2026年07月22日

「天幕のジャードゥーガル」第3幕 消しえぬ炎

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 捕虜となったシタラは、はるばるモンゴルまで連行される。通訳のシラの提案で、シタラは第四皇子トルイの妃、ソルコクタニに仕えることになる。妃の手元には、亡き家族から奪われた「原論」があった!

 「天幕のジャードゥーガル」が面白い。私はモンゴルのことなどほぼ知らないが、それはイランで育ったシタラも同じこと。彼女が復讐のために学ぶのと一緒に、視聴者もモンゴルを知っていくという流れが秀逸だ。
 学ぶためには、物事をフラットに見る必要がある。シタラは憎しみを脇に置き、ひとまずモンゴルを知ろうとする。その態度は物語全体にも通底しており、侵略者であるモンゴルを悪と決めつけて描いていないのが素晴らしい。歴史上の出来事を、現代の価値観で評価しようとするのは愚かの極み。当時の事を描くなら当時の価値観で描かなければフェアではない。
 第一幕のイラン編について、奴隷制だなんて、と抵抗感をあらわにした感想を見たが、実に不憫。奴隷が悪いものになったのは現代の事であって、奴隷制が当たり前の時代と場所で、彼らはただ不幸せなわけではない。それどころか、イスラムの教えに従って、奴隷にも教育が意識されていた。こういう、今とは違う価値観を教えてくれる作品は貴重。
 そして、価値観の違いが物語にどう影響していくのか。今後にも大いに期待したい。
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2026年06月19日

「左ききのエレン」第11話 Eren the southpaw

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 エレンのニューヨークでの活躍は、たった1話で終わった。

 以前、私はこのアニメのオープニングとエンディングを不出来と切って捨てた。上辺だけの、カッコつけた映像に見えたからだ。しかし、いよいよ最終回が目前となった今、これらが意外に重要な役目を負っていることに気が付いた。
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 まずオープニング。抽象化されたスタイルながら、物語の全体をダイジェストしている。本編は、時制が何度も行き来し、視点もあちこちに飛ぶので、全体像がつかみにくい。オープニングが、それを補うような役割を果たしているのだ。ニューヨークのジェイコブスは、おそらくこの11話限りの登場人物と思われるが、ちゃんとオープニングに出ていることに驚いた。
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 そしてエンディング。エレンとさゆりの日常である。つまり、11話に至るまでのニューヨークでの暮らしが描かれているのだが、本編には日常が全く欠けているため、そのままでは二人の積み重ねたものが感じられない。エレンがさゆりに「人生を返す」決断の重さは、このエンディングがあってこそ伝わるものになっている。
 尺が足りず、説明不足になっている本編を、オープニングやエンディングで何とかする、という珍しいスタイルが見えてきた。
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2026年06月04日

永野護「ファイブスター物語」19巻

fss19.jpg 1年余で新刊とは、順調順調。
 前半は、ダイ・グ崩御までの物語。突如として現れる円卓の騎士。今まで何をしていたのかわからない大物が大挙して並ぶ。この作者の悪癖だが、平常運転である
 後半は、ヨーンVSデコースの戦いに決着がつく。ヨーンが勝ってよかった、となるべき物語だが、私はそう感じることができなかった。黒騎士ことデコースは、1巻から出ている最古参の登場人物で、この退場はとても残念だからだ。イケメン優男ばかりでキャラクターの描き分けに難のある永野護にして、唯一と言っていい悪役面、チンピラ風情の噛ませ犬から始まって、ここまで来た健闘を大いに讃えたい。
 こうも物語が閉じられると、次からは何が語られるのか心配になる。神として傍観していたアマテラスの話が、いよいよ終わりに向かって進みだすのだろうか。
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2026年04月26日

「左ききのエレン」第3話 俺、ガッツしかないんで

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 広告代理店に就職した光一は、過酷な仕事に耐え、ついにプレゼンに勝つ。しかし、その仕事は会社のベテランデザイナーに回され、光一は担当から外されてしまう。上司の神谷は、彼なりのやり方で光一をねぎらう。

 やっと見られるようになってきたな。マンガはろくすっぽ読んでおらず、なぜか実写ドラマは視聴済みという変則的な視聴者の感想である。
 アニメは、あまりにひどい第一話から始まった。高校時代の光一、〈できるつもり〉の態度がとにかくウザい。それは、彼の未熟さを表現するための意図的なものなので、なんとか飲み込める。しかし、オープニング、エンディングの不出来はどうだ。いかにも上辺だけの、カッコつけたアニメになってしまっている。これでは、アートをなめるな、と怒りをたたえたエレンの矛先も空振りとなる。
 第3話で、いきなり業界残酷物語となり、イケてるアートアニメのつもりで観ていた視聴者がショックを受けていた。この、地を這うような泥臭さとリアルさこそがこの物語の面白さなのだ。沢村の発言が、ずいぶん今の時代を考慮したものに感じられたが、元からこうだったのか思い出せない。

 それにしても、光一の高校、大学、新社会人時代が爆速ですっ飛ばされるのに驚く。前回までは本当にダイジェストで面白みに欠けていたので、ここからの掘り下げ具合に注目だ。
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2026年04月10日

訃報:つげ義春

tsuge.jpg つげ義春が亡くなった。享年88歳。

 私が初めて読んだつげ義春の作品は、小学館叢書「ねじ式・紅い花」だった。
 この頃、名作マンガのハードカバー化が流行っており、角川書店からは「火の鳥」、秋田書店からは「ブラック・ジャック」がベストセラーになっていた。学校の図書室にマンガを置くなんてとんでもない、という時代だったが、これらは特別扱いだったのを覚えている。そして、手塚治虫以外の作品もハードカバー化するという流れになり、小学館叢書は特に様々なマンガ家の作品を出版した。
 「ねじ式・紅い花」はその中の一冊で、つげの代表的な短編が網羅されている。タイトルにもなっている「ねじ式」は、マンガ史に残る伝説的作品だが、なんじゃこりゃという感想しか浮かばなかった。私にとって最もインパクトがあったのは「海辺の叙景」。こんな終わり方でいいんだ、と衝撃を受けた。はっきりしたオチがなく、雰囲気にゆだねている。手塚治虫に心酔し、びしっとオチが決まるのが良い短編、と思い込んでいた私には驚きだった。どちらかというと、文学の私小説に重なるところがあり、こんなマンガも可能なんだ、と気づかせられた。

 訃報では、つげは当然のようにマンガ家と言われている。しかし、40年も描いていなければ、〈元〉マンガ家でもおかしくない。やはりマンガ史において特別な人だったのだな、と実感させられる。
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2026年03月28日

「葬送のフリーレン」第38話 美しい光景

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 もう最終回。続きは2027年の10月と予告が出た。黄金郷編はしばらくおあずけ。

 他のアニメとは貫禄が違う。
 久々のボス敵となるレヴォルテとの戦い、アクション描写も素晴らしく、大いに盛り上がったが、それを最終回に使ったりしない。「フリーレン」はこれからもバトルものにはしない、という強い決意が感じられた。
 そして前回が「ヒンメルの自伝」。ここまでの冒険を顧みるのにふさわしい内容だったが、これもまた最終回ではなかった。
 ではどのように終わるのか? 「美しい光景」では、それほど重要な事件は起こらない。いずれも、その土地の人たちを描くエピソードで、フリーレンはたまたま立ち寄り、依頼をこなして報酬をもらうだけだ。最終回だからといって、大きな事件を起こしたりせず、淡々といつもの旅路を続けていく。これを貫禄と言わずして何と言おう。視聴者の顔色をうかがう必要のない域に達した傑作は、かくも頼もしい。
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2026年03月19日

「エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行」

 約15分の短編アニメ。本来は、イベント会場でしか観られない文字通り〈特別〉な作品だったのだが、想定外のトラブルにより、YouTubeで無料配信となった。

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 二人のアスカが漫才のように進行していく。ただふざけているようにも見えるが、そうではない。惣流・アスカ・ラングレーの物語に決着をつけようとしているのだ。アスカは、新劇場版で〈式波〉と名前を改め、キャラクター性にも若干の変更が加えられた。「シン・エヴァンゲリオン」は、登場人物のすべてに決着をつける作品だったが、〈惣流〉だけは旧劇の結末に置き去りだったわけである。この短編は、〈惣流〉の時間を再び動かし、彼女らしい結末へと導いた。おめでとう、おめでとう。でも、〈式波〉と完全に別人になってしまったのはいいんかいな。
 今見ている再放送が、ちょうどアスカが活躍する回なので、なんともタイムリーでしみじみとしてしまう。
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2026年01月26日

「葬送のフリーレン」第30話 南の勇者

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 続きを待っていた「フリーレン」がいよいよ放送開始。久しぶりの再開だからといって、大きな事件を起こしたりせず、淡々といつもの旅路を続けていく。売れている作品ならではの余裕とも言える。
 さて、今シーズン2話目となる「南の勇者」。かつて、人類最強と言われた勇者が、全知のシュラハトと刺し違えた。そのことが、ヒンメルが魔王を倒す礎となった。七崩賢に生き残りがいそうなこと、勇者の名前が明かされないことなど、今後に影響しそうな内容だが、それを抜きにしてもしみじみと味のあるエピソードだ。この世界の各地には、もっと色々な英雄が祀られているのかな、などと世界観の広がりを感じさせた。
 驚くべきは、これだけの物語がわずか10分で終わっていることで、CM明けからは別のエピソードになってしまう。後半は後半で面白かったけれども。
posted by Dr.K at 22:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月19日

「新世紀エヴァンゲリオン」第弐話 見知らぬ、天井

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 30周年ということで、新年早々エヴァンゲリオン。何度目かの再放送なのだが、やっぱり観てしまう。

 「見知らぬ、天井」は、このアニメの凄さが凝縮された一本。どうにか出撃した初号機だが、サキエルにやられて絶体絶命になってしまう。
 次の瞬間、シンジは病院で目覚める。戦いはどうなったんだ、という視聴者の疑問を置き去りに、淡々と周辺の状況が描写される。どうやら人類は無事らしい。ゼーレの会議では、人類補完計画の名が飛び出す。初期のゼーレって、モノリスじゃなくてちゃんと人の姿だったのね(笑) シンジはミサトに引き取られ、初めての部屋で眠りにつく。今回ももう終わりか、というそのとき、ようやく先ほどの戦闘が明かされる。
 大胆な構成でびっくりする。しかも、怪物の如き暴走による勝利。過去のロボットアニメとは全く異なる作品であることを強く印象付けた。本当に面白い。新劇場版ではどうだったかな、と見返したりすれば、いつまでも終わらなくなってしまう。
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2025年12月03日

「銃夢 火星戦記」11巻

kaseisenki11.jpg 映画館では、「アバター」の3作目が公開間近。その監督であるジェームズ・キャメロンには、実写版「銃夢」こと「アリータ」製作の実績がある。最近、「アリータ2(仮)」の企画が動き出したというニュースを目にし、非常に楽しみだ。

 …そう言えば新刊が出ていたな、と買ってみたら、この巻で終わりと知り驚いた。
 実際には全く終わっていない。クアンのエピソードが終わっただけで、ガリィもエーリカもほったらかしである。しかも、当のクアンは潜入捜査のため外見を変えていて、結果、見慣れないキャラが登場して退場して終わり、という印象になってしまっている。ゲルクトの登場も久しぶり過ぎて、新キャラかと思ってしまった。

 来春連載開始予定の「銃夢 機甲術戦記」に続くらしいが、3度目の仕切り直しで果たしてどうなるか。書店が減ってマイナーなマンガの入手は難しく、さすがの私も脱落しそうである。
posted by Dr.K at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする