2021年03月04日

「進撃の巨人 The Final Season」70 偽り者

singeki70.jpg
 ずしりと見ごたえのある話だった。アニメ化で声優の演技が加わったことによって、カビの痛々しさが大幅に増している。
 〈戦士〉として何の疑いもなく育ってきたガビは、マーレの教育を盲信しており、外の世界を客観視できない。ガビは、為政者である大人たちによって翻弄される子供の代表だ。
 一方で、カヤは、サシャの行動から高潔な精神を受け継いだ。これは、大人からの良い影響と言える。ガビとカヤの対決は、カヤの圧勝に終わった。しかし、「進撃の巨人」は、壁の中の者たちの方が正しいとは決めつけない。
 この回は、カヤと対比される者がもう一人いる。ルイーゼだ。ミカサに助けられたことをきっかけに、兵団に入った彼女だが、フロックについてイェーガー派に与してしまう。憧れから盲信する者は危うい。それはどこに所属する者だろうと同じだ。
 ネットでは、ガビが反日韓国人のようだと話題になり、荒れている。そのような見方は、物語のテーマを矮小化してしまう。ここに描かれていることは、もっと普遍的なことだ。
posted by Dr.K at 23:36| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月22日

「進撃の巨人 The Final Season」68 義勇兵

 サシャがあっけなく絶命し、マンガ未読の視聴者を呆然とさせたのが前回。その現実から目を背けるかのように、話は3年前へと巻き戻る。

singeki68.jpg
 いや〜、なつかしい。調査兵団の服装はこうでなくちゃ。大陸の文明に目を白黒させているエピソードは、未来への希望を感じさせて楽しい。しかし、後の悲劇を知っているので、いつもの仲間同士でバカをやっているサシャが正視に堪えない。なんちゅうひどい編集をしてくれたんや。作者は鬼か。
 オニャンコポンは、名前にインパクトがありすぎて、せっかくいい事を言っても印象に残らない。これもまた悲劇だ。
posted by Dr.K at 23:26| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月08日

諸星大二郎「美少女を食べる」


morogeki3.jpg
 諸星大二郎劇場の第3集。なんともインパクトのある題ですが、これ、ものの例えとかではなくて、その通りの話ですからね。こういう毒のある話を描いて、しかも結末をさらっと流せるあたりが年の功とでも申せましょうか。
 「アームレス」は、他のマンガ家が描けば、さぞやかっこいい女性型サイボーグになるだろうと思うのですが、諸星先生の手にかかると埴輪みたいでなんだかおかしいです。
 そして、「俺が増える」は、以前「漫勉neo」で描いていた作品です。ネタ的には「ドラえもんだらけ」を思わせますが、オチらしいオチもなく、不思議なまま終わります。
 個人的には映画館シリーズが好きで、「タイム・マシンとぼく」で昭和40年が未来として描かれるのは面白かったです。
posted by Dr.K at 20:35| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月17日

「進撃の巨人 The Final Season」64 宣戦布告

singeki64.jpg
 ヴィリーの演説のクライマックスに合わせて、進撃の巨人が現れた! エレンって意外とナルシストかもしれんな。

 マンガの内容を忠実にたどっているのだが、それにしてはずいぶん感想が異なる。
 マンガのとき最もインパクトがあったのは、ライナーがエレンと再会する瞬間だった。こいつがエレンだったのか! 見た目がすっかり変わっているため、ここまで気が付かない読者もかなりいたものと思われる。一方、アニメでは、声によって早々に正体がバレてしまうため、ライナーと同じに視聴者を驚かせることができない。
 そして、マンガではエレンの再登場に驚いているうちに、あれよあれよと会話が進んで、巨人登場の盛り上がりに乗り損ねてしまった。だがアニメでは、エレンの登場を冷静に受け止めているので、その後の内容を落ち着いて追うことができ、結果としてクライマックスできちんと盛り上がることができる。ヴィリーの演説の内容も、前よりよく分かるような気がする。
 今回の話は、舞台上と地下とに分かれているため、並行して起こる内容はわかりづらくなりがち。アニメでは音声によって両者をつなげ、巧みに演出していて良かった。動く迫力ばかりが注目されがちだが、この点はぜひ抑えておきたい。
posted by Dr.K at 10:54| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月12日

諌山創「進撃の巨人」33巻

 「次巻最終巻」という帯は他にあまり見たことがないな。singeki33.jpg

 今まで、主要キャラでも冷酷に退場させてきた「進撃の巨人」だが、ハンジだけは特別待遇。勢ぞろいしたかつての調査兵団に目頭が熱くなる。
 一方、これから最後の戦いだというのに、立ち向かう面々になんだか覇気がない。寂しそうですらある。多くの仲間を失い、絶望的な状況だから、という理由はもちろんある。しかしこれ、いよいよ終わりか、という読者の気持ち、もしくは作者の気持ちが、作品に乗っかっちゃってるんではなかろうか。最後に一山盛り上げないと、尻すぼみの最終巻になってしまうぞ。
posted by Dr.K at 22:27| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月04日

企画屋も必見! 「CAPCOM VS. 手塚治虫CHARACTERS」

captez.jpg 手塚治虫記念館で、「CAPCOM VS. 手塚治虫CHARACTERS」を見てきました。

 カプコンのイラストレーターが手塚キャラを描き、手塚プロのイラストレーターがカプコンのキャラを描く、というコラボレーションもあるのですが、メインとなるのは、カプコンのゲームキャラのデザイン画です。90年代前半までは、アナログで原画が描かれており、厚塗りの筆致が見えるような状態での展示は大変貴重です。実物大春麗、なんていう無茶な絵もあったんですねえ。
 そんなわけで、キャラクターデザインやイラストレーションに興味がある人にはもちろんお勧めできるのですが、実は、企画屋にもぜひお勧めしたい展示となっていました。
 なぜなら、設定書や仕様書が多数展示されていたからです。「スト2」の仕様書、なつかしいですね。これは会社の研修で見た記憶があります。「逆転裁判」の企画、初期タイトルは「サバイバン」で超ダサいですね。御剣検事も今とは似ても似つかないオッサンでひどいです。「戦国BASARA」や「モンハン」は、比較的新しいタイトルですが、仕様書は手書きです。カプコンの企画屋は絵が描ける人が多いので、この方が早く確実に伝わるんでしょうね。
 プランナー志望の人にとっては、現場の資料が見られる貴重なチャンス。2/23までやってますので、足を運んでみてはいかがでしょう。

 私はヒット作に関わっていないからいいのですが、カプコンにいた頃、仕様書なんて担当のプログラマーさんしか見ないと思って、適当に書いてました。こんな風に展示されると困りますね(笑)
posted by Dr.K at 23:39| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月23日

「進撃の巨人 The Final Season」62 希望の扉

singeki621.jpg
 「進撃の巨人 The Final Season」がとうとう始まった。ここまで付き合ったからには当然観る。制作会社が変更になったが、今のところ違和感はない。

 マンガで読んだとき、突然の〈壁外編〉に大いにうろたえたものだが、アニメで再び体験できるのは意外に楽しい。
 62話では、ライナーの視点から過去の物語が描写される。これまで、鎧の巨人であることがバレたあたりから、ライナーの精神状態がおかしくなったかのように描かれていたのだが、実際は壁を破る前からヤバい状態だったことが明らかに。無神経な強キャラぶりを見せていたのも虚勢だったのか、となんとも気の毒になってくる。
posted by Dr.K at 23:45| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月15日

「漫勉neo」に諸星大二郎登場!

manbenneo.jpg
 「漫勉」とは、浦沢直樹がマンガ家の仕事風景を取材するドキュメンタリー番組。定点カメラによって撮影された映像で、マンガ原稿執筆の現場が明らかになる。
 数年ぶりの放送となる今期は、ちばてつや、星野之宣など大御所の出演があった。そして前回、ついにと言うかまさかと言うか、諸星大二郎が登場した。何しろ表に出ることがない先生なので、ファンとしては、「生きてる! 動いてる!」と、タイムマシンでおばあちゃんに会いに行ったのび太君のような感想しか出ない。
 いつもなら、番組中はゲストと闊達な創作論を交わす浦沢だが、「う〜ん」とか「そうかなあ」しか言わない諸星相手に四苦八苦。絵に自信がなく、放送されたくない気配がありあり。書き損じて原稿を切り貼りしたり、スクリーントーンを失敗したり、という瞬間がばっちり写されていて最高に面白い。PCも使わず、アシスタントもいない、たった一人の現場で試行錯誤が繰り広げられる。この作品が収録された新刊は今月末発売。買います。

kaokaosama.jpg
 浦沢直樹は、好きな諸星作品として「カオカオ様が通る」を挙げた。なんちゅうものを選ぶんや。文庫では自選短編集「彼方より」に収録されている。思わず読み返してしまった。
posted by Dr.K at 10:44| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月07日

「未来少年コナン」26 大団円

 半年にわたって楽しんできた「未来少年コナン」も、これにて完結。前回で戦いは終わっているのだが、それにしては内容のぎっしり詰まった最終回だ。

msc263.jpg
 初めて見たとき、モンスリーが結婚するのは本当にびっくりした。直前に、行方不明だったコナンが見つかったり、ラオ博士が息をひきとったりと、重要な話をやっているのに全部記憶から飛んでいるほどだ。しかもこの結婚式、バラクーダ号の進水式も兼ねていたとは、なんとも粋な設定じゃないか。
 宮崎駿の作品では、少年少女が主役であるせいか、結婚式が描かれることは意外とレアで、他には「風立ちぬ」くらいしか思いつかない。

msc261.jpg
 海の男らしく(?)結婚を嫌がっていたダイスだが、モンスリーの花嫁姿を見るや態度を一変、堂々たる宣誓を見せる。この人間臭さがたまらんのである。それにしても、コナンの襟付きのシャツが似合わないこと(笑)

msc262.jpg
 残され島は、地殻変動の影響で隆起したのか、大きな陸地になっていた。物語は、この新大陸が見つかったところで終わりとなる。上陸後の皆がどうなったのか、少し気になるが、実は毎週のオープニングが、その後のコナンとラナを描いている、という説を見つけた。本当なのか。絵コンテかどこかに書いてないかなあ。
posted by Dr.K at 17:10| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月30日

「未来少年コナン」25 インダストリアの最期

msc251.jpg
 何度見ても惚れ惚れするギガントの雄姿。多様な武器を備えている、故障個所をパージできるなど、わくわくするギミックが満載だ。
 レーザー砲で三角塔を一撃、最終兵器の恐ろしさを見せていたにも関わらず、コナンらの活躍であっさり墜ちてしまう。その様子はなんだかもの悲しい。
 最強と思われていたものが、真価を発揮することなく滅ぶ。この見せ方は、宮崎駿のこだわりなのだろうか。「風の谷のナウシカ」では、巨神兵がわずかな稼働で腐り落ちた。「天空の城ラピュタ」は、ラピュタの雷を見せつけた後、バルスで崩壊する。それらはいずれも、ハッピーエンドへの道筋のみならず、滅びの美学とでもいうべきものを感じさせる。

 委員会の長老たちは、沈みゆくインダストリアに残る決意をした。これもまた滅ぶ者の美だ。ギガントから脱出しようとあがき、みっともない最期を見せたレプカとの対比が効いている。

msc252.jpg
 地殻変動によりインダストリアは海へ没する。このときの禍禍しい景色もまた、滅びの美学に満ちている。
posted by Dr.K at 23:20| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする