2025年10月24日

「ミルキー☆サブウェイ」の完成度が高い

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 亀山陽平、いったい何者だ。

 かつて、「ミルキー☆ハイウェイ」という短編がCGクリエイター界隈で話題になった。亀山の卒業制作だが、確かに抜群の面白さだった。それから数年、亀山監督の新作が公開されると聞いて喜んだが、YouTubeに加えてテレビでも放送、という大プロジェクトになっていて驚いた。さらに、その内容が「ミルキー☆ハイウェイ」の続きであると知ってもっと驚いた。
 以来、毎週の公開を楽しんで来たが、何しろ1回が3分半しかない。最終回に至って、これ時間内に終わりそうにないぞ、と心配になった。さらなる続編をお待ちください、というパターンなのだろうか? ところがところが、1秒の無駄もなくストーリーを畳みきったのに感心した。なんという完成度。CGのデキも良いが、このシナリオ運びはもはや神業である。
 この調子だと、すでに発表されている劇場版も、何か特別な仕掛けが控えているのでは、と期待してしまう。

 全部見てもたったの43分。まだの人はぜひ見てみてほしい。

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2025年10月14日

「光が死んだ夏」第十二話 居場所

 最終回は、ヒカルが姿を消して終わる、そんな雰囲気いっぱいで始まった。
 この化物は、もともと光の真似をしているだけの存在だった。しかし、佳紀と過ごすうちに、光とは異なる自意識が育ち始めた。人間らしくなることで、逆に人間から離れる必要があることに気付いてしまうのが切ない。

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 ヒカルは、佳紀を連れ出して約束の海へ。列車でいきなり背景が実写になって驚く。毎週のエンディング、この場面だったのか。生前の光との思い出の映像だとばかり思っていたのに。

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 別れを切り出したヒカルに対し、佳紀は今まで誰にも言わなかった本音をぶつける。ここまでも同性愛を思わせるシーンはあったが、こんなにはっきりと絵に出すとは思わなかった。ヒカルが化物であることと同じくらい、同性愛も普通じゃない。佳紀はそう感じてしまっている。
 これが都会であれば、多様性もそれなりに認められるだろうが、閉鎖的な村の中は昔の価値観のまま。佳紀の抱える後ろめたさはどれほどのものだろう。これからどうなるか気になるが、あと数分で終わるんだよなあ…

 そう思っていたら、なんと二期制作決定。続くんか〜い。浮き輪を拾ってきた田中の間抜けなビジュアルにずっこけてしまった。
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2025年08月26日

「光が死んだ夏」第七話 決意

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 合唱コンクールの当日、佳紀はヒカルを連れて学校をサボる。

 第一話でお婆さんが殺されたので、凄惨な事件が次々に起こるのでは、と予想したが全くそうならなかった。不穏な空気を無視するかのように、高校生たちは普通の日常を続ける。ヒカルの正体を知る佳紀だけが悩みを抱えるという構図。
 しかし、前回、朝子が襲われたことで、物語は転機を迎えた。ヒカルとこのまま日常を続けることはできない。ヒカルを殺すか、あるいはヒカルに殺されるのか、という佳紀の覚悟の行動に、ヒカルは予想しなかった形で応える。ここからは、二人が協力して村の謎に向かっていくのだろうか。
 この回のエンディングは、特別版。合唱の課題曲を、佳紀とヒカルが歌った。コンクールの動画を見て、二人で歌ってみようか、となったのだとしたらエモいが、多分そうじゃない。歌の間、エンドロールのみが流れ、映像がなかった。おそらく、二人の心情を歌に乗せたのだと思われる。この繊細さ、やっぱりただのスプラッターホラーじゃないんだなあ。
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2025年07月14日

「光が死んだ夏」第一話 代替品

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 真夏にふさわしいホラーアニメ登場。

 物語は、光が何かの事故に遭い、その身を乗っ取られるところから始まる。すっかり光になりきっている化物に対し、親友の佳紀が偽者と見破る… 普通ならある程度時間がかかるであろうこの展開を、冒頭でやってしまったので驚いた。
 佳紀は、光を失うことに耐えられず、光の記憶を持った偽者と日常を続けることを選ぶ。では、今後は周囲に偽者がバレないように、佳紀が奔走する物語になるのだろうか。ところが、村人の何人かはすでに見破っているらしい。さらには、偽の光も、ただ友好的な化物ではなく、本性は別にあるようだ。

 佳紀の痛々しい心情、得体の知れない偽者、古くからのしきたりに囚われた閉鎖的な村、すべてを知るらしい謎の組織、あらゆる要素が嫌な予感に満ちている。こういう作品はぜひ結末を見届けたいが、原作のマンガはまだ連載途中。半端なところで終わりそうなのがまた嫌な予感だ。

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2025年05月13日

ライブ演出ここに極まる。「ゾンビランドサガ リベンジ」

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 3月の「ゾンビランドサガ」と同時に、続編のこちらも全話無料公開になっていたので観た。

 いやはや、あきれるほどよく出来ている。人気が出たので続編を、となる作品は多いが、余計なものを足してしまった! とがっかりすることがよくあった。しかし、「リベンジ」は、前作と完全に一体になっている。愛と純子のエピソードは、繰り返されることで見事に対になっているし、ゆうぎりのエピソードが明かされたことで、ようやく全キャラの背景が整った。(たえちゃんは除く)
 ライブ演出も極まっており、3Dの活用がますます巧みになっている。Cygamesがどれくらい制作に関与しているのかは不明だが、「ゾンビランドサガ」のライブが「ウマ娘」に活かされ、「ウマ娘」開発のノウハウが「リベンジ」に活かされているように見えた。

 それにしても謎なのが、なぜこのタイミングで無料公開なのかということ。4月にパチンコの新台がリリースされたので、そのプロモーションだったのだろうか。てっきり映画の公開が近いのかと思っていたので、あてがはずれた。先日ようやく、映画は10月と発表されたので、慌てず待つことにする。
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2025年04月26日

永野護「ファイブスター物語」18巻

fss18.jpg フィルモア皇帝ダイ・グは病身を押して戦場に立ち、最後の勅命を発する。チャンダナは、すべてのバランシェ・ファティマと情報のリレーを行い、結果として、時間も空間も越えてすべての宇宙にメッセージが届くことになる。
 永野護先生は、早くからPCを作画に取り入れていた。チャンダナが発揮したこの機能も、IT業界における分散クラウドに着想を得たものと思われる。
 延々と紹介され続けるファティマの名前は、既知のもの、未知のものが入り交じり、もはや壮観。おそらく、これを最後に二度と見ないキャラもいるんだろうなあ、となんだか寂しくなってしまう。

 一方、スリーブノートでは、過去のイラストを紹介しつつ、近年話題の生成AIを全否定する言葉が続く。AIは、その概念における標準的・平均的なイメージしか出力しない。ある種のゆがみがあり、常に尖ったデザインを生み出してきた永野護が認めるはずもない。世界一カッコいい老害ムーブだ。
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2025年03月28日

アニメ「火の鳥」は中途半端!

 「火の鳥」が最終回を迎えた。21年前のアニメの再放送である。

 HD画質のデジタル作画への移行、3DCGの活用など、当時としては先進的な制作体制で、決して手抜きではないのだが、なんとも中途半端な内容だ。
 すべてをアニメ化できる時間はないので、内容がカットされるのは理解できる。ただ、作品の印象を左右するカットはいかがなものか。
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 例えば「復活編」。ロビタの集団自決がなく、なんだかいい話で終わってしまっている。このせいで、「未来編」にロビタがつながっていない。オープニングに集団のシーンがあるのに、本編にないのでは詐欺である
 「異形編」。最後に時間の牢獄から逃れた可平が、後の世で妖怪絵師となるエピローグがない。これは純粋に時間不足か。
 一番カットされているのは「太陽編」で、マンガでは7世紀と未来を行き来する複雑なストーリーなのだが、未来をばっさりなかったことにし、シンプルな時代劇にまとめてしまっている。
 そして「未来編」。マンガ読者をびっくりさせたナメクジ文明のくだりがない。そのため、アニメでは生物の進化をただ繰り返して人類が再び登場したことになっている。妙に押しつけがましい結末のメッセージも蛇足である。

 そもそも、はじめから全「火の鳥」をアニメ化しない番組なのだから、無理にカットしておさめるのではなく、「編」をもう少し減らして、一つ一つを長く描けばよかったのではないか。結果として、原作が短編だったためにきれいにまとまった「異形編」が一番よく出来ていたように思った。
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2025年03月13日

ライブ演出のミッシングリンク「ゾンビランドサガ」

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 YouTubeにて、今月いっぱい「ゾンビランドサガ」が全話無料公開。劇場版が控えているのは知っているが、今のところ「今年中」としか聞いていない。もしかして、公開時期意外と早いのか。

 本作を企画したのはCygames。国産モバイルゲームではトップを走る最大手だ。2015年に開始した「デレステ」では、当時のスマホゲームとしては異例の、3DCGによるライブシーンを実現した。その演出は、2021年の「ウマ娘」で大きく進化を遂げる。
 二作の間をつなぐミッシングリンクとなるのが、2018年の「ゾンビランドサガ」だ。このアニメは、ライブシーンの一部が3DCGになっており、技術的な挑戦が感じられる。さすがに他の作品のアイドルが指からレーザーを発射したりはしないだろうが(笑)

 ゾンビで佐賀でアイドル、という無茶苦茶な内容なので、イロモノには違いないが、Cygamesにとって重要な技術の礎となっているし、何よりちゃんと面白い。集客がだいぶ心配だが、劇場版にも期待している。
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2024年10月07日

「天穂のサクナヒメ」第13話 天穂のサクナヒメ

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 最終回、いかがだっただろうか。ストーリーはゲームの通りだったが、これによってゲームをプレイしなくてよい、とは全くならない。工程の多い稲作パートや、本格的なアクションパートを乗り越えてたどり着くエンディングは体験として別物。未プレイ勢はぜひゲームにも挑戦してみてほしい。
 アニメの最後が、「ヤナト田植唄・巫」で締められたのは驚いた。「サクナヒメ」は、アニメ化にあたって、メジャーなアーティストに曲を依頼している。その結果、オープニングはいきものがかり、エンディングはLittle Glee Monsterの歌となっている。最終回に限り、それらを押しのけてゲームのエンディング曲がそのまま使われているというのは感慨深い。やっぱりこの田植唄でないと、というファンも多いはずだ。
posted by Dr.K at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月22日

「墓場鬼太郎」が今だけ無料公開!

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 「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版」、楽しみです。私が昨年のベスト1に選んだ映画がどのようにバージョンアップしたのでしょうか。劇場で確かめねばなりますまい。
 さて、公開に先駆けて、YouTubeでは「墓場鬼太郎」の期間限定配信がスタートしました。これは嬉しい。2008年の放送時には見逃しており、部分的な動画を目にしては、ちゃんと見ておけばよかったと後悔していた作品だからです。さっそく2話までを視聴しましたが、古いマンガの味わいをよくもまあここまで再現できたな、と感心するばかりです。一方で、主題歌を電気グルーヴに任せるなど、斬新な試みも目立ち、ただ古臭いだけのアニメにはなってません。続きも忘れずに視聴しようと思います。
posted by Dr.K at 23:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする