2026年03月29日

私がビーバーになる時

 何度も予告を見ましたが、興味をひかれませんでした。「ズートピア2」がヒットしたばかりなのに、また動物アニメ? しかも子供っぽいギャグものの雰囲気。ビーバーの目がヤドンみたいで、かわいくもありません。邦題も面白くなさそうですし、パフィーの歌も合わない。
 ところが、期待せずに観てみたら傑作でした!

 まず驚くのが、圧倒的なスピード感。メイベルの幼少時から始まり、ガキんちょが暴走するコメディなのかな? と思っていたら、あっという間に大学生。高速道路の建設に反対する活動家になったメイベルでしたが、問題児として孤立し続けていたのか、同志の一人も見当たりません。ここから彼女がビーバー化するまでの勢いには呆然。さらに、あっという間に動物と馴染み、ビーバーの池を取り戻します。喜ぶ間もなく、すかさず市長側が反撃、なすすべのないビーバー王は、〈評議会〉を招集しました。あらゆる生物の王が集まり、事件は大ごとになっていきます。だいぶ書いているように見えますが、ここまででようやく前半部分です。
 以降も、予想のつかない飛躍の連続で、全く飽きませんでした。盛りだくさんなギャグがあり、アクションがあり、クライムサスペンスでもあり、ホラーでもあり、サメ映画でもある。そのうえ、いずれの方向にもガチで全力。春休みの映画館は子供連れの家族が多かったのですが、怖くて泣きだす子さえいました。
 ピクサーは、大予算でヒットを狙わなければいけない大御所。そのため作品は、多くの人に受け入れられるべくマイルドになりがちです。そんなスタジオが、いまだにこんなクレイジーな作品を出してくれるのは実に素晴らしいことではありませんか。「平成狸合戦ぽんぽこ」と比較すると、少しエンディングが甘っちょろいのですが、難癖というものでしょう。

 ところで、主役のメイベルは名字が田中。なんと日本人です。自然とともに暮らすイメージがあるので選ばれたのでしょうか。ただ、日本の若者はあまり活動家にならない印象で、ちょっと人選ミスに思えます。
 なお、事前の予想通りだったこととして、パフィーの歌はやっぱり合いませんでした。

映像美 9
シナリオ 9
人間から見た動物 9
個人的総合 9

他の人のビーバー評
LetLifeLoose:「ズートピア1」に近い
映画にわか:食物連鎖について絶賛
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2026年03月24日

爆弾

 きっかけは、日本アカデミー賞だった。佐藤二朗が最優秀助演男優賞を獲得し、そのときのスピーチが抜群に良かったのだ。タイミングよく、新開地のパルシネマで上映が始まったので、これ幸いと観に行く。これ助演か? どう見ても佐藤二朗が主役だろ!

 家に帰ったら、結末をさっぱり忘れてしまっていて我ながらあきれた。過程があまりに面白いので、結論がどうでもよくなってしまった、ということだろうか。
 酔っぱらって逮捕されたタゴサク(佐藤二朗)が、爆弾の存在を示唆。都内各地で爆発が起こる。警察はそれを阻止すべく、タゴサクを取り調べて情報を引き出そうとする…。
 爆発シーンもあることはあるが、物語の大部分は取り調べシーン。それなのに全く退屈しない。タゴサクはのらりくらりと話をそらし、要領を得ない。しかし、そのどこかに爆弾の位置へのヒントが隠されているので、観客も刑事のように集中して話を聞き漏らすまいと身構えてしまう。これ本当にうまいなあ。私の講義もタゴサク式に話そうかな
 クイズ番組もかくやというテンポで、問題と答えが次々に提示され、物語が一気に進むところに快感があった。
 以下は、爆散してしまった感想の断片。

・「国宝」「宝島」そして「爆弾」。昨年話題の邦画は極端にタイトルが短い。タイトルが長くなる一方のライトノベルも、そろそろ変わってくる頃合いだろうか。
・オープニングは、タゴサクの散髪シーンだろうか。これ完全に「セブン」だ。令和に作られた日本版「セブン」と思えば、灰色の結末も納得というもの。
・パルシネマでは、「羊たちの沈黙」と二本立てになっていた。佐藤二朗がレクター博士と並ぶ快挙。怪演を見比べることができる素晴らしい組み合わせだ。

佐藤二朗 10
緊張感 9
エンタメ度 9
個人的総合 8
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2026年03月15日

バーフバリ エピック4K

 公開10周年を機に、二部作の「バーフバリ」を一本にまとめたもので、上映時間は途中休憩含め約4時間! 特別料金3000円! これは観るのに覚悟がいる。
 しかし私にとっては、これが数々のインド映画を観るきっかけになった作品。何としても劇場で王を称えねばなるまい。併せて、「王の凱旋」のとき、満席で入れなかった塚口サンサン劇場へのリベンジでもある。
 何度見ても面白いなあ、と感心したが少し気になるところもあった。「エピック4K」は誰に向けた上映なのだろう。
 まず、「バーフバリ」は初見という観客。日本では「RRR」で初めてラージャマウリ監督作品に触れた観客も多いので、監督の前の作品を観たい、という需要はある。だが、そういう人に見せるには、この編集はやや不親切だ。例えば、「王の凱旋」の冒頭にあたる部分で、儀式を説明するナレーションが省かれており、何のためにやっているのかわからない。
 どちらかというと、「バーフバリ」は視聴済みというファンに向けての上映なのだろう。各キャラクターの見どころと言える場面はすべて入っている編集なので、満足度は高い。ただし、アヴァンティカ関連は大幅にカット、歌のシーンも細かくカットがあるので、ここは文句が出そう。
 上映時間が長いので、インターバル(休憩)があるのだが、カッタッパが裏切った理由を知るのに、二年待つ必要はない」とテロップが出るのに笑う。
 最後はエンドロールをカットして、代わりに監督からのメッセージが出た。やはりサービス精神旺盛な監督だ。上映後に拍手が起こるのも無理はない。
 新規に作られたパンフレットは、関係者来日のレポートが特に良かった。ファンに愛された作品の顛末に、心が温かくなる。

新規性 1
完成度 9
パンフレット 7
個人的総合 8
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2026年02月27日

ランニング・マン

 幼い娘が病気だというのに、仕事をクビになってしまったベン・リチャーズ。稼ぐために、全国民が敵に回る「逃走中」みたいなTV番組に参加することになる。原作はスティーブン・キングで、〈デスゲーム〉の元祖と言われる小説なのだとか。

 一攫千金か死か、という振り切れた設定のわりに、煮え切らないのでイマイチ。このがっかり感、なんだか「TIME」に似ている。
 まず、原作に沿ったせいか古臭いところと、今を反映した新しいところがうまく組み合っていない。例えば、このゲームのルールでは、ランナーは一日一回、自分の動画を撮って送る必要がある。ビデオテープのような媒体を仕込んだ録画装置はレトロ。未来なのにネットは存在しない世界らしく、専用の(?)ハイテクポストへ命がけでビデオを投函させられる。
 一方の番組側は、送られた映像をそのまま使うとは限らず、都合よくフェイク動画を流して大衆を扇動する。AIの悪用が話題になっている昨今、この部分が最も恐ろしくリアリティを感じた。
 とはいえ、テレビがすべてを支配しているという世界観は、どうしても時代遅れ。もはや私設軍隊と言っていいハンターたちを自在に動かせるテレビ局は、政府とどう折り合いをつけているのやら。
 世界のすべてが敵では、さすがに逃げ切れない。そこで、少数ながら協力者が現れるのだが、YouTuberみたいな薄っぺらい活動家や、自宅をからくり屋敷に改造したサイコパスやら、ろくでなし揃いで嬉しくない。他のランナーがいいキャラをしていたので、彼らとの共闘を見たかった。

注:以下に結末のネタバレあり

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2026年02月22日

ブゴニア

 ヨルゴス・ランティモス監督が、またエマ・ストーンで変な映画撮ってる

 オッス、おらドン。今日も、大好きな兄貴テディの養蜂を手伝っているゾ。兄貴によれば、ミツバチが死滅したり、地球がおかしくなっているのは、宇宙人の仕業らしいゾ。そしてなんと、兄貴の会社の社長が実は宇宙人だったのだ。おらと兄貴は力を合わせて社長を誘拐し、宇宙人たちが地球から去るよう交渉を始めたゾ。

 貧しく陰謀論にとりつかれたテディと、セレブ社長のミシェルとの対話は全くかみ合わない。前半は、室内での会話が大半を占め、動きも少ないのだが、テディの狂気に凄まじいリアリティがあり、緊迫感が張り詰める。

注:以下に、結末のネタバレあり

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2026年02月17日

the Straight Story

 4Kリマスターの流れは非常にありがたい。前々から気になっていた「ストレイト・ストーリー」を劇場で観ることができた。

 アルヴィンは、田舎町に住む偏屈な老人。長らく絶縁していた兄が倒れたと聞き、会いに行こうとするが、歩くこともままならない上に免許もない。それでもアルヴィンは、愛用のトラクターに自作の荷台をつなぎ、旅に出る。

 実にいいロードムービーだ。雄大なアメリカの農地を背景に、トラクターがのんびりと進んで行く。旅の途中のちょっとした出会いも良い。実話がもとになっているせいだろうか、演出が抑制的なのも好み。アルヴィンが危険にさらされたり、兄との再会が必要以上に盛り上げられたりしないのだ。
 リバイバル上映なので、内容を知っている観客も多いのだろうが、私は初めて。一つ後悔していることがある。それは、監督がデヴィッド・リンチだと知らずに観たかったということ。デヴィッド・リンチと言えば、おぞましい映像や、意味不明な物語が多々ある曲者監督だ。この映画でも何か起こるかもしれない、と気が気でなかった。実際はそんなことはないので、もっと素直に、心温まる作品を受け止めたかった。
 「グース」「グッバイ、サマー」と並んで、三大〈変な乗り物〉ロードムービーと位置づけよう。いずれも大好きな作品だ。

人情度 8
旅情度 7
滋味 10
個人的総合 7
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2026年02月12日

シャドウズ・エッジ

 今まで、ジャッキー・チェン出演作品はテレビでしか見たことがなく、映画館で観るのはこれが初めてとなる。

 近未来なのか現在なのか。マカオの警察は、監視カメラ網とAIを駆使したハイテク捜査で犯罪者を追い詰める。一方、電子マネーを狙う犯罪グループも、凄腕のハッカーの力で捜査をかく乱、見事姿をくらます。目まぐるしく、スタイリッシュな逃走劇が、最新の映画を感じさせ観客の心も浮き立つ。
 捜査に行き詰った警察は、引退した刑事のホアン(これがジャッキー・チェン)を呼び、昔ながらの追跡方法で犯罪グループのリーダーをあぶり出そうとする。もちろんただのコーチで終わるはずはなく、ジャッキーらしく存分に戦ってくれるので、にわかに香港映画らしくなってくる。
 かといって、アクション一辺倒の映画では全くなく、ドラマ性もかなりよく出来ている。ホアンと組むことになるホーは、殉職したかつてのホアンの相棒の娘で、疑似的な親子と言える。一方で、敵側のフーも、孤児院で育った若者たちをファミリーとして率いており、これも一種の親子だ。双方の親子関係を対比するような形で、物語が複雑にうねる。
 また、ジャッキー世代を讃え、昔は良かった、と後ろ向きにならず、ハイテク捜査や若い世代との共闘で決着がつくのも素晴らしい。共演しているK-POPアイドル目当てで来た若い観客も、これなら納得するだろう。
 エンドロールは、昔のジャッキー映画のようなメイキング映像付き。楽しく懐かしいが、これがあるとポストクレジットを蛇足に感じてしまうな。

敵の手ごわさ 9
アクション 8
現代性 8
個人的総合 8
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2026年01月15日

落下の王国

 リバイバル上映だが、DVDが絶版で配信もない希少さのためか、観客が多くロングランになっているので観てきた。これは独創的、まさに一見の価値がある。

●完璧な映像美、不完全な物語。
 1915年、ロサンゼルスの病院。事故で下半身が麻痺したロイのベッドに、腕を骨折した少女が訪れる。ロイは、思い付きで少女に物語を聞かせる。それは、悪辣な総督に立ち向かう6人のヒーローの物語だった。
 この物語の映像が、ため息が出るばかりの美しさ。風景は実在するとは思えない絶景で、幻想的な衣装も見事。特に、黒人の戦士のかっこ良さが際立っている。
 ところが、物語の内容は安定しない。少女の反応に影響されて、物語はたびたび修正され、進行がふらつく。ロイの心変わりで内容が変わったりもする。物語は完璧とは程遠いが、聞いてくれる少女のために作ったという感じが出て、なんとも愛おしい。

●伝わらないキャスティング
 幻想的な映像は、少女がロイの物語を聞いて想像したものだ。そのため、登場人物が少女の知る人物、つまりは病院で会った人たちでキャスティングされる。
 山賊がロイなのはわかったが、衣装が見事過ぎて他がさっぱりわからなかった。霊者が同じ病室の老人だとわかったのは、彼が最期を迎えたとき。黒人はもしかして氷売りか? すっかり別人に見えていた。

●あらすじに異議あり
 どこのあらすじを見ても、ロイの職業は映画のスタントマンと書かれているが、これってある種のネタバレではないのか
 私は、オープニングの段階で、何かの事故、くらいにしか理解しておらず、ロイの職業をつかめないままに視聴。最後に病院の皆と白黒映画を観るシーンがあって、初めてスタントと分かって納得した。おかげで、普通の視聴者よりも楽しめた。
 初期の白黒映画は動きも荒くて見すぼらしい、一方でここまで見てきた少女の想像は美しい。この対比がなんともグッとくる。楽観的に過ぎるかもしれないが、少女が信じるように、ロイが再び仕事に復帰したと思いたい。

映像美 10
温かみ 9
オリジナリティ 8
個人的総合 7
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2026年01月11日

アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ

 今や貴重な3D映画の生き残りなので、公開直後の上映回が多いうちに、思い切ってIMAX・3D・HFRで観てきた。

●ハードル高い!
 相変わらず映像が素晴らしく、アトラクションのような没入感を楽しめるのだが、そのためには3Dで観る必要があり、料金が高い。そして、ストーリーに関しては、「ウェイ・オブ・ウォーター」と「ファイヤー・アンド・アッシュ」とで前後編を成すような構成になっており、前作を観直す必要があるので、一見さんには向かない。とどめに、上映時間が3時間越えという長さなので覚悟が必要だ。

●アッシュ族が良い!
 「アバター」の敵はこれまで人間であったが、今回は新たな敵としてアッシュ族が登場する。族長ヴァランの一挙手一投足に目が離せない。もともとナヴィの容姿は善人らしくないので、悪役のビジュアルがおそろしく似合っているのだ。敵に魅力があると映画は面白くなる、というのを実感した。

注:以下にネタバレ含む

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2026年01月02日

ズートピア2

 ディズニーは、「ズートピア」の頃は傑作を連発していたが、残念ながら最近はそうでもない。だが、「ズートピア2」はちゃんと傑作だったので安心して観に行ってほしい。

●爬虫類
 今回は、ズートピアにいないはずの蛇が紛れ込み、大騒動が起こる。動物たちが人間のように文明社会を築いている、という童話かファンタジーかという世界観なので、この国に爬虫類がいないなどということは全く気にしておらず、盲点だった。

●気候制御
 ズートピアは、壁で区切られ、エリアごとに熱帯雨林だったり雪山だったり気候が異なっている。これもまた、童話かファンタジーかという世界観なので気にしていなかった。しかし今回、気候制御装置によってそれが作り出されていることが明らかになった。そんなとこまで理屈を通すのか。これまた盲点だった。

●二人の関係
 いままで不明だった世界観を明らかにし、ジュディとニックは新しい地域へと足をのばす。そうして舞台がスケールアップすると、往々にしてストーリーが散漫になりがちだが、感心なことに本作はそうはならない。ジュディとニックの関係性に焦点を絞り、その進展をじっくりと追っている。ただ、最後のニックの告白はちょっとやりすぎだと思った。言葉にしないと伝わらない、と言いたいのだろうが、映画なら映像に任せてほしいと思う。

●フラッシュ
 ナマケモノの再登場は嬉しかった。しかも大活躍だ。他の動物もだいたい出てくるので、前作のファンなら楽しめることうけあい。新キャラもいちいち面白い。私の一押しはセイウチ船長。
 一方で、蛇のゲイリーは、工夫して愛嬌のあるデザインに仕上がっているものの、どうしても好きになれないのがつらい。

●続編?
 エンドロール後に、さらなる続編を匂わせる映像が。蛇の次は鳥? ズートピアに鳥類が出てきていないことに初めて気づく。またまた盲点だ。

映像美 10
シナリオ 9
フラッシュ 9
個人的総合 9

他の方のレビュー
琥珀色の戯言:完璧な佳作
社会の独房から:恋愛でも友情でもない

posted by Dr.K at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする