1960年、南米コロンビアで一人寂しく暮らすマレクは、ホロコーストを生き延びたユダヤ人です。ある日、隣の空き家にヘルマンと名乗るドイツ人が越してくるのですが、ふとしたことから、彼がヒトラーであると気付きます。役所に訴えるのですが、ヒトラーなどとっくに死んだはず、と全く相手にされません。マレクは写真機と、ヒトラーについて書かれた本を買い込み、決定的な証拠をつかむために隣家を見張り始めます。
マレクにとっては、家族の仇であるヒトラー。はじめのうちヘルマンは、部下に守られ、凶暴そうな犬も連れており、いかにも恐ろしい人物に見えます。しかし、調査を始めたマレクは、写真を撮るだけでなく、筆跡を確認しようとしたり、隣家に侵入して調べたりと、恐れ知らずの行動に出て視聴者を冷や冷やさせます。果たして隣人はヒトラーなのか? スパイ映画のような謎を扱っているのに、ビジュアルは偏屈な爺さん二人が不器用につきあっているだけ、というギャップが笑えます。しかも、ただの悪ふざけで終わらず、それぞれの戦後に向き合うきちんとしたお話になっている。結末の余韻はなかなかのものでした。ヘルマンとカルテンブルナー夫人が親しくなり、今後の人生が少しでも良きものになればいいですね。
映画ではいささか使われ過ぎのヒトラーですが、まだ新しい切り口があるのだな、と感心しました。
地味度 8
滋味度 7
エンディング 8
個人的総合 6
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