「漫勉」とは、浦沢直樹がマンガ家の仕事風景を取材するドキュメンタリー番組。定点カメラによって撮影された映像で、マンガ原稿執筆の現場が明らかになる。
数年ぶりの放送となる今期は、ちばてつや、星野之宣など大御所の出演があった。そして前回、ついにと言うかまさかと言うか、諸星大二郎が登場した。何しろ表に出ることがない先生なので、ファンとしては、「生きてる! 動いてる!」と、タイムマシンでおばあちゃんに会いに行ったのび太君のような感想しか出ない。
いつもなら、番組中はゲストと闊達な創作論を交わす浦沢だが、「う〜ん」とか「そうかなあ」しか言わない諸星相手に四苦八苦。絵に自信がなく、放送されたくない気配がありあり。書き損じて原稿を切り貼りしたり、スクリーントーンを失敗したり、という瞬間がばっちり写されていて最高に面白い。PCも使わず、アシスタントもいない、たった一人の現場で試行錯誤が繰り広げられる。この作品が収録された新刊は今月末発売。買います。
浦沢直樹は、好きな諸星作品として「カオカオ様が通る」を挙げた。なんちゅうものを選ぶんや。文庫では自選短編集「彼方より」に収録されている。思わず読み返してしまった。