2017年02月11日

三部けい「僕だけがいない街」9巻

bdim9.jpg え、8巻で完結したんじゃなかったの?

 と一瞬びっくりする人もいたのでは。9巻は、完結後に雑誌掲載された外伝「僕だけがいない街Re」をまとめたもの。
 つまらないわけじゃないけれど、こういうのあんまり良くないと思うのよ。
 このマンガ、本編にものすごく余白がある。主人公が長い昏睡を経て起きるので、その間他のキャラがどう過ごしてきたかわからない。でも、そういう隙間をあれやこれや想像するのも読者の楽しみのうちだし、主人公と犯人とに焦点を絞るのも大事だと思うんだ。
 ところがこの外伝では、作者が自ら隙間を埋めてしまっている。他人が描いた同人なら、その人なりの解釈ということで済ませられるけど、作者が描いたらそれは唯一の公式なわけよ。なんか、作品が閉じちゃった感じがして残念。ただ、これも今どきの読者の要請なのかな、とも思う。何かというと説明不足、と文句を言う奴多いもんね。

 売り方もよくない。こんなの昔だったら、外伝とか別巻とかで出るもんでしょ。ナンバリングに入れて少しでも余分に売ろう、という出版社の必死さが嫌。アニメにも映画にもなって大ヒットしたのでファンサービスです、くらいの余裕を見せてほしいもんだよね。三部けい、もう泡沫作家じゃないんだから。
posted by Dr.K at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月04日

アサイ「木根さんの1人でキネマ」3巻

kine3.jpg
 あ〜、これまずいなあ。長期連載の罠にはまっていってるかもなあ。

●マニア向けの罠
 木根さんがエヴァンゲリオンを初めて見るという話があるのだが、この面白さ、TV版を全部見ている人にしか伝わらない。マニアに刺さるように深く掘り下げると、やっぱりこうなっちゃうのかな。木根さんの素晴らしさは、題材となっている映画を知らなくてもマンガそのものが面白い、というところにあると思うんだけど。
 その意味では、この巻のホラー回は秀逸。

●キャラ追加の罠
 長期化にともない、木根さんと佐藤さんだけでは話がもたなくなってる。そこで、過去のゲストキャラクターが再登場し、準レギュラーに昇格しつつある。会社の同僚やら上司やら同窓生やらだ。スター・ウォーズのオッサンたちにはこれからも毎年一回出てほしいが(笑)、個人的に要注意と思っているのが、映画好きが発覚した工藤ちゃんと、アニメ大好き主婦。この個性は、木根と佐藤を食ってしまう恐れがある

 このままずるずると、キャラの多い薄いマンガになってしまうくらいなら、早く幕を引いた方がいいのでは、と思ったりするのだが、今後の展開やいかに。
posted by Dr.K at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月14日

いつのまに路線変更? 「田中圭一のペンと箸」

pentohasi.jpg 田中圭一と言えば、手塚治虫を筆頭とする多くの有名漫画家の絵柄をマスターし、彼らが到底描かないであろうくだらない下ネタマンガを完成させることで有名。当ブログでも頻繁に話題になっている。

 ところが、新刊の「ペンと箸」は趣が違う。もともとはグルメサイトに載っていたWebマンガで、有名漫画家のご子息にインタビューし、親と食べ物にまつわる話を聞くというもの。
 文章だけだったらそんなにインパクトのないこの企画で、田中圭一が長年の技を発揮。毎回その漫画家の画風を完全再現して一篇を描き切る。その数なんと23人。しかも、くだらない下ネタを封印して、親子のいい話を丁寧にまとめていく。控えめに言って名著である。
 だが、長年のファンとしては言わねばなるまい。こんなきれいな話、田中圭一じゃない! 昔やんちゃだった奴が突然いいことをしたような、ビリギャルが大学に入ったような、端的に言ってずるい。

 そういえば、年明けに話題になった「さよならのお皿」もいい話だった。今後はこっちの路線で行くのだとしたらちょっと残念だ。まあ、くだらない方は、同人誌で続けるんだろうとは思うが。
posted by Dr.K at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月29日

珍品堂が勧める2016年のコミックベスト3

 今年読んだ中で最も良かったのは「この世界の片隅に」です。映画と比較すると非常に楽しめるのでお勧めなのですが、今年出版された本ではないのでランキングには入れていません。

第3位 花沢健吾「アイアムアヒーロー」
 実写映画が公開され、年内3冊の単行本を発行。今までのペースを考えると、明らかにオーバーワークです。力尽きずにこれからの盛り上がりを描き切れるかどうか、来年が正念場です。

第2位 三部けい「僕だけがいない街」
 連載マンガは、結末をきちんと描くことが非常に難しいのですが、これは合格。映画よりもいい終わり方になっていたと思います。単行本派なので外伝はまだ読んでいないのですが、面白いんでしょうか。

第1位 アサイ「木根さんの1人でキネマ」
 いやあ愉快愉快。繰り返し読みたくなりますね。2巻では、ジブリ回と吹替え回がお気に入りです。それにしても、1巻はジェッツコミックだったのに2巻からヤングアニマルコミックにレーベル変更したのは謎です。
kinesan.jpg
posted by Dr.K at 22:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月29日

こうの史代「夕凪の街 桜の国」

yuunagi.jpg
 「この世界の片隅に」が素晴らしかったので、こうの史代の他のマンガまで買ってしまいました。いやはや…

 読むとわかるのですが、こうの先生のマンガは、進化している! 確実に!
 まず、「夕凪の街」ですが、これはこうの史代が初めて広島を扱った作品です。終盤の強烈なメッセージ性によって、各種マンガ賞を受賞しました。確かにインパクトはあるのですが、原爆への怒りが生の形で表出しており、ある種異形の作品となってます。
 その続編である「桜の国」は、戦時中を知らない少女を主役にし、笑いも交えたホームドラマのような進め方になっています。しかし、「夕凪の街」から現在までが地続きにつながる仕掛けによって、この連作は独特の充実感をもって終わります。直接的な怒りは表現されず、広島を背景とした恋愛ものとしても読める内容になってます。
 これらの作品の延長上に、「この世界の片隅に」が位置するのだなあ、と大いに納得した次第です。
続きを読む
posted by Dr.K at 19:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月29日

花沢健吾「アイアムアヒーロー」21巻

Iama21

 映画公開にタイミングを合わせた20巻に続いて、21巻はブルーレイ&DVDの発売に合わせた。そのせいでまたもや薄い。ここまでやって売らないといけないもんかねえ。

 英雄が比呂美を助けようと奔走するが、比呂美のほうがネガティブ全開でなんだか怪しいことになってきた。
 恨みがましいヒロインが、主人公もろとも世界を破滅させにかかるという展開は、花沢のデビュー作「ルサンチマン」とも共通する。ゾンビもの、というメジャーな題材を装いながら、クライマックスに来て花沢本来の主題に回帰しようというのだろうか。

 近くで戦っているのに、いまだ鈴木英雄と中田コロリが再会しない。出会ったところで、ZQNを忘れて、二人でマンガを描き始めるというのがオチではあるまいな(笑)

posted by Dr.K at 09:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月18日

「銃夢火星戦記」3巻

 お、1年ぶりに新刊出たのか、と手に取ってみたら、いつの間にか3巻。2巻が出ていたことに気が付いていなかったとは完全にファン失格である。

Gunmu3

 さて、「銃夢」にとって大事なキャラクターは、ガリィでもエーリカでもない。悪役だ。
 「銃夢」の面白さはひとえに悪役のデキにかかっており、無印時代のマカクやザパンは最高であった。「Last Order」が面白くなかった理由もムバディの不出来によるところが大きいと私は見ている。
 その流れで言うと、今回初登場となったムスターは、なかなか期待値の高い悪役と言えそうだ。全身に人面瘡をまとっている怪人だが、この病気が出てきたということは、ゲーム版銃夢の結末に使われている人面瘡設定が、実は踏襲されているということなのだろうか。色んな意味で目を離せない展開となってきた。

posted by Dr.K at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月24日

「アトム時空の果て」にもの申す

Makuake:アトム時空の果て

 こんなもの発表されて黙っていられるか。「アトム時空の果て」は、手塚治虫作品のキャラを使ったカードバトルゲーム。主に海外に向けて開発中で、KickstarterとMakuakeでクラウドファンディングが開始されている。

Sabrota

 手塚キャラといっても原作そのままというわけではなく、奥浩哉をはじめとする多数のクリエーターが、デザインをリファインする。方向性としては、マンガの「PLUTO」や「ATOM THE BEGINING」に近い感じか。
 右のキャラを見て、百鬼丸がこんなふうになるのか、と驚いている素人どもが後を絶たないが、これ、「どろろ」なのは間違いないけれど賽の目の三郎太だからね。原作読んだらあまりにもどうでもいいキャラなんで驚くけど。
 どういうわけか、須田剛一や松山洋といったゲーム会社の社長までもがイラストを担当している。描く暇あるのか、クオリティはどうなのか、心配になる。

続きを読む
posted by Dr.K at 20:57| Comment(1) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月12日

アサイ「木根さんの一人でキネマ」2巻

Kinesan2

 映画ファンのあるあるネタで、抜群の面白さだったあのマンガの新刊が出た。
 2巻の印象は、おお、攻めるねえ、という感じ。1巻で木根さんというキャラが確立しているので、その独断で次々に映画レビューでもやっていれば、わりと安直にエピソードを量産できそうなものだが、アサイ先生はそうしない。
 木根さんがジブリ映画を観ない、という話では隅々にジブリネタを散りばめて逆に見識の深さを見せる。あるいは、最後の見開きまで全ページをネタ振りに費やした大胆な構成の話。そうかと思えば、映画ファンなら誰もが通る黒歴史を容赦なく掘り下げた挿話。そして時には、題材となる映画と、絶妙なシンクロを見せる展開の話。
 手を変え品を変えて工夫を凝らしており、木根さんの日常に何一つ進展がないにもかかわらず飽きさせないのが素晴らしい。まだ残っている切り口はあるのだろうか? 3巻以降も要注目である。

posted by Dr.K at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月01日

「甲鉄城のカバネリ」最終回 甲鉄城

Kabaneri1201 みんなで田んぼを作ってお米を食べる明日へ。日本人のDNAに訴えかける言霊、ずるい。

 前回の終わりの時点では、これもう生駒も無名も死ぬしかないんじゃね? という感じだったが、いい方に裏切られた。日ノ本をカバネから救うきっかけが何一つ得られず不満という意見も聞くが、ゾンビ映画を観慣れた者なら、これこそが王道の結末であり、ゾンビを駆逐する作品の方に圧倒的に駄作が多いことはご存知かと思う。
 この余韻を生かして、その後を舞台にした同人など存分に展開するがよろしい。(他人任せ)

続きを読む
posted by Dr.K at 21:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする