2020年12月20日

STAND BY ME ドラえもん2

 酷評がすごいので、恐る恐る観に行ったのだが、そんなに悪くない。「ドラクエ」の恨みをドラえもんで晴らすようでは、単なる八つ当たりではないのか。なお、本当に気に入らなかった人は、所詮は前作に8点を入れてしまうような者の感想なので、スルーしていただきたい。

 まず、映像が良い。これは自分でも不思議なのだが、ひみつ道具がアニメになっても大した感慨がわかないのに、3DCGだとわくわくするのはどうしてだろう。スモールライトで変化する視点は楽しいし、タイムマシンで移動中の背景は素晴らしいし、どこでもドアがループになるのに感心するし、入れかえロープ作動中の見せ方も良い。
 そして、原作からの選択がうまい。今回、のび太の結婚式の話になることは事前に知っていたが、前作で結婚前夜の話は済んでおり、きれいに完結していたので、どう続けるのかが気になっていた。なるほど、こうつなげたか。ただ、おばあちゃんの「お嫁さんが見たいねえ」は、マンガではあと1コマでラストという場面のセリフであり、切れ味鋭いオチがなくなったのはもったいない。

 それにしても、大人ののび太が結婚式から逃げたことが、こんなに非難されるとは思わなかった。これはフィクションだし、話の起点に過ぎない。のび太の身になってみれば、しずかちゃんのような完璧な女性に対して、怖気づく気持ちはわかるだろう。(おそらくそのために、この物語でのしずかは異様に完璧に描かれている) 自分ならそんな行動はしない、というのはあまりに冷たい見方ではないか。大人のび太を断罪する者は、他の「ドラえもん」で子供のび太が時折見せるヒーロー性を絶対視しすぎている。
 また、よく指摘される通り、時代設定がおかしい。おばあちゃんがあんな恰好をしているのは、昭和の昔だろう。だとすれば、作中で未来とされる時代は、実は今より昔かもしれないことになる。だがそのビジュアルは、遥かな未来にしか見えない。実はこれ、マンガの通りの表現になっているのだ。この映画、どうやらかなり年配のファンをターゲットにしているらしい。のび太とともに昭和を生きたかつてのファンは、いまや大人のび太を通り越し、その父母に近い歳になっている。そんな人に、のび太の結婚式の列席者の一人になってもらおうという、なかなか渋い贈り物になのだ。子供や若者にこのメッセージは伝わるまい。お子様をお連れの方は、毎年のアニメ映画の方を選ぶべきだろう。

 パンフレットは意欲作。期待を煽るイントロダクションや、評論家によるレビューを載せず、名場面集に徹している。本編はテレビドラマ並みの説明過剰でくどいところがあったが、パンフレットでは情報が削ぎ落されていて好印象だ。

映像美 8
道具再現度 9
パンフレット 8
個人的総合 7
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2020年12月13日

ばるぼら

 公開日以降、2年前に書いたこの記事へのアクセスが増えており、なんだか急かされるような感じで観てきた。

 原作は、手塚治虫の中でもとびっきり退廃的なマイナー作だ。稲垣吾郎のファン、などという理由で観に行くと、なんじゃこれは、という感想で終わってしまう可能性が高い。
 しかし、「ばるぼら」の映像化としてはほぼ満点に近い。まず、二階堂ふみによるバルボラの再現度が完璧。裸のシーンも非常に多く、朝ドラと並行してこれを演っていたとしたら驚きだ。稲垣吾郎も、異常性欲者などという危うい役を見事やりきった。渡辺えりのムネーモシュネーは、キャスティングの時点で100点だが、衣装になったら1000点位の出来で笑いそうになった。
 次に、背景が面白い。ロケーションは新宿なのだが、撮影監督がクリストファー・ドイルだからか、どことも思えない景色に見えることがある。都庁が映るシーンもあるが、他のドラマなどで「ここは新宿ですよ」とわからせるために使われるような、ありきたりの見せ方をしていない。音響も独特で、耳をつんざくフリージャズが使われており、退廃的な画面ともども先鋭的なアートを印象付ける。
 ストーリーの方は、原作を上手にスケールダウンしており、美倉とバルボラの関係に焦点を絞っている。結果、バルボラの正体などがあいまいになっているが、それはそれで面白い。気になったのは、原作の結末がバッサリと切られていること。

「だが彼の作品は残るのだ」

 手塚による芸術論、とも言われる原作で、結論となるこのナレーションが私は好きなのだ。だが映画にこの部分はない。
 パンフレット代わりに売られている「公式読本」には、映画全編の脚本が掲載されている。読んでみると、驚いたことに原作に忠実なエピローグが書いてある。どの段階でカットが決断されたのだろうか。ますます気になってしまう。

キャスティング 10
アート性 9
エンタメ度 3
個人的総合 5
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2020年10月17日

鬼滅の刃 兄妹の絆

 映画館がえらいことになっている。「鬼滅の刃」がシネコンのスクリーンを6つも占領し、10分ごとに上映開始してる。まるで駅の時刻表だ。なるほどこれが「無限列車」か。

 宣伝を兼ねてか、テレビで「兄妹の絆」を放送したので観た。マンガもアニメも知らず、これが初めて見る「鬼滅」である。

●炭治郎登場
 名前通りに炭など売っているせいか、ファンにはお馴染みのあの模様がどてらにしか見えない。
●冨岡義勇登場
 ほらきた偉そうなイケメン。白虎隊あたりのイメージなのかな。どうしても学ランとどてらにしか見えんが。
禰󠄀豆子がよく知られた姿に
 巻物をくわえた忍者キャラだと思ってたのに違ったのね。
●鱗滝先生登場
 さすがジャンプ漫画。転生ものやなろう系と違って、訓練して強くなる王道感が良い。
 鱗滝に限らず、面をつけたキャラが多いが、その昔、表情を動かすのが面倒という理由で面を多用したアニメがありましてね…。
gensen.jpg
 そして、天狗の面を見るとどうしても「ゲンセンカン主人」が頭をよぎる。
●最終選別試験
 炭治郎だけでなく、他の候補者にも痣があるのが気になる。聖痕みたいなものなのかな。
 総集編でディテールが省かれているせいか、時代設定がよくわからないまま観ていたのだが、ボス戦で大正とわかりびっくり。思ったより近代だった。そういえば町のシーンで電柱あったわ。

 私は、設定は近いものの、もっとひねくれたトーンで作られている「甲鉄城のカバネリ」の方が好みのようである。
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2020年09月27日

TENET テネット

 上映が済んだ館内では、観客の頭の上を?マークが飛び交うのが見えるようだった。やってくれたわクリストファー・ノーラン。「メメント」や「インセプション」に連なる難解映画が久々の登場だ。

注:以下ネタバレ含む

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posted by Dr.K at 16:53| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月20日

人数の町

 満席である。映画館は、営業再開以来、間隔をあけて席を販売していたが、突如として制限が緩和され、この日から全席販売になった。久しぶりのことなので、こんなに窮屈だったっけ、と驚く。しかもよりによってこのタイトルである。

 借金取りに追われる蒼山(中村倫也)は、全身黄色づくめの男に助けられ、〈町〉へ案内される。そこには、同じように行き場のない若者が集められていた。〈バイブル〉に書かれたルールを守りさえすれば、衣食や安全は守られる。そこは地獄か天国か?
 前後にタモリが出てくれば、まるっきり「世にも奇妙な物語」の特別編という感じだ。前半は、〈町〉の気味悪さが物語を引っ張る。他の物語の超管理社会と異なり、なんだか色々ゆるいのがかえってリアルだ。脱出防止の仕組みは特に面白い。頭でも爆発させるのか、と思いきや間の抜けた音楽がかかりはじめ…。
 新人監督のデビュー作だからか、風刺の矛先がなかなか鋭い。荒唐無稽な〈町〉の設定描写の合間に、統計上の実数が差し込まれ、ぎょっとさせられる。結末を知った後では、果たして私たちは〈町〉の外にいるのだろうか、と自問したくなる。

 ドラマにCMに大活躍の中村倫也が主演なので、それ目当てと思われる女性客で劇場はいっぱいになっている。興行収入は上がるだろうが、おそらく面白くない映画として評判は下がっているだろう。彼のイケメンぶりが発揮される場面など、ほとんどない。

風刺性 9
演技力 8
低予算度 7
個人的総合 6
posted by Dr.K at 10:56| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月13日

2分の1の魔法

 それほど期待していなかったが、やっぱりピクサーはうまい。

 まず、世界観の伝え方がうまい。剣と魔法のファンタジーといえば、時代は中世くらいと決まっているが、それが現代になったら? という舞台設定。文明が進んで魔法が忘れられ、アメリカの郊外のような住宅地になっているのだが、野良ユニコーンがゴミを漁っているビジュアルのインパクトがすごい。
 脇のキャラクターがうまい。室内犬並みにスケールダウンしているドラゴンが情けない。冒険のカギを握るマンティコアが、現代にすっかりなじんで(?)仕事に奔走しているのが面白い。暴走族のピクシー、小さな体でバイクに乗る方法が斬新だ。ファンタジーものでお馴染みの種族が、再解釈されてユニークなキャラになっている。
 兄のバーリーは、ゲームから得た知識で冒険を導いていく。魔法カードの絵柄に既視感があるな、と思ったらエンドロールにウィザーズ・オブ・コースト社がクレジットされていた。MtGの許諾もらったのかな。
 クライマックスの戦闘はかなりのお気に入り。敵も迫力があるし、ここまでに出てきた魔法を見事に応用して使いこなすイアンの姿に、大きな成長を感じることができる。この部分、ゲーム化したら面白そう。開発は、ビジュアルが似ている「ナック」の会社に依頼したい。
 ハッピーながら、ちょっと切ない結末も粋で良い。吹替え版では、エンドロールで「全力少年」が流れるが、わざわざ選ばれただけのことはあって歌詞が見事にマッチしており、最後まで感心させられた。

世界観 9
吹替声優 7
王道度 9
個人的総合 8
posted by Dr.K at 19:53| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月03日

コンフィデンスマンJP プリンセス編

●周到なプロモーション再び
 本編を見たからこそ言えるのだが、予告編が秀逸だ。コックリ(関水渚)の存在を隠す形で編集されている。
 実際は、コックリが主役級の活躍を見せるため、意外かつ新鮮な気持ちで楽しむことができた。関水の演技は素晴らしく魅力的で、レギュラー陣に全く負けていない。抜擢されるだけのことはあると感心した。

●安定のストーリー運び再び
 ダー子一味は、富豪の遺産を奪うため、コックリを偽の娘に仕立て上げる。いつものメンバーが、コックリをサポートするために奔走する。その過程で、3人+五十嵐の持ち味がきっちり生かされている。
 舞台は前作よりさらにスケールの大きなリゾート地になり、歴代ゲストをはじめ豪華キャラの共演も楽しい。特に、デヴィ夫人の出演は卑怯である。竹内結子や三浦春馬の再登場も嬉しいが、前作のオチを受けての出演となるので、先に「ロマンス編」を見ておくことは必須となる。

●見事などんでん返し再び
 どんな種明かしが待っているのか、色々予想しながら見るのだが、今回も全くもって当たらない。しかもなんだかいい話になっている。自爆テロのおじさん、誰かの仕込みだと思ったんだけど、はずれたなあ。
 いい話で終わらず、エンドロール後に再び生瀬勝久で落とすあたりも抜かりない。次回作があるのかわからないが、このオチは毎回続けてほしい。

キャスティング 10
リアリティ 3
エンタメ度 9
個人的総合 8
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2020年08月17日

おにいちゃんのハナビ

 いつもだったら各地で開催されているはずの、花火大会は中止。お盆なのに里帰りできない、という人も多いことでしょう。そんなときにこの映画をチョイスして上映してくれるパルシネマは素晴らしいですね。

 難病の妹、華(谷村美月)に励まされて、ひきこもりの兄、太郎(高良健吾)が奮闘します。私、こういう物語は苦手なんですが、「おにいちゃんのハナビ」は、なんというかバランスがいいですね。妹がいい娘過ぎるだけだと、現実離れしてしまいますが、兄の引きこもりぶりがリアルで、地に足が付いている感じがします。
 舞台となる、新潟の片貝まつりがまたいいですね。祝い事だったり、追悼だったり、個人が奉納した花火には想いがのっています。こういう祭りだったら、時代が変わっても続いていきそうです。会場のシーンでは、そこまでの話で出てきた住人が、それぞれに花火を楽しんでいる様子が映されます。ここで華を気にかけていた担任(佐藤隆太)が出ないのが気になりますね。話が湿っぽくなりすぎると思ったのでしょうか。
 ストーリーは予告編の通りで、意外性はありません。しかし、スクリーンいっぱいに広がる花火は感無量。そして、最後に待っている小さなサプライズにも泣かせられます。

 内容もさることながら、上映のタイミングが素晴らしく、映画館で観る価値がありました。ありがとうございました。

季節感 9
地方色 9
感動度 9
個人的総合 9


posted by Dr.K at 11:28| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月30日

ガーンジー島の読書会の秘密

 イギリスの離島、ガーンジー島は、戦時中ナチスの占領下にあった。島民は、この災難をひと時忘れるため、こっそり集まって食事会などを開いた。その会は、ナチスの目をごまかすため、読書会の形をとった。
 そして戦後、作家のジュリエットは、この読書会に興味を持ち、取材して本を書こうと思い立つ。一度は現地で温かく迎えられたジュリエットだったが、会の創設者であるエリザベスがおらず、そのことについては誰もが口をつぐんでしまうのだった。

 邦題がまずくて、何やらサスペンスのような気配だが、実際は純然たるヒューマン・ドラマかつラブストーリーである。秘密の中心にいるエリザベスが、そこにいないことによって逆に大きな存在感を感じさせるという仕掛けが面白い。この点で、私が大好きなゲーム「Life is Strange」と近しいものを感じた。このゲームでは、行方不明のレイチェルが物語に大きな影を落としており、どんな娘だったのだろう、と想像させることがプレイヤーをけん引する。
 ジュリエット役のリリー・ジェームズは、さすがにシンデレラを演じただけあって、地味な田舎を背景にしても美人オーラが凄い。物語では、夫となる候補が何人か出てくるが、全員見劣りしてしまう(笑)

歴史もの度 5
ローカル度 8
恋愛もの度 7
個人的総合 5
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2020年07月25日

ベイビー・ドライバー

 主人公のベイビーは、交通事故で両親を亡くして以来、耳鳴りが止まらない。しかし、一度音楽をかければ、天才ドライバーとして覚醒する。犯罪組織の逃がし屋として使われていたベイビーは、恋人との出会いをきっかけに足を洗おうとするが…。

 とても評判が良いので気になっていたこの映画、このたび、ドルビーシネマ版として再上映。かなり料金が上乗せになってしまうが、せっかくなので思い切って観に行く。
dcinema.jpg
シアターの入り口からこの物々しさ。通路の映像が専用のものになってなくてちょっと残念。
 「ベイビー・ドライバー」の見どころは、音楽とシンクロするアクション。ドルビーシネマの音質が生かされ、迫力満点で楽しめた。また、ドルビーシネマの特徴として、黒が本当に真っ暗になるのだが、そのせいでシーン切り替えのブラックアウトが強烈すぎる

 犯罪組織なので、基本的にイカれた悪人しか出てこない。そんな中、ヒロインのデボラがめっちゃいい子で、野獣の檻に放たれたウサギ状態。ベイビーの気がかりが身につまされる。クライムアクションの割には、後味の悪くない結末で、最後まで見やすい良作である。

つかみ 10
盛り上がり 9
結末 7
個人的総合 8
posted by Dr.K at 23:44| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする