2024年11月25日

さがす

 楓は、定職に就かずだらしない父の智と二人暮らし。智から、懸賞金のかかった殺人犯、山内を目撃した話を聞くが、とりあわないでいたところ、翌日智が姿を消してしまった。楓はクラスメイトの豊とともに、父の手がかりを求めて行動を起こす。

 前々から面白いと聞いてはいたが、確かにすごい映画だ。
 まず俳優の演技。楓役の伊東蒼、不遇の娘がハマり過ぎている。そりゃ「新宿野戦病院」であんな役をもらう訳だ。殺人犯の山内を演じたのは清水尋也。背筋も凍る気持ち悪さだ。「海に眠るダイヤモンド」の爽やかイケメンと同一人物とは思えない。そして主人公の智は佐藤二郎。二転三転するストーリーの中で、翻弄される智を見事に演じている。主要キャストの確かな演技が、超展開のストーリーに謎のリアリティを感じさせてくれるのだ。

注:以下にネタバレを含む。

続きを読む
posted by Dr.K at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月10日

「ベイビーわるきゅーれ」を一気に観る

 新作の公開と合わせてTVシリーズが作られるなど、メジャー感が増しており、評判も良いので気になっていた。しかし、どうせなら一作目から観たい…と思っていたら塚口サンサン劇場で一挙上映。一週間限定だが、この機会を逃してなるものか。

「ベイビーわるきゅーれ」
 低予算映画でB級感が強い。特に、メイドカフェのくだりがきつい。今よりちょっとだけ古い、というズレが大きな違和感につながっている。20年くらい経っているとこういう感覚がなくなるのは不思議である。とはいえ、独自の世界観とキャラクター性はこの時点で確立しており、観ないという選択肢はありえない。

アクション性 7
B級度 10
敵の格 2
個人的総合 5

「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」
 人気を獲得して自信をつけたのか、余計な説明が入らずエンタメ全開になっており非常に見やすい。石あかりのコミカル演技が炸裂、他のキャラクターもはじけ飛んでいる。着ぐるみバトルの場面は大好き。敵側の兄弟と、2対2となるアクションも見ごたえあり。女対男、で全く手加減がないバトル描写には時代の先端を感じる。

アクション性 7
エンタメ度 10
敵の格 6
個人的総合 7

「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」
 池松壮亮が貫禄の演技を見せ、アクションシーンは頂点に達した。予告では、完結編の雰囲気だったが、実際はそんなことはなく、TVシリーズはこれ以降の物語となっているらしい。騙された! ちさまひコンビ、まだ20歳の設定だったのか。知らなかった! 時々見ている映画レビュー動画のかいばしらがちゃんと俳優をしていた。驚いた!

アクション性 9
絶体絶命度 9
敵の格 10
個人的総合 6

 旧作をサブスクなどで見て、新作だけ劇場に行けばいいじゃないか、という意見があるかもしれない。だが、いつでも見られるものは意外と見ないものなのである。この機会に追いついて良かったと思う。
posted by Dr.K at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月05日

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

 かなり評判が悪く、期待値を下げて観に行ったが、幸いなことに楽しめた。

 予告編から想像した内容と全然違う。ジョーカーがリーという仲間を得て、スケールアップした悪事を働くのかと思ったらそんなことはない。バットマンに相当する正義のヒーローが現れ、ジョーカーと対決するのかと思ったらそれもない。なるほどこれは人気が出ないわけだ。しかし私としては、普通の人が想像しない続編を形にしたことを評価する。

注:以下にネタバレを含む

続きを読む
posted by Dr.K at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月28日

侍タイムスリッパー

 自主制作映画なので、豪華なセットもCGも使いません。しかし、映画館で観てよかった、という点では今年一番でした。

samtip.jpg 物語は全くタイトルの通りで、幕末の侍、高坂が現代にタイムスリップします。ちょっとシュールな設定ですし、ハイテンポなギャグや、時間移動のギミックを使った複雑なストーリーになりそうです。ところが実際はそんな予想を裏切って、高坂のまっすぐな生き様と、周囲の温かい人間関係を描いた作品でした。「寅さん」をはじめとする、古き良き邦画に近い感覚で楽しむことができました。
 観客もその雰囲気に乗せられるのか、館内は笑いが絶えません。異例のヒットで、東宝の大スクリーンで拡大上映されているのですが、これではまるで田舎のミニシアターです。観客は年配の女性が多かったようですが、こんなに居心地がいい映画館は久しぶりです。
 感動の部分を明かすのは野暮なので、私が笑ったところを挙げます。まず、初めて斬られ役をする場面。血のりまで仕込まれた高坂は、本当に斬られたと思い込み長々と回想に入ります。死なないで見る走馬灯なんて初めてです。次に、斬られ役の稽古をする場面。高坂は本物の侍なので、反射的に斬り返してしまいます。結果、師匠の方が本職の斬られっぷりを披露する羽目に…

 さて、この映画のパンフレットは上映から数か月遅れて発売されました。私も、観たときは未発売だったのですが、最近、他の映画を観るついでに買ってきました。自主制作に奮闘する日々が記録されており、こちらもまた感動的でした。ファンには一読をお勧めします。

SF度 2
時代劇愛 10
人情度 9
個人的総合 8
posted by Dr.K at 00:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月20日

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版

 昨年公開の「ゲゲゲの謎」が良かったので、観に行きました。「真生版」となってどこが変わったのか、ほとんどわからなかったのですが、これは私の勘違いでした。
 私は、エピソードが追加されるとか、構成や順序が変わるとか、いわゆる〈ディレクターズカット〉的なものを予想していたんですね。ところが実際は、制限されていた残虐表現を当初想定されていたものに戻す、作画や動画をブラッシュアップする、などビジュアルを改善したものだったのです。いや〜、これはわからない訳です。
 「真生版」は、もともと、「ゲゲゲの謎」豪華版ブルーレイにのみ収録される特典として制作されました。それが、この公開のおかげで、スクリーンで観られたのはありがたいことです。また、「上映記念冊子」も良かったです。ビジュアルばかりで文章の少ない内容に、物足りなさを感じた人がいるかもしれません。しかし、元のパンフレットは、映画のビジュアルをほとんど使わず、解説ぎっしりの異様な編集でしたから、両方そろえるとバランスが良いと思いました。
 改めて見ると、冒頭の廃墟シーンに、過去の事件の跡がしっかり描かれているんですね。あの丸いの、奴の成れの果てだったのか〜。二度観て良かったと思える作品でした。
posted by Dr.K at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月13日

ハヌ・マン

 仕事もしていないさえない青年が、ハヌマーンの力を得て、スーパーヒーローとして覚醒する物語。インド映画なので、ハヌマーンの神話なんて知らんわ、という観客にも一から説明してくれるので安心です。

 冒頭、ヒーローに憧れる少年が登場します。試行錯誤しますが、どうしてもなれません。バットマンにもスパイダーマンにも親がいない、ということに気付いた少年は、家に火を放って親を殺害。長じてからは、幼馴染の技術提供で無敵になり、都会のゴミどもを殺してまわっています。こりゃとんでもないダークヒーローだな。
 場面は一転、巨大ハヌマーン像が見守る秘境の村で、仕事もせずふらふらしている青年ハヌマントゥが登場します。さっきの奴、主人公じゃなかったんか〜い、と盛大にずっこけます。
 とある事件をきっかけに、ハヌマントゥは神の力を得て、大立ち回りを演じます。その見せ方が、まるっきり「バーフバリ」なんですね。音楽までそっくりで、微笑ましいやら呆れるやら。ハヌマントゥの友人に映画マニアがいて、まるでプラバースだ、と言ってたような気がしますが、こんな辺境に住んでてどうやって映画を観てるんでしょうね。
 神の力の存在を知り、冒頭の男、マイケルが村を訪れます。以後、ヒーロー対ヴィランとなっていくのですが、マイケルのハイテクヒーロースーツは、田舎の村にはあまりにも場違いで、シュールなおかしさを生んでいます。

 エンドロールには、2025年続編公開、の文字が。何かの冗談としか思えません。この続きを作ると、世界どころか宇宙規模の戦いになってしまうのですが。

インパクト 8
アバウト度 10
大風呂敷度 10
個人的総合 7
posted by Dr.K at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月01日

ブレッドウィナー

cs25th.jpg 制作スタジオの25周年を記念して、リバイバル上映があったので観てきました。

 パヴァーナは、アフガニスタンに暮らす少女。タリバン政権下では、女性の権利が極端に制限されており、女性のみで外出することさえ禁じられています。ある日、父親が政府に捕らえられてしまい、母と姉、幼い弟とパヴァーナの4人となった一家は立ち行かなくなります。パヴァーナは男装し、父を取り戻すため行動を起こします。
 カートゥーン・サルーンは、〈ケルト三部作〉では、アイルランドに伝わる神話をファンタジックに描いて見せました。驚いたことに、アフガニスタンの過酷な現実を描いたこの物語でも、その作風は変わりません
 パヴァーナは、亡き兄をモデルに物語を考え、弟に話して聞かせます。その内容が、切り絵のアニメーションとなって、本編と並行して進むのです。陰鬱で荒涼とした現実の風景と、色鮮やかな切り絵の世界とのコントラストは見事です。
 さて、メインキャラでもないのに、印象に残った登場人物がいます。それは一人の青年でした。父の教え子でありながら、タリバン兵としてパヴァーナたちをいたぶるクソ野郎です。物語終盤、戦争が本格化したのか、彼も連れていかれるのですが、そのときのビビっている表情に感じるものがありました。威勢がいいのは身分の低い者を相手にしたときだけ。彼だってアメリカと戦いたくはないのです。

アニメーション 8
メッセージ性 10
音楽性 4
個人的総合 6
posted by Dr.K at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月08日

モンキーマン

 この映画を観た感想。
boryoku.jpg
 あれ? 最近同じことを書いたような?

 前半。キッドは、闘技場でモンキーマンに身をやつし、八百長で稼ぐ日々を過ごしている。その目的は、母を殺した者たちへの復讐だ。ついにその機会を迎えたキッドだが、作戦は失敗に終わり半死半生となる。
 監督・主演・脚本のすべてを手掛けたデヴ・パテル。俳優としては、「スラムドッグ・ミリオネア」や「ライオン 25年目のただいま」など、格調高い名作で好演してきたが、いざ、初監督となったらこんなバイオレンス・アクションだったので驚いた。しかも、陰鬱でシリアスなトーンなので気が滅入る。

注:以下にネタバレを含む

続きを読む
posted by Dr.K at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月30日

フォールガイ

 ゲームのモブキャラがプレイヤーに恋する話なら最近見た。いやそれは「フリーガイ」。じゃあ、ソーセージみたいなキャラがわちゃわちゃするオンラインゲームか。いやそれは「フォールガイズ」。

 「フォールガイ」は、スタントマンを主人公にしたストーリーだ。コルトは、超有名俳優(ということになっている)トム・ライダーのスタントを長く担当してきたが、事故により現場を離れる。1年後、プロデューサーのゲイルの説得でスタントマンに復帰するが、そこでは、かつての恋人ジョディが監督に昇進しており、一方、主役のトムが行方不明になっていた。
 チラシの印象の通りのバカ映画だ。面白いアクションがすべてに優先し、ヒューマニズムもメッセージ性もどこかに置き忘れている。こういう作品では、観客も小難しいことを考えず、ただ楽しさに身をゆだねるのが正しい。前半は思ったより恋愛模様が多く、テンポが悪いのがいただけなかったが、トムの失踪の真相に迫ってからはぐんぐんテンポアップして面白かった。
 トムはやばい事件に巻き込まれているようで、コルトは次々に敵に襲われる。コルトはスタント能力を生かして、危機を乗り越えていく…のは当然だが、彼だけではなくスタント・コーディネーターのダンも見事な戦いぶりを披露。とどめに、恋人で監督のジョディまでもが格闘をこなすのには笑ってしまった。ここだけ「クワイエット・プレイス」のエミリー・ブラントになってた。
 ジョディが撮る映画は、あまりお客の入らなさそうなSFで、スタントマンをこき使う割にはおよそ緊張感のない内容。スリル満点なのはトムがらみの事件の方で、いいコントラストになっていた。コルトが慢心したトムを出し抜いて、主役の座を奪うのかと予想していたが、全然そんな話にならなかったので驚いた。

 この映画は、エンドロールが素晴らしい。アクションシーンのメイキングになっているのだが、この映画自体のスタントマンを見せてくれるのだ。スタントマンを主人公にした物語が、スタントマンを礼賛して終わるのは非常に誠実、好感が持てた。
 最後におまけ。作中ではKISSの曲が何度も使われているが、私はこのCMを思い出した。懐かしすぎる。

レトロ度 9
スタント愛 10
計画性 2
個人的総合 9
posted by Dr.K at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月26日

ポライト・ソサエティ

 この映画を観た感想。
boryoku.jpg

●物語
 高校生のリアは、スタントウーマンを目指しているが、学校の先生も両親もあきれてとりあわない。芸術大学に通う姉のリーナだけが彼女の夢を応援してくれていた。ところが姉に彼氏ができ、あっという間に結婚が決まってしまう。結婚の妨害に奔走するうちに、リアはその裏にある企みに気付く。

注:以下にネタバレを含む

続きを読む
posted by Dr.K at 20:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする