2019年07月31日

岩明均「ヒストリエ」11巻

historie11.jpg 実に2年ぶりの新刊である。
 室井大資に作画を任せた「レイリ」は、テンポよく6巻にわたる物語を完結させたというのに、一人で描いてる「ヒストリエ」の方はこのペース。全然終わりそうにないが、ここまで来たらつきあうしかない。

 何しろ2年ぶりなので、直前の物語を覚えているかどうかが疑わしかったのだが、この巻では、パウサニアスという新キャラが話の中心となっており、大丈夫だった。エウメネスとどう関わってくるのか楽しみだが、それがわかるのは少なくとも2年後になる。鍵を握るのはオリュンピアスだと思われるが、このお妃がまたなかなかの人物で、今後も暗躍しそうなのだが、それがわかるのも2年後。たまらん。
 他で味わえない面白さをキープしているのは認めるが、なんとか休載を減らしていただけないものだろうか。
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2019年07月05日

「進撃の巨人」59 壁の向こう側

 わずか10話とは思えない密度。怒涛の展開でついに海まで来た。ここまでをアニメ化できると想像した人がどれだけいただろうか。

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 原作では、シリアスなストーリーの最中に唐突にギャグが挟まれ、奇妙な味になっていた。エレンの操る巨人の名が明らかになり、直後に茶化されてしまうというこのギャグが、アニメでもそのまま再現されるとは思わなかった。

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 そして、調査兵団がついに海へ着く、感動のラストシーン。なぜかハンジはナマコをつかんでおり、笑いを誘う。これも実は原作通りの場面だ。

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 今クールの挿話はどこをとってもクライマックスであり、一話たりとも手を抜いていない素晴らしい出来であった。番組の最後に、ファイナルシーズンの告知も出たので、原作もそろそろ完結という事なのだろう。アニメ版は話を分かりやすく整理してくれるところがあり、大いに期待している。
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2019年06月29日

「どろろ」第二十四話 どろろと百鬼丸

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 最終回。ここまで苛烈な戦いに身を投じてきた百鬼丸だが、思ったより希望のある結末にほっと気が抜けた。

 これを機会に、歴代「どろろ」のラスボスを振り返ってみよう。
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2019年06月08日

「どろろ」第十九話 天邪鬼の巻

 突然のコメディ展開に目を白黒。原作にはないオリジナルエピソードである。

 ところがところが、こんな話に限って手塚っぽい演出が多用されていた。
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 この回限りの登場となるおこわ。いかにも今どきのアニメ、といった感じの娘なのだが、ひょっとこの説明をするこの顔は、ピノ子直伝のアッチョンブリケ。

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 百鬼丸は旅をやめておこわと結婚するなどと言い出す。大ショックのどろろの周りには、ヒョウタンツギやらオムカエデゴンスやらが飛び交う。

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 ついには怒りのあまり自らがヒョウタンツギと化す。
 ネットでは、なんか変なキャラなどと言われていたが、手塚ファンでもない若者ならそういう反応でもいたしかたない。令和になってこれらのキャラを見られるとは思わなかったなあ。

 現在、物語はクライマックスへ向けて重苦しい展開が続いており、この時の息抜きは貴重だったのだな、と実感しているところだ。
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2019年05月18日

「どろろ」第十六話 しらぬいの巻・第十八話 無常岬の巻

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 お待ちかね、しらぬいの登場だ。50年前のアニメでは、この話は含まれなかったため、なんと初の映像化となる。原作をうまくアレンジした造形が秀逸だ。なお、マンガでは隻腕ではない。

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 山や森で化け物退治をすることが多い「どろろ」で、海を舞台にした今回は異色のストーリー。巨大な人食い鮫となれば、どうしても「ジョーズ」が思い浮かぶが、実はマンガの「どろろ」の方が先。上陸して人間を襲う、というB級サメ映画のような展開もこの時点でやっており、手塚の発想の先見性に感心させられる。どろろが鮫の鼻先に立つという無謀すぎる作戦も、原作の通りにアニメ化されて嬉しい。

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 裸にひん剥くなんてひどい! という感想が見られたこの場面も、構図も含めて原作通り。
 しかしながら、ストーリーはかなり変えている。マンガでは、岬に攻めてくる侍たちはモブに過ぎなかったが、アニメでは多宝丸一行となり、より重要な戦いとなった。そのとばっちりで、しらぬいが直接百鬼丸と剣を交える機会がなくなり、印象的だった水葬シーンもないのは残念だ。
 そして最大の変更は、お宝。マンガでは、宝はすでに移されており、もぬけの殻だった。背中の地図は無意味だったという結末は、連載が打ち切られたこともあって、さらに虚無的な印象を強めた。ところがアニメでは、財宝が発見される。これは物語の終わり方に大きく関わってくるかもしれない。国に対抗するために使われるのか、それとも国を立て直す元手になるのか。

 …などとまじめに考えていたら、次回予告がギャグ回でどっちらけ。だがちょっと待て。このBGMはほげたら節のリスペクトではないのか。全く油断も隙もないアニメだ。
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2019年05月03日

田中圭一「若ゲのいたり」

 田中圭一が有名クリエイターにインタビューし、なつかしのゲームの開発秘話を引き出すルポ漫画。Webで連載されていたものが、ついに単行本になった。迷わず買うべし。
 今もWeb版は全編無料で公開されているが、こういうものはいつ消えるかわからない。やはり、後世に遺そうと思ったら紙の本に限るのである。
 内容は、ゲーム業界に詳しい人なら既知の事も多かろう。しかしそこは田中圭一。ゲーム開発経験者ならではの思い入れが発揮され、他では聞けない話が散見される。特に、「アクアノートの休日」「ゾイド」の回は貴重である。

 さて、田中圭一が得意とする、絵柄を変える技は今作ではなりを潜め、全編が手塚風で描き進められている。しかし、名越稔洋だけは本宮風に描かれていた。やはりそうなるか、と笑ってしまう。
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2019年04月27日

「どろろ」第十四話 鯖目の巻・第十五話 地獄変の巻

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 まだまだ名エピソードを残している「どろろ」、いよいよマイマイオンバが登場。
 「鯖目の巻」、赤ん坊妖怪がびっくりするほど原作準拠の姿で登場。これは続きに期待、と思ったが「地獄変の巻」がずいぶんあっさりしていて残念だった。原作でのマイマイオンバ戦は、美しい湖を舞台に、歌舞伎のような芝居ががった演出となっており、印象に残る内容。これがアニメになって動くとどうなるか、と楽しみにしていたのだが…。
 一方で、鯖目の描かれ方は掘り下げられている。原作では、化け物にほれ込んで家族を作ってしまった、私情で動く人物に過ぎなかったのだが、アニメでは領民のために化け物と契約しており、つまりはスケールの小さな景光になっているのだ。この挿話の悲惨な結末は、百鬼丸が景光を討てばどうなるか、その未来を暗示する。道を違えようとするどろろこそが、それを変えるための希望である。

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 さて、2クール目に入り、エンディングが変更になった。ほとんどのカットがぼんやりした抽象的な映像で、何をうつしているのか気になる。そして、最後のカットを見るに、これは百鬼丸の視界を表していると予想できる。
 本編では、いずれ百鬼丸の眼が取り戻されることになると思うが、それにあわせてエンディングもはっきり見えたりするのだろうか。
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2019年04月22日

諸星大二郎「雨の日はお化けがいるから」

 新刊「オリオンラジオの夜」を楽しんだ後、ふと表紙を見ると小〜さな字で〈諸星大二郎劇場 第2集〉と書かれているのに気が付いた。じゃあ第1集は何なんだ。

ameobake.jpg そんなわけで、探して買ってきたのがこの「雨の日はお化けがいるから」。雑多な短編が収録されている中で、特に印象に残ったのが「ゴジラを見た少年」だ。
 2014年の「GODZILLA」は、海外製とはいえ、久しぶりに復活したゴジラ映画だった。それを記念してビッグコミックが特集を組み、様々な作家がゴジラにちなんだマンガを寄稿した。「ゴジラを見た少年」はその中の一本となる。
 少年はゴジラを夢に見る。東日本大震災の被災者が、その日のことをゴジラが来た、と表現するわけだ。夢と現実、初代ゴジラの時代と現在、それら境界を行きつ戻りつするうちに、厄災の化身としてのゴジラが形作られていく。
 これは驚嘆すべき発想で、2014年版ゴジラとはあまり関係がない一方、初代のゴジラと、まだ作られていない「シン・ゴジラ」との間をつなぐ作品となっているのである。

 「シン・ゴジラ」も神話的な側面を持つ作品だが、諸星版ゴジラも見てみたくなった。
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2019年04月20日

モンキー・パンチ氏を悼んで

 モンキー・パンチが亡くなった。享年81歳。tsujilupin.jpg

 「ルパン三世」の作者として知られるが、不思議なことにマンガがそれほど読まれているとは思えない。この点では、「サザエさん」の長谷川町子に通じるものがある。私も、「ルパン」のアニメはよく観たが、マンガは読んだことがない。辻真先による「小説ルパン三世」を読んでいるのはちょっと自慢できるかもしれない。
 先日の「金曜ロードSHOW」では、追悼番組として「ルパンVS複製人間」が放映された。ベストなチョイスだと思う。「カリオストロの城」では、宮崎駿のイメージにしかならない。

 以下は、このブログでのモンキー・パンチ関連記事。イタリアを舞台にした「ルパン三世Part4」は、かなり気に入って視聴していたのに、全く記事に書いていなかったとは不覚である。

 追悼放送を観たが、一つ一つの場面がアート的にこだわっていて、現在の手慣れたアニメにはない味がある。傑作だ。

 こんなものが作られても文句ひとつ言わない原作者は稀。

 最近の作画崩壊は基準が高すぎる。こいつを見よ。

 ジブリ亡き後は、ヴァニラ飯を推したい。

 この盛り上がりにリアルタイムに参加できたのは幸運だった。


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2019年04月07日

「どろろ」第十一・十二話 ばんもんの巻

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 家族との再会、そして百鬼丸と多宝丸の対決。前半の締めくくりにふさわしい濃縮された物語だったが、結果、九尾が止めを刺されたのかはっきりせず、百鬼丸の体も戻っていない。次回で何か説明があるのだろうか。

 さて、このアニメでは、多宝丸が深く掘り下げられている。ただの恵まれた子ではなく、領主の子としての自覚と正義感があることがわかる。百鬼丸の真実を知った彼が、兄を討つと決めたその覚悟は非常に重い。原作で、兄と知らずに百鬼丸と戦ってあっさり死んだ多宝丸とは大違いだ。一命をとりとめた多宝丸は、映画の「どろろ」のように、景光亡き後の領主となるのかもしれない。
 原作ではシンプルに悪だった景光も、領主としての冷酷な覚悟を感じさせる、一理ある人物になっている。母親が自殺するのも原作にない展開である。さらに、原作では殺された助六と母が、無事に再会したという改変。再会した家族から拒絶される、百鬼丸の孤独がより鮮明に浮かび上がる仕組みだ。
 このままでは暗黒面に落ちてしまいそうだが、それを助けるのがどろろということなのだろう。50年前のアニメと違って、視聴率が悪いからと急にコメディにするようなことはないはず。どんな後半を迎えるのか、とても楽しみだ。
posted by Dr.K at 23:47| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする