2019年03月23日

「どろろ」第九話 無残帳の巻

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 声が戻ったものの、片言でしかしゃべれない百鬼丸。おそらく、どろろの言葉を聞いて、だんだん話せるようになっている。そのことをどろろスピードラーニングと名付けた奴、やめなさい(笑)

 オリジナルエピソードをいくつか挟み、待ってました、第九話はどろろの生い立ちを語る「無残帳」。キャラクターデザインは原作から大幅変更、火袋もイタチもリファインされてやたらかっこいい。
 しかしながら内容は原作に非常に忠実。「火袋がずた袋になっちまった」「槍ってものはこう使うんだ」「曼殊沙華はどうして血の色をしているんだろう」など、印象的なセリフもそのままに、名場面が展開する。母がおかゆを素手に盛る場面は、ジョジョの「スティールボールラン」を思い出した人も多いようだが、原点はこちらだ。
 今回のアニメでは、どろろが熱で倒れたことにより、この回想場面に入った。そのため、原作にあった雄大な場面転換のビジュアルが使われなかったのだが、代わりにオープニングの一部になっている。空を覆う馬が野盗の襲撃場面につながる見事なコマ運びを、ぜひ動く絵で見たかったのだが。
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2019年03月16日

諸星大二郎「オリオンラジオの夜」

orionradio.jpg 昔のヒット曲を起点に、縦横に想像をめぐらせた短編集。これは傑作です。「ぼくとフリオと校庭で」の頃と全く遜色がない。

 やはり自由に描いた時の諸星大二郎は最強ですね。特にまとまりやルールを決めるわけでもなく、一つ一つ、興味の赴くままに綴られているのですが、エッセイやら日常やらとは無縁。昭和の風景とラジオの曲、そして諸星作品ならではの不思議世界が三位一体となり、唯一無二の個性を放っています。
 今、唯一無二と言いましたが、諸星作品を読み慣れていると、過去の作品のあんな場面、こんな場面が何度も思い浮かびます。つまり同じモチーフが繰り返されているわけですが、ネタ切れなどとはあまり思いません。有名なバンドがいつもの曲調で新曲をリリースしてくれるような、信頼の諸星印と感じます。

 ところで、「西暦2525年」の演出で、一部の絵がモザイク処理されているのですが、アシスタントはほぼ使わないと言われている諸星先生、ついにデジタル入稿を始めたのでしょうか?
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2019年02月17日

「どろろ」第五、六話 守子唄の巻

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 手塚治虫が嫉妬のあまり蘇って、正規の完結編を描き始めそうな出来。

 原作既読でだいたいの予想がついているのに、圧倒的な救いのなさに息も絶え絶えになった。まっさらな視聴者が受けた衝撃は、想像するだに恐ろしいものがある。
 さて、今回悲劇のヒロインとなったみおだが、原作では、百鬼丸がどろろと出会う前の回想場面に、わずか数ページ出演するだけの人物である。そのエピソードを上下2話にまたがる内容にふくらませたのも驚きだが、合間に今後の展開に関わる伏線を仕込むという周到さがまた憎い。
 例えば、百鬼丸を鬼神に捧げたことによって、醍醐がどんなご利益を得たのか、原作ではあまりはっきりしなかった。ところがこのアニメでは、それが具体的に示される。結果、百鬼丸が鬼神を退治するほどに、醍醐領の罪なき人々に災いが降りかかるというジレンマが予想される。百鬼丸自身がそれに気づいた時、どんな結論を出すのだろうか。

 だが今回は、みおと子供たちのことがすべてだ。鬼神から身体を取り戻す、という本来の目的を一時忘れ、彼女の夢に思いを馳せたい。
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2019年02月03日

「どろろ」第四話 妖刀の巻

 妖刀似蛭を斬り、百鬼丸は耳を取り戻した。初めて聞くのは雨の音。そして、斬られた兄にすがって泣く娘の声だ。
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 原作では、勝てないと知った田之介が似蛭で自害する。また、目を取り戻した百鬼丸と娘のやりとりなど、非常に印象深い結末なのだが、それをあえて変更。シビアで無常感漂う味わいになった。

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2019年01月22日

「どろろ」第三話 寿海の巻

 三話を終え、いまだ百鬼丸しゃべらず

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 二話で気になったのが、万代との戦闘描写。非常にあっさりしている。原作では、タタリと夜叉、二つの形態を持つ印象深い鬼神で、戦闘も長かった。アクションの見せ場となる素材をなぜ端折ったのか。

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 三話を見てわかった。このアニメは、妖怪退治のアクションよりも人間ドラマに重きを置いているのだ。寿海が百鬼丸を拾うまでの物語は原作にはない。善人の医者では済まない、因縁の深い設定が寿海に加わった。
 回想をモノクロで表現し、なんとなく旧アニメのおもむきが感じられるが、部分的に付いている色の意味にはっとさせられる。また、外とコミュニケーションをとれないように改変された百鬼丸は、野心的なキャラクター描写で新しい。この面白さ、早くも名作の雰囲気が漂っている。
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2019年01月14日

「どろろ」第一話 醍醐の巻

 「どろろ」がアニメになって放映開始。数ある手塚作品の中でも最高傑作、しかも50年ぶり(!)二度目のアニメ化とあっては見逃すわけにいかない。ところが、東京以外では、BSやネット配信でないと見られない。全国放送でないのがまず気に入らない。

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 オープニングは女王蜂、エンディングはamazarashiと、アートを気取った演出が鼻につく。「どろろ」は下層の者が這い上がる物語なので、泥臭い、ダサいくらいの作りの方がふさわしい。しかしながら、内容は予想外に原作に忠実、文句のつけようがない。どろろ役の鈴木梨央の声も素晴らしい。
 うまいなと思ったのが、原作ではまだ登場しない琵琶法師や多宝丸がすでに顔見せしていることで、連載マンガゆえの唐突な新キャラ追加を避け、背景を丁寧に掘り下げることが出来る。また、放送期間の都合か、鬼神が12体に減らされているが、どんなアレンジが加えられるのか楽しみである。

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 なお、第一話の途中で、妙に画風の違うのら犬が出た。これは、50年前のアニメで登場したノタだ。ノタはその後、どろろのマスコットとしてレギュラーになるが、この犬はどうだろうか。
posted by Dr.K at 21:55| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月25日

珍品堂が勧める2018年のコミックベスト3

 私は田中圭一のファンなのですが、マイナーすぎて過去作の入手が難しいのが困りもの。ところが、昨年の「うつヌケ」のヒットで、絶版だった「サラリーマン田中K一がゆく!」「マンガ家田中K一がゆく!」の新装版が登場。ようやくこれらを読むことができました。なお、今年の作品ではないのでランキングからは除いています。

第3位 アサイ「木根さんの1人でキネマ」
 こんなに続くとは、作者も予想していなかったのではないでしょうか。脇役のレギュラー化や新キャラの追加で長期化対策を講じていますが、果たしてどこまでもつか? 次巻では「ボヘミアン・ラプソディ」あたりいかがでしょう。

第2位 木城ゆきと「銃夢 火星戦記」
 ムスター編は面白かった! ガリィの出自も明かされ、これからどうなるのか楽しみです。一方、映画化に合わせて、無印「銃夢」が何度目かの新装版を出していますが、同じものを何回も出版されてもどうかと思います。

singeki26.jpg第1位 諌山創「進撃の巨人」
 今年は25〜27巻の3冊をリリース。予想外の内容で面白い。しかし、壁外での戦いを描いた後、そこに至る顛末に遡る内容になっており、非常に話が入り組んできています。最終的な決着が近づいている雰囲気なのに、なかなか先に進まなくてもどかしい。アニメ化の際にはかなり整理が必要でしょうね。
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2018年12月04日

「ばるぼら」の実写映画化は期待大


 手塚治虫の「ばるぼら」が実写映画になる、と突然のアナウンス。

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 好きなマンガだけに、不安も大きい。おそるおそる情報を見ると、キャスティングがなかなか良く、期待が高まった。
 小説家の美倉を演じるのは稲垣吾郎。破滅型の主人公をどう表現するか見もの。
 ヒロインのばるぼらは二階堂ふみ。これはもうばっちり。予告では一人称がちゃんと「オレ」で、嬉しくなる。
 ビジュアリストを自称する手塚眞が、初めて父の作品を監督するというのも注目点。(アニメでは、「ブラック・ジャック」を監督したが)
 これは来年の公開が楽しみだ。

 最後におまけ。他の出演者の中に、渡辺えりの名があった。ピンと来たね。右図、ムネーモシュネーの役に違いない。
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2018年11月22日

「銃夢 火星戦記」6巻

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 ムスター編、完結。
 このグロさと狂気こそが木城ゆきとの真骨頂。一方で、巨大メカ、オデオンバッハのオモチャのようないい加減さは、この漫画家が何に力を入れたいのかを如実に語っている。
 「アリータ」の予告編は作りこまれていて見事だが、「銃夢」の映画化としてはスタイリッシュでお行儀が良すぎるのだ。映画のみを観た者は、後で原作を読んでその恐ろしさにうち震えるがよい、フハハハハハ

 さて、今回驚いたのが、表紙にもなっているガンマンの活躍。前の巻で、あまりにもかっこよく見栄をきっていたので、「その後の行方は不明である」というパターンかと思っていたのだが、この巻でちゃんとバトルが描かれていて意外だった。道を違えたゴロツキ達、わずか2ページの回想に万感がこもる。
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2018年11月17日

伴俊男「手塚治虫物語1 オサムシ登場」

tezukamonog.jpg 11月3日は手塚治虫の誕生日。平成最後となる今年は、手塚の生誕90年となる。

 だからというわけでもないが、「手塚治虫物語」を購入した。長年アシスタントをつとめた伴俊男が、手塚の一生をマンガ形式で振り返った作品だ。手塚が亡くなったその年に連載開始され、92年には大判の単行本として出版された。そして94年に文庫版が出ている。私は大学院で手塚治虫を研究しており、この文庫が良い資料になったことを覚えている。
 さて、今回買ったハードカバー版は、2009年に金の星社から出た復刻版なのだが、久しぶりに読んだら一つひっかかる記述にぶつかった。

 それは手塚の小学生時代のエピソードである。自分で描いたマンガをクラスで回覧していたことがばれて、叱られるかと思いきや、担任の先生が理解のある人で、これからもマンガを描き続けるよう励まされたというものだ。その先生の名は、乾秀雄である
 ところが、「手塚治虫物語」の中では、先生の名が「稲井」となっている。他の漫画家などは実名で出ているので、なんとも不自然である。また、何度も出版されている本なので、単なる誤りではないはずだ。
 乾先生は謙虚な方なので、本名での出演を固辞されたのかもしれない。
posted by Dr.K at 21:13| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする