペがインターネットの世界へ飛び出します。

 とにかく、このネット世界の描写が素晴らしくて。乱立する未来的なビルで表現されたウェブサイト群も美しいのですが、ネット上の事象に形を与えるアイデアの数々が見事です。しつこい押し売りのようなポップアップ広告、クラブのような動画サイト、そして一番面白かったのが予測検索の擬人化でした。
 ヴァネロペは、ディズニーのサイトを訪れます。ここで、予告編にもある通り、歴代ディズニープリンセスが登場します。シンデレラが、ガラスの靴をたたき割って武器にする武闘派になってます(笑) そして驚いたことに、プリンセスたちは、ちゃんと元の声優が声をあてています。こういうところをいい加減にしないのはさすがですね。ディズニーのサイトでは、スター・ウォーズやマーヴルのキャラも登場し、これらの作品がディズニー傘下に入ったことを実感させます。
 う〜ん、ちょっとネタの幅が広すぎますね。ある程度ネットにはまっていないとわからないことだらけですし、ゲームキャラも引き続き出ていますし、ディズニー及び傘下の会社の映画も知っておいた方がいい。ディズニーらしからぬマニアックさです。

注:以下にネタバレを含みます!

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posted by Dr.K at 19:44| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月13日

ボヘミアン・ラプソディ

 公開からだいぶ経ったというのに、いまだに劇場は大入り。クイーンの知識がなくても大丈夫、との評判だったので観てきた。

 とにかく時間を取られる映画だ! 帰ってきてまずやったのは、ネットで映像を探すこと。多くの人が言うとおり、クライマックスのライブが素晴らしかったのだが、実際はどうだったのか気になって調べずにいられない。そして、調べるとその再現度に驚嘆する。次に、タイトルになっている「ボヘミアン・ラプソディ」だが、なんとこの曲が一部しか流れない。物語中でユニークな制作過程が描かれているので、気になってフルバージョンを探してしまう。ご丁寧にもYouTubeに公式チャンネルが設けられているので、ばっちり視聴でき、しかも他にも名曲ぞろい。これはファンが増えるわ。ついでに、クイーン特番なども多数アップされているので、映画では描かれなかったあれやこれやまで見始めると時間がいくらあっても足りない。泥沼である。
 一番盛り上がるところで終わるので、非常にポジティブな気持ちになれる映画だが、フレディは避けられない死と背中合わせにあり、陰もまた非常に濃い。その一瞬の輝きが、観客を釘付けにするのだろう。

 最後に余談。今回フレディ役を熱演したラミ・マレックだが、実はゲームに出演していた経歴がある。
untildawn.jpg
 PS4のホラーゲーム「UNTIL DAWN」だ。この不気味なサイコ野郎がフレディ役を射止めるとは、大変な出世物語だ。

エンターテイメント度 8
ライブ再現度 9
クイーンの楽曲 10
個人的総合 8

他の方の注目すべき批評
三角締めでつかまえて:「魁!クロマティ高校」のフレディに爆笑
えすのおと:高校生が書く文じゃない。素晴らしい。
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2018年11月29日

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

 蒔田彩珠を知っているだろうか。子役でデビューして現在16歳の女優だ。テレビの中ではアイドルやタレントが愛想の良い笑顔をふりまいているが、蒔田はちっとも笑わない。あてられるのが大体不機嫌な娘役で、脇でちょっと出るだけでも、その存在感は際立っている。そんな蒔田がメインキャストで映画に出るという。ならば行かねばなるまい。
 そんなわけで、押見修三のマンガが原作という事も知らずに観た。圧倒された。

 物語の主人公は志乃(南沙良)。ひどい吃音で、まともに会話ができないが、なぜか歌だとスムーズに言葉が出せる。一方の佳代(蒔田彩珠)は、ギターが趣味で将来はミュージシャンと考えているが、致命的な音痴。この二人が出会い、文化祭でガールズバンド「しのかよ」としてステージに立とうとする。

(注:以下に結末までのネタバレを含む)

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posted by Dr.K at 20:59| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

バーフバリ 伝説誕生〈完全版〉

 昨年末に公開された「王の凱旋」が、インド人もびっくりの大ヒット。ファンの要望に応えて、6月にはカットなしの「王の凱旋〈完全版〉」を公開。余勢をかって夏には監督の過去作「マガディーラ」まで公開された。そして秋には「王の凱旋IMAX」が登場。とどまるところを知らぬバーフバリ旋風の最後をしめくくるのが、この「伝説誕生〈完全版〉」だ。

●逆順もまた楽し
 「バーフバリ」は、前編「伝説誕生」と後編「王の凱旋」から成る二部作だが、公開時期の都合上、私が観た順番は、

「伝説誕生」→「王の凱旋」→「王の凱旋〈完全版〉」→「伝説誕生〈完全版〉」

となっており、完全版については順序が逆になる。
 ところがこれが予想外に効果的だった。「伝説誕生」の冒頭は、赤子を連れて逃げるシヴァガミのシーンだが、初めて観た時には当然、「これは誰だろう」と思う。しかし、「王の凱旋」を観た後だと、そこに至るまでのシヴァガミを知っているので、この冒頭から伝わる感慨は破格のものがあった。
 また、「王の凱旋」で若いデーヴァセーナを観た後だと、「伝説誕生」の囚われの姿はより一層惨たらしく見え、物語への思い入れが何割増しかになった。
 こんなにリピート効果が高い映画はあまり覚えがない。

●待望の「マノハリ」
 〈完全版〉では、カットされていたミュージカルシーンが復活。「マノハリ」と呼ばれるその場面は、酒場の女を相手にした艶やかな群舞で、映像的には見どころと言える。
 実はストーリー的にも重要で、王国の裏切り者を探すために酒場に潜入するというシーンにあたる。アマレンドラが策を使って酔客の注意をひいている間に、バラーラがターゲットを探すという共同作戦になっているのだ。
 DVDは最初のバージョンなので、このシーンは入っていない。完全版のソフトは発売されるのだろうか? 熱烈なファンがついている作品なので、それなりに売れそうに思うのだが。 

シヴドゥの踊り 6
超巨大バーフバリ像 7
マノハリ 8
個人的総合 9
posted by Dr.K at 11:54| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月25日

クワイエット・プレイス

音を立てたら、即死。

 という宣伝コピーがあまりに秀逸。わずかな異音も聞き漏らせない緊張感は、映画館で観てこそ楽しめる。
 荒廃したアメリカの風景、一家を守る髭面の父親、反抗的な娘、そして聴覚が発達し目が見えない敵。ゲーム「LAST OF US」と数々の要素が共通しており、このゲームのファンなら観ておいて損はない。
 世界がどうなっているのか、事件を俯瞰するような描写は一切なく、あくまでこの一家のサバイバルにのみ焦点を絞っているのが良い。限られた舞台で数々のピンチを切り抜けていくのは、ある種ゲームのような感覚がある。映画では描かれなかったあんな場合、こんな場合、この家族はどうやって切り抜けてきたのだろう、と何かと想像が膨らむのは、アイデアに力がある証だろう。
 パンフレットを読んでびっくり。この父親、主演・監督・脚本の三役だったのか、大した才人だ。妻役は本当に監督の妻だったのか、家族でこんな映画を作るなんてすごい。そして、娘役に聴覚障碍者の役者を使っている。声を立てない映画なので、全然気が付かなかった。

 ホラー系の映画は、希望のない終わり方をするものが多い。それだけに、本作の意外性のある結末は賛否がありそうだ。

劇場向け度 10
ホラー度 6
ご都合主義 7
個人的総合 7
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2018年10月21日

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」、2019年に延期

 「この世界の片隅に」がヒットしたことによって、原作から省かれたエピソードを追加した〈長尺版〉を制作することになりました。それが、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」です。12月の公開を予定し、ティザーサイトも作られていたのですが、


この通り延期となってしまいました。
 クラウドファンディングで資金集めをしていた頃を思えば、何ということはありません。ゆっくり良いものを仕上げてほしいと思います。
 延期の原因は、制作の難航とのことですが、現在、のんが元の事務所と和解するだの決裂しただのとニュースになっており、その影響があるのかないのか気になるところです。のんさんの声あっての作品ですから、こじれないといいのですが。
posted by Dr.K at 16:51| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月22日

未来のミライ

 「ペンギン・ハイウェイ」の感想に、「未来のミライ」より面白い、と書こうとして手が止まった。いかんいかん、観ないで決めつけるのはフェアじゃない。そんなわけで、まだ上映している劇場へ行ってきました。ネット上では酷評が目立ちますが、そんなに悪くありません。以下は、なぜこんな作品が出来たかについての憶測となります。

 まずテーマ。家族の絆を描きたい。そのために、子育てに奮闘する夫婦をリアルに描こう。経験者なら共感するだろうし、自分の子供のころを懐かしむ観客もいるだろう。
 「細田君、夏休みの大ヒット作を頼むよ。もっとターゲットを広げてくれないと」
 ならば、4歳のくんちゃんを冒険させよう。そうすれば子供も楽しめるだろう。
 「細田君、それじゃあオタクが喜ばないよ」
 この話、女の子いらないんだけどな。仕方ない、妹が制服姿で未来から来ることにしよう。理由とか考えてないけど。
 「細田君、SF設定はちゃんとしないと」
 じゃあタイムパラドックスを説明しとくか。赤ちゃんと未来のミライちゃんは同時に存在できない…と。(だが、なぜかくんちゃんは未来の自分と対話できている。)
 「福山雅治のために、最高にカッコいい役を頼むよ」
 ご先祖様に会うエピソードを作るか。まずい、これお父さんがかすんじゃうよ。
 「細田君、映像が地味だよ」
 うるせーな。じゃあ東京駅をCGバリバリで描いてやるよ。(怖すぎて、その後のくんちゃんが鉄道嫌いになりそう)
 「うまくいったら、続編頼むよ」
 そんな無茶な。仕方ない、くんちゃんをあまり成長させず、ロードムービー形式にして、エピソードが追加できるようにしておこう。

 山下達郎の爽やかな歌に乗って、夫婦の軌跡が紹介されるエンドロールみたいなオープニング。とてもわくわくしますし、改築された家そのものにドラマが感じられます。この部分こそが、細田監督の本当に描きたかった部分のような気がしてなりません。いっそのこと悪夢の東京駅から出発してあのオープニングに帰着すれば、傑作だったかもしれません。
 気になった点は、くんちゃんに対して、4歳児には理解できない水準の会話が投げかけられることです。そのため、観客に直接言葉が向いているように聞こえ、いつもより説教臭く感じられるのだと思われます。

技術力 9
陳腐度 7
クソガキ度 10
個人的総合 5

他の方の注目すべき批評
machinakaの映画夢日記:大酷評注意。
アニメとスピーカーと…:なるほど「夢十夜」か!
posted by Dr.K at 19:58| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月09日

カメラを止めるな!

 これは困った。面白かったので、ぜひ観てほしいのだが、ネタバレしてはいけないタイプの作品だ。何にも書けねぇ。

 監督も俳優も全くの無名。わずかなミニシアターで公開され、ひっそりと終わるはずが、口コミで人気になり、今では東宝でやっている。こんな成功は聞いたことがない。
 確かに面白かったが、では、誰にでもおすすめできるかというと、それは違う。ゾンビ映画やスプラッター表現が苦手な人は、やはり無理だろう。また、映画をあまり観ない人よりは、映画を観過ぎている人のほうが、この作品の仕掛けは効くように思う。
 ストーリーに触れられないので、パンフレットを誉めてごまかそう。制作の裏話は面白いし、推薦文は熱いし、ストーリーの構造は分かりやすく図解されているし、止めにシナリオが丸ごと載っている。低予算映画とは思えない充実したパンフレットだ。

 作品の知名度が上がったので、今後ありそうな展開が、人気俳優を起用してのリメイクだ。絶対うまくいきっこない。もし作られたら、作中の〈監督〉のように、罵倒してやるつもりだ。

キャスト知名度 1
ホラー度 1
企画性 10
個人的総合 9

他の方の注目すべき批評
忍之閻魔帳:技ありなれど傑作ではない、は言い得て妙。
posted by Dr.K at 19:53| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする