2023年09月28日

夏ドラマ最終回の通信簿2023

 前半が盛り上がったものほど結末が尻すぼみ、という傾向が顕著でした。

「転職の魔王様」:良い
 およそ特筆すべき点のない、ザ・普通なドラマでした。しかし、気負わず終わった最終回は爽やか。変に深刻な事件も起こさず、恋愛に深入りしたりもせず、バランスの良い結末だったと思います。それにしても、スポンサーが転職会社というのは世知辛すぎます。

「シッコウ‼ 犬と私と執行官」:普通
 エピローグでひかり(伊藤沙莉)が執行官になり、これまた普通ですが語り切っている結末でした。犬要素、あんまり必要なかったな。執行官仲間で、ベテラン俳優がずらりと並んでいるのですが、あまりに見せ場がなくてびっくりします。

「ハヤブサ消防団」:良い
 前半は、田舎のおっちゃんがわいわいしている場面が多く、スローテンポでしたが、教団が動き出してからの急展開は手に汗を握りました。彩役の川口春奈、怪しさ満点でハマり役でしたね。彼女のその後が語られないのが残念です。

「最高の教師」:悪い
 卒業式で殺された教師、九条(松岡茉優)が最後の一年をやり直す物語。鵜久森(芦田愛菜)が助からなかった時点でバッドエンドの匂いがプンプンでしたが、あっさり助かって拍子抜け。前半の目が離せないリアルさはどこへやら。後日談をHuluで、という展開も気に入りません。

「VIVANT」:悪い
 モンゴルの雄大な景色、豪華キャスト、予測不能の展開、と素晴らしかったのですが、最終回は尻すぼみでした。突然始まる株式バトルもつまらなかったですが、何より、最後の最後まで話をひっくりかえそうとして、無理があり過ぎる。予算があってもこれではダメです。
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2023年09月10日

私が「リセットを押せ ゲーム業界における破滅と再生の物語」に感心した理由

pushreset.jpg ジェイソン・シュライアーの新刊が出ていたので買った。前作「血と汗とピクセル」も面白かったが、それ以上の内容だった。

 ゲーム開発の実態にせまるノンフィクション、という点では前作と同様。しかし、「リセットを押せ」では、各章の内容がつながっているのが凄い。スタジオの閉鎖やレイオフによって、開発者が流出し、異動先でもまた同様の事が起きてしまう。特筆すべき事例を取材しているのだとは思うが、アメリカのゲーム企業の雇用の不安定さには驚いてばかりだ。こんな状況でよく大作を仕上げられるものだ。
 そして、本書すべての事件の起点となっているのが、「バイオショック インフィニット」のイラショナル・ゲームズ。私の大好きなゲームなのだが、開発現場にこんなに問題があったとは。
 メジャーリーグの名投手、カート・シリングが引退後にゲーム企業を設立していたとはびっくり。その倒産までの道のりはあまりに現実離れして華々しかった。日本でも、90年代にはゲームを全く知らない企業が、ゲーム開発に手を出しては大損していたのを思い出す。

 持続性という観点では、日本のゲーム企業の方が何倍もマシということがわかった。海外への憧れが消し飛ぶ名著だ。
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2023年08月22日

信頼できるゲームの歴史! 奥成洋輔「セガハード戦記」

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 昨年発売された「ゲームの歴史」は、販売中止になるほどの悪書であったが、


この本は信頼できる
 何しろ著者が奥成洋輔。セガに長年在籍し、古いゲームの復刻では驚くべきこだわりを発揮、ついにはメガドライブミニを完成させた当事者なのだから。
 こういうマニアックな本は、えてして読みにくくなったりするものだが、文章は平易で読みやすく、既知の内容については違和感がなく、さらにはとっておきの裏話まで飛び出す。何より、全体に通底するセガ愛が素晴らしい。良書である。

 ゲームの歴史を記述すると、任天堂やソニーといった業界トップの企業が中心になりがちだ。しかし、セガを通してみると、また別の顔が見えてきて面白い。それはまるで、戦国時代を語るのに、織田から見るか、徳川から見るか、はたまた武田から見るか、といった感じに似ている。他の企業からも、こういう本を書く人が出れば面白いのに、と思う。

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2023年07月23日

松山洋社長がお怒りのようです

 短期間に二度も炎上するなんて、他にはプラチナゲームスの神谷ディレクターくらいでしょう。

 サイバーコネクトツーの説明会を知っている身からすると、平常運転としか言いようのない発言です。
 むしろ驚くのは、読み手の理解力のなさ。「PS5は普及していないのだから別に良いのでは」「スマホゲームなどを目指すのであれば不要」「FF16はそれほど名作ではない」 いやいや、それは問題を読み違えています。
 ゲーム業界を志すのであれば、最新のハード、最新のゲームを知っておくべき、というのは当たり前の話です。例えば、今から10年ちょっと前、東京ゲームショウをグリーやモバゲーが席巻し、これからは携帯電話だ、コンシューマの時代は終わる、と言われていたことを憶えていますか。その頃、低スペックなブラウザゲームの開発に明け暮れていた、Web系のエンジニアたちはその多くが去りました。なぜなら現在、スマホが高性能になり、「原神」のようにPCやゲーム機に匹敵するゲームが開発可能になったからです。一時の不振にめげず最新の技術を追い続けた開発者が結局生き残ったのです。どれくらい未来になるかはわかりませんが、いずれPS5並みの性能を持ったスマホが出現し、対応するゲームが作られるようになります。ゲーム業界を志す者は、未来のゲームの準備のために、最新のものをいちはやく見ておく必要があるのです。
 私は、「お金がない」発言もかなり疑わしく思っていて、優先順位が間違っている人が多いんじゃないかと。あなたがプレイしている、某ゲームへのガチャを何度か我慢すれば、PS5買えるよね? というケースを何度か見ています。
 業界を目指す学生たちは、松山社長にとって後輩であり同士です。だからこそ手加減や忖度などしません。「言い方が悪い」から聞かないなどという甘ったれたお客様たちなど眼中にないはずです。

 これ以上はない愛憎の表明で面白かったです。
 松山洋は、ジブリが大好き。「ソラトロボ」や「戦場のフーガ」には、その憧れが前面に出ていると思います。
 一方で、サイバーコネクトツーは版権ゲームの会社です。主力製品は「ナルト」や「鬼滅の刃」で、自分たちの主張をゲームに込めることは許されず、原作の美点をユーザーに伝えることに徹してきました。「エンターテインメント」とは、客が求めるものを提供する職人的なもの作りを意味します。本当にやりたいことは形にせず、エンターテインメントを通すことにプライドを賭けてきたとも言えます。
 ところが、「君たちはどう生きるか」はやりたいことをやり通した映画でした。そこにエンターテインメントとしての気配りはありません。大好きなジブリだからこそその事が許せないのでしょう。松山洋の怒りはもっともです。
 なお、私はただのエンターテインメントには飽き飽きしていますので、「君たちはどう生きるか」を評価しています。
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2023年07月06日

ドラマ「シッコウ‼」の始まり方が凡庸過ぎる?

 新番組「シッコウ‼ 犬と私と執行官」を観た。
 ひかり(伊藤沙莉)は、犬好きの女性。ペットサロンに転職が決まり、新しいアパートに引っ越してきたところ、怪しい男と遭遇する。その男、小原(織田裕二)は、ひかりの隣の部屋の住人に退去を迫る、執行官だったのだ。
 職業もののドラマも、いいかげんネタが尽きてきた感じがあるが、なるほど、執行官は新しい。ひかりは、風変わりな小原を怪しみつつも、徐々に執行官という職業を理解していく。そして結末、なんと、ひかりの勤めるペットサロンが小原に執行予告されて夜逃げ。小原は、職を失ったひかりを強引に執行補助者に起用するのだった。今後は、小原とひかりのコンビが、色々な現場に遭遇していくのだろう。
 それにしてもこの結末、なんだか既視感が凄い
 実は、先月最終回を迎えた「それってパクリじゃないですか?」とそっくりなのだ。こちらのドラマでは、月夜野ドリンクの開発部に勤める藤崎(芳根京子)が、特許をめぐるトラブルに巻き込まれる。親会社から派遣された弁理士の北脇(重岡大毅)は、かなりの変人だったが事件を見事に解決。今後のために、月夜野ドリンクは知財部を発足させることになり、藤崎は開発部から異動させられ、上司として北脇が現れた。
 素人の主人公にまず外から珍しい職業を眺めさせ、次いで主人公自身をその職業に就ける。職業ものドラマのテンプレなのかもしれないが、あまりにも似たパターンを続けて観ることになってしまった。伊藤沙莉は曲者なので、ここからだんだん個性的なドラマになってくれることを期待したい。織田裕二は変過ぎるので、これ以上やらなくていいぞ。
posted by Dr.K at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月26日

春ドラマ最終回の通信簿2023

 「unknown」や「ペンディングトレイン」の最終回が不評ですね。私はどちらも見ていませんが、鼻がきいたのか、運が良かったのか。

「それってパクリじゃないですか?」:普通
 毒にも薬にもならない結末で(笑)、最後まで普通でした。とはいえ、知的財産という面倒くさいテーマを、気軽に学べる良いドラマだったと思います。又坂(ともさかりえ)は、絶対裏切るキャラだと思ってたんですけど、そんなことはなかったですね。

「波よ聞いてくれ」:良い
 ラジオ番組を舞台に、ミナレ(小芝風花)が暴れまくるコメディードラマ。最終回は、ラジオの意義に向き合い、ミナレもパーソナリティーとしての自覚を持つという良い結末でした。でも、作中で一番成長したのは瑞穂(原菜乃華)かもしれないな。ジューンブライドラジオがどうなったのか知りたいので、特番とか作ってくれませんかねえ。

「ラストマン 全盲の捜査官」:良い
 こういう、ミステリー仕立ての連続ドラマは、最終回でコケることが多いので警戒していたのですが、なかなかうまくまとまりました。序盤は全盲という設定でかなり特別感が出ていたのですが、ハイテク機器が強すぎるせいか、見慣れてしまったせいか、話が進むにつれて普通に感じられてしまったのが惜しいです。まさかアメリカを舞台にした劇場版とか作りませんよね?

「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」:
 BSからのおすそ分けで、しかも短編集ですから、最終回も何もあったものではないのですが、毎話、マンガのコマと一致するラストシーンに何とも言えない余韻がありました。特に、「定年退食」が凄かった。当時は、人口増による食糧危機を想定して描かれた物語だったのに、人口減、高齢化の現在だとますます真に迫って来ます。藤子先生には何が見えてたんでしょうか。
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2023年06月22日

毒舌〈Nintendo Direct 2023.6.21〉短評

 PlaystationとXboxを記事にしたからには、Switchを無視するわけにはいきますまい。任天堂には、ハードの性能差がゲームの面白さの差ではない、というところを見せつけていただきたいものですな。

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 3Dのキャラを再利用すれば安上がりなのに、わざわざドットで描き直していて酔狂ですな。そしてこのゲーム内容、どう見ても「くにおくんの大運動会」ですな。今人気があるIPと、ファミコンゲームのリバイバルを組み合わせるとは、Cygamesらしい儲け話でんな。

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 グッドフィールは、「毛糸のカービィ」など、任天堂のゲームで実績のある会社。満を持しての自社パブリッシングは、「ゴエモン」の精神的後継作といった感じですな。「Bloodstained」や「Mighty No.9」と近い境遇と言えそうですが、売れるかどうか見ものですな。

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 数々の派生タイトルをこうして集約してくれるのは、コレクターとしてはありがたいでんな。しかし、「メタルギア」をしゃぶり尽くさんとする阿漕さも感じます。サイコマンティスの読心術とか、どうなっているんでしょうな。そして何より、こんなパックがでたらΔ要らねぇ、となったりしませんかな。

 発表されるタイトルのほとんどがリメイクで、任天堂とそれ以外のメーカーとの差が歴然ですな。Switchでは、「ティアーズオブザキングダム」が動くんでっせ。
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2023年06月12日

毒舌〈Xbox Games Showcase〉短評

 Xboxというハードは、日本ではほぼ存在感がありませんな。ですが、〈Xbox Games Showcase〉は意外と見どころがありました。〈Playstation Showcase〉からさほど時間が経っていない割に、新規発表のタイトルが多いのは感心しましたな。PS5でも発売予定のタイトルが多いのはありがたいですが、このイベントでそれはええんですかな。

Jusant
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 背中に怪生物をしょった少年が、孤独に絶壁を登り続けるゲーム。この空気感は、明らかに上田文人のフォロワーですな。開発が「ライフイズストレンジ」のDON'T NODとくれば、しょうもないパクりゲーで終わることはないでしょう。ぜひとも買わせていただきまっせ、PS5で

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 期待の大型DLCは、9月に発売決定。キアヌ・リーブスの続投に加え、イドリス・エルバも追加出演と、ますます豪華ですな。シナリオの追加だけでなく、エンディングの追加や基本システムの見直しも行われているそうで、これまた楽しみです。PC版は、ついにHDDがサポート外となったそうで、もうPS5でやるしかないですな。

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 「ペルソナ6」がいつまでも出ないと思ったら、こんなのを作っていたんですな。ファンタジーRPGの新作ですが、見れば見るほど「ペルソナ」風です。ファンなら、魔法の中に「マハタルカジャ」があるのを見逃しませんな。もしかすると世界観もつながっているのかも。こちらはPS5版がアナウンスされておらず、Xbox独占タイトルなのかも知れませんな。

 新作ラッシュも「FF16」で落ち着くかと思いきや、秋から忙しくなりそうですな。ほなまた。
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2023年05月26日

毒舌〈Playstation Showcase 2023〉短評

 今年はE3がないですな。今後は配信で新作が発表されるのが主流となっていくんでしょうが、ただ各ソフトのPVをつないだだけというのは、やっぱりチンケで味気ないもんですな。

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 数々のタイトルが発表された中で、最も楽しみなのはこれ。「風ノ旅ビト」も「ABZÛ」も最高だったので、同じ作者の新作には期待しかないですな。それにしても、砂漠と海という前2作をがっちゃんこしたかのような見てくれは、ちょい安直すぎではないですか。また、ゲーム内での不戦を貫いてきたこの作者が、剣をどう描くのかも気になりますな。

FOAMSTARS
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 スクエニが某スプラをパクった! と大層話題ですな。キャラがスクエニらしくない雰囲気なので、海外のゲームかと思ったのですが、開発がトイロジックと知り、なんだかがっかりです。泡を使うと、インクとどうゲーム性が変わるのか、差別化ができていないようなら改めて罵倒してやろうかと待ち構えておるところです。

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 カプコンがRE商法を成功させているんで、コナミも負けじとメタルギア復活、ときたもんだ。小島監督抜きでのリメイクとなるので、かつての名作が勝手にいじり倒されるのか、と一部のファンから反感を買ってますな。それに対して、ストーリーやボイスはすべて当時のままだから安心してね、という公式の対応はいかにもダサい。カプコンのRE商法は非常に志が高いものなので、見習ってほしいもんですな。

 発売が近づいて詳報があったら、また何か突っ込むかもしれません。ほなまた。
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2023年05月20日

勝算? 打算? コナミが「ウマ娘」を訴える

 先日、「ウマ娘」を起動したら、とんでもないお知らせが出てひっくり返った。
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 えらいこっちゃ。調べてみるとますます大ごとだ。


 サービス開始から2年あまり、国産モバイルゲームのトップセールスを走り続けてきた「ウマ娘」。Cygamesなら損害賠償の40億くらいはポンと出しそうだが、差止請求(つまりはサービス終了)は到底受け入れられまい。
 いったいどんな特許を侵害しているのか、わざわざ調べてくれた人がいて、なかなか興味深い。


 「ウマ娘」の育成が、「パワプロ」のサクセスに似ている、ということはよく知られている。コナミは当然この仕組みの特許を持っているのだが、意外なことに、その特許はすでに期限が切れており、この点では特許侵害にならないようだ。
 一方で、コナミはそこから派生する様々な特許を申請している。その中で、「サポートカードの編成によってイベントが追加される仕組み」の特許が有効であり、これが侵害対象となっているようだ。
 一般に、こういった訴訟は両方の企業にイメージダウンのリスクがあるため、通常は水面下で交渉が持たれ、それによって解決することが多い。今回も、以前から交渉はあったが、決裂してしまったのだろう。
 コナミ側は、勝てると見込んでいるからこそ訴えるのだろうし、もし和解でも十分な利益になるという打算もあろう。そして、Cygamesが負けた場合、「ウマ娘」だけでなく、その他の類似育成ゲームが次々に訴えられる可能性がある。90年代の音ゲー訴訟とそっくりだ。歴史は繰り返すのか。
posted by Dr.K at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする